『パリピ孔明』どこまでもお見通し!向井理演じる天才軍師・孔明がもたらした英子への成功体験と夢

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『パリピ孔明』どこまでもお見通し!向井理演じる天才軍師・孔明がもたらした英子への成功体験と夢

「私もっともっとたくさんの人の前で歌いたい」
「もっともっと自分の歌で沢山の人の心を動かしたい」

『パリピ孔明』(フジテレビ系、毎週水曜22:00~)第1話で諸葛孔明(向井理)から夢を聞かれても何も答えられなかったアマチュアシンガー・月見英子(上白石萌歌)。10月4日に放送された第2話では自らの夢を初めて自然と口にした。これこそ孔明が英子のために用意したアートフェスライブ参戦の最大の狙いだったのだ。

孔明から次々に繰り出される鮮やかな計略!刺客・RYOをも包み込む優しき魔法

孔明が今回ブッキングしたアートフェスライブはそもそも選考が厳しいことで有名だが、いつの間にか彼は前回の人気歌手・ミア西表(菅原小春)とのステージ対決の様子を映像にまとめ、運営側に送っていたようだ。随分お洒落に編集されたその動画も実は孔明が用意した“密偵”という名の英子の熱狂的なファンによる代物だ。

ただ、このフェスで初参加の英子のブースは一番端っこ、かつその向かいは人気インディーズバンド・JET JACKETのブースという圧倒的に不利な配置。しかし、ギターボーカルのRYO(森崎ウィン)の歌唱動画を見た孔明は、すでにこの時点で勝算を見込んでいた。

RYOがバンドメンバーにも隠し通していた喉の不調を観相学からすぐに見抜き、さらには責任感が強いRYOがそのことをメンバーにも打ち明けられていないだろうことまで孔明には何でもお見通しだ。

フェス当日にRYOの前でオーナーの小林(森山未來)に「機材トラブルが起きた」と一芝居打たせ油断させたところに、必殺・“無中生有の計”始動。“無きものを有るように見せる”ために、用意しておいた大音量の歓声音源とフェスで盛り上がる人気曲を爆音で流す。そして巨大な照明で地面を照らし蜃気楼を発生させることで、英子こと“EIKO”のブース前に屋台の行列を作り出し“大勢の観客”に仕立て上げた。仕上げはJET JACKET側のブースに潜入した“密偵”が、喉の不調を抱えるRYOにはきついハイトーンボイスの楽曲をリクエスト。RYOがその要求に難色を示すと、JET JACKETの観客は英子のブースに移動していった。そして、屋台の行列ではなく、実際に英子の前に大勢の観客を作り出したのだ。

英子からすればそんな番狂わせにも動じず、とにかく楽しそうに歌を披露。そのステージは堂々たるもので、孔明の狙い通り“慣れぬ土地での勝利”に自信をつける。

しかし、このフェスで孔明がもたらしたのは君主の勝利だけではない。対戦相手のRYOにバンドメンバーの前で弱みを見せられる場を作り、仲間に頼ることの重要性を説いた。そしてあの伝説のフュージョンが生み落とされたのだ。

意表を突く声優・梶裕貴のアテレコ出演!不思議とマッチする演出の妙

「戦場で信じて背中を預けられる、それが本当の仲間というものですよ」という孔明の言葉に後押しされ、キーボード・TAKU(松延知明)、ドラムのMASA(高尾悠希)、そしてRYOは孔明に差し出された不気味な色の“喉に効く煎じ茶”を口にする。(あのハチミツかメイプルシロップが入っていそうな愛くるしい熊の形をしたボトルと、中身の毒々しさがミスマッチで面白い)

あまりのまずさに最初は咳き込む3人。その後あからさまにいい声に変わるが、3人の覚醒後の声をなんと声優・梶裕貴が1人で演じ分けているのだ。突然、ミュージカル調な伸びやかでお腹の底から発声される“ええ声”が響き渡るが、全員の元の声質を引き継ぎながら梶のアテレコに切り替わるのがお見事で、無茶振りすぎる設定ながらもなんだか孔明直伝の煎じ茶の効果効能としてやけに納得してしまえる。そして孔明から繰り出される魔法のような計略を梶の声を持ってしてリアルに見せてくれるその演出の本気度合いが最高だ。ミュージカルでも大活躍中の森崎の抜群の歌唱力が堪能できるだけでなく、その美声をも梶のアテレコに切り替えるというなんとも豪華な共演が楽しい。

さて、恐ろしいことに孔明の“先見の明”はここで終わらない。このフェスの有名オーガナイザー・近藤剛(嶋田久作)の目に英子のことを留めさせ、彼らはさらなる大きな舞台への切符を手に入れた。ただし、次なるステージ・超大型音楽フェス「サマーソニア」への出演条件はSNSで“10万イイね”を集めること。達成したのは10年間で1グループのみという無理難題だ。

福岡での1万人規模のフェスと二者択一を求められ「いきなりサマーソニアなんて早すぎるよね?」といつもの謙虚さが発動しそうになる英子に、孔明は問いかける。そして“たくさんの人の前で歌いたい”という大望を前に、SNSのフォロワー数やイイね数など小事に過ぎないと孔明は英子本人に気づかせ、英子自らの意思で一歩踏み出させた。

「あなたがひとたび歌えば必ず民草の心は動きます。自分を信じるのです」孔明は繰り返し英子にこう伝えてきたが、確かに夢に近づくために今すぐできるたった一つの方法はただただシンプルに“自分を信じる”ことなのかもしれない。ただ、この“まだ何者でもない自分を信じ続けること”こそ最も難しいことであるのもまた事実だ。しかし、「天の万物は有より生じ、有は無より生ず」だ。誰しも最初は何者でもないところから全ては始まっている。

第1話同様にラストには関口メンディーEXILE/GENERATIONS)演じる前園ケイジの密着番組の一コマのようなシーンが差し込まれており、英子が彼と対決する日も近いようだ。

そして、かつての主君・劉備(ディーン・フジオカ)の回想シーンが、もはや今世と同時進行しているかのような、どこかで劉備が孔明の帰りを待ち続けているかのような世界線も描かれ、小林の協力の下何だか良いバランス感で踏み出した英子と孔明の二人三脚が、未来永劫続くものではないこともどこかで予感させられる。

文:佳香(かこ)