『パリピ孔明』上白石萌歌“英子”が見つけた「私がここで歌う意味」八木莉可子“七海”との出会いがもたらした大きな変化

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『パリピ孔明』上白石萌歌“英子”が見つけた「私がここで歌う意味」八木莉可子“七海”との出会いがもたらした大きな変化

10月25日に放送された『パリピ孔明』(フジテレビ系、毎週水曜22:00~)第5話では、最初は互いに正体を知らないまま、音楽だけで繋がった親友同士として心を通わせていく好敵手・月見英子(上白石萌歌)と久遠七海(八木莉可子)の物語が描かれた。

夢を叶える途中にいる者と、夢を叶えたかに見えたものの自分のスタイルや信念との乖離に悩む者。自身のスタイルが掴めず悩んでいるボーカリストと、本来自分がやりたいスタイルとは異なるもので世間から認められ求められ続けることに疑問を抱き自身を見失いそうなプロミュージシャン。

天才軍師・諸葛孔明(向井理)が“断琴の交わり”と表現した英子と路上ライブシンガー・七海はまさにフェーズこそ違えど、それぞれが“今自分が歌う意味”について悩みを抱え、自身の夢との距離に戸惑っている者同士だ。

そして、その悩みを脱するためにも互いになんとしてでも大型フェス『サマーソニア』のステージに立つ必要があり、さらにその1枚しかない切符を手にするために最大のライバルとなるのが互いの存在なのだ。

編曲家のスティーブ・キド(長岡亮介)からの「君は自分がないね。君の歌から君が見えてこない」という指摘に、なんとか自分なりの答えを出そうともがく英子に対して七海は言う。

「そういうのって必要? 自分が楽しく歌える方がずっと大切で幸せなことだと思う」

元々は高校時代の仲間とバンドを組んでいたものの全くの鳴かず飛ばずの状態だったところから、大手音楽事務所・KEY TIMEのプロデューサー・唐澤(和田聰宏)に見出され女性3人組アイドルユニット「AZALEA」のベースボーカルになった七海。バンド時代のオリジナルソングもスタイルも一切封印し、売れるために、世間に受けるために唐澤が掲げるコンセプトに則った衣装に身を包み、歌と共に振り付けを披露する。

そして唐澤の目論見通り、皮肉にも「AZALEA」は売れ、七海は音楽一本で生きていけるようになった。はたから見ればサクセスストーリーとも言えるこのストーリーも、七海本人からすれば自分を捨て“唐澤の言いなりになっているだけ”だという自虐エピソードとして消化不良のようだ。今の形は本当にかつての自分が目指していた姿なのか自信が持てず、でも自分を支えてくれるファンのためにもスタッフのためにももう途中でその役割から降りてしまうことのできない七海は、だからこそ路上で何も考えずに思うままにギターをかき鳴らし歌うことで自分自身をチューニングしていたのだ。

EIKOこと英子の新曲「DREAMER」に見る“歌で民草を救い天下泰平を実現する”ということ

「着るものぐらいで変わらないって思ってたのに、私変わっちゃった」とこぼす七海に、「どんな方法であっても音楽で生きたいって夢を叶えて、たくさんの人に元気と勇気を与えてる。それって誇りに思っていいと思う」と即答で真っ直ぐに思いを伝える英子。ライバルながらも、互いの才能を認め相手以上にそれを信じてられている2人の関係が眩しく頼もしい。

そして、自分の前で自信を喪失しているたった1人の親友・七海に向かって、英子は今歌いたいと心の奥底から思い、ギターを手にとる。まっさらなんだけど、ずっとずっと既に英子の中にあり温められ続けてきた思いが親友との出会いによって引き出されていく。彼女のそのまんまの嘘偽りのない思いが乗った歌詞とメロディが次から次に溢れ出てくる様には気がつけば七海のように涙してしまっていた。

「DREAMER」と名付けられたその曲は紛れもない英子から七海への、そして自分自身への応援歌だった。これまでの紆余曲折を全て肯定し、回り道も経たからこそたどり着けた“音楽が好きだから歌いたい”というシンプルだけど強く揺るぎない彼女なりの答え、スタイルがそこにははっきりと詰まっていた。『サマーソニア』出場のためにライバルを打ち負かすためではない、ただただ傷つき立ち止まっている友人の背中をそっとさすって、手を差し伸べ一緒に歩み出せるように、その一心で英子は歌っていた。

歌いながら自身の中に湧き上がってきた“七海の心に届きますように””誰かの役に立ちますように、寄り添えますように”――そんな思いに英子は孔明が何度も口にしていた「民草」の意味を見出した。これこそが孔明が英子の歌に見出した“天下泰平”を実現できる可能性だったのだろう。

孔明vs唐澤のクセ強・天才軍師同士の計略“10万イイネ企画”の全容が気になる

さて、そんな英子と七海が直接対決することになる『サマーソニア』出場権をかけた“10万イイネ企画”は、ある意味、それぞれの有能な軍師・孔明vs唐澤の側面も併せ持つ。オーナー・小林(森山未來)がどこからか入手してきたKEY TIMEの社員証を首から下げ、ただでさえ長身でスラッとした向井扮する孔明がスーツに身を包みあのお馴染みの帽子を被ったままオフィスを闊歩する絵面は破壊力抜群だ。そして迎え撃つ和田演じる唐澤も全身ピンク色のスーツにマッシュルームヘアと、あの孔明ビジュアルに引けを取らないインパクトが凄まじい。改めて本作は俳優の今まで思いもしなかった一面をジャストフィットで見せてくれる。

“10万イイネ企画”についての会議が行われた後のホワイトボードの消し残しから、「AZALEA」が来るべき“Xデー”にゲリラライブを行うことを察知した孔明は、敵の戦場に敵に扮して乗り込み、あろうことか敵のファンから“10万イイネ”を借りるというとんでもない便乗商法に打って出るようだ。ステージに立った「AZALEA」かのような衣装に身を包んだ英子とマネキン2体。これは正体がバレたら大ブーイング間違いなしだが、孔明はこの後どんなシナリオを描いているのだろうか。英子にとって不利でしかないこの状況から、どんな流れで英子の新曲「DREAMER」が披露されるのか全く想像ができない。そして、英子が七海の背中に向かって掛けた「また一緒に歌おう」という言葉は果たされるのだろうか。

第5話のテーマとして“友情”が描かれたのは、何も英子と七海の間だけに限った話でなかった。この“天下泰平の計vol.1”の始動にいつになく緊張の面持ちを見せた孔明に「ダチが不安になってるときは何となくわかる」と当然のように話す小林と孔明の絆にもグッと来てしまった。そして小林が言う通り、きっと劉備(ディーン・フジオカ)が孔明のことを迎えに来ており、夢で劉備に会えた暁には孔明はもうここにはいられなくなってしまう、“超孔明”どころではない“ビヨンド孔明”な展開が待ち受けているのだろう。英子が夢に近づけば近づくほど、それは孔明との別れがすぐそこに来ていることを意味するのだ。

文:佳香(かこ)