『パリピ孔明』天才軍師・孔明が“出会ってしまった”今世の君主の原石

公開:
『パリピ孔明』天才軍師・孔明が“出会ってしまった”今世の君主の原石

眩いばかりの圧倒的なエネルギーを放ちながら『パリピ孔明』(フジテレビ系、毎週水曜22:00~)が始動した。

三国時代に活躍した天才軍師・諸葛孔明(向井理)が若かりし頃の姿で現在の渋谷に転生し、自身が“勝たせたい相手”に出会う。かつての主君・劉備(ディーン・フジオカ)との“戦のない世を共に創ろう”という約束を果たすべく、今世で彼が見出したのはライブハウスでバイトをしながら歌手を目指すアマチュアシンガー・月見英子(上白石萌歌)。彼女の歌声のファン第1号になった孔明は、彼女の夢を叶えるために自身が軍師=マネージャーを務めると申し出る。

誰も聴いてなどいないと嘆いていた自分の歌を聴いてくれるたった一人の人がいた。
「ファンなんていないよ」
「ここにいるではないですか」
ここから孔明と英子の音楽を通しての“天下統一”物語が始まったのだ。

有能すぎる向井理“孔明”にギャップ萌え!“元バーテンダー”の本領発揮!

孔明にとっての初仕事は、人気歌手・ミア西表(菅原小春)のステージの当て馬として引き立て役にされてしまった英子のライブを満員にすることだ。憧れのミアからの思いもよらぬステージ出演依頼にひたすら舞い上がる英子の隣で、ミアの真意を探ろうとする冷静沈着で俯瞰な視線を持つ孔明が対照的で面白い。孔明の策士ぶりが早速遺憾なく発揮され、ミアの思惑は見事打ち砕かれる。狭いクラブフロアに、かつて劉備を追撃する陸遜を惑わせた罠を張り巡らせた孔明。英子のフロアから客が出て行かないのではなく、“出ていけない”状態を見事作り出したのだ。

ミアのようなハイレベルなダンスパフォーマンスと歌唱で観客を魅了するのではなく、奇をてらったことなど何一つせず、透き通った等身大の歌声だけを披露し続ける英子は、いわば“映え”とは無縁。特にクラブのステージでは最初の爆発力や求心力に欠け、通り過ぎてしまわれかねない。しかし、孔明が施した“足止め”の策によって、一度しっかりと耳をすませてもらえさえすれば、聴く者の心にそっと染み入る英子の歌声。彼女の歌声に勝算があったからこそ、孔明はこの策に懸けたのだろう。

いつだって、君主への忠誠を誓うのが軍師というもの。英子本人が自分の歌声や才能に自信が持てないときも、自ら最初に「アマチュア歌手」だと名乗ってしまうときにも、孔明は彼女がいかに特別で素晴らしい存在で、その歌声は人の心を震わせるものだと一切の迷いなく断言してくれる。そんな存在が近くにいれば、自ずと英子の自己肯定感も自己効力感も爆上がりするだろう。灯台下暗しで相手の急所を突くようなどんな優れた計略よりも、常に自分の一番の味方でありファンでい続けてくれる。自分よりも自分のことを信じ抜いてくれ期待をかけ続けてくれる存在こそが、本人も気づいていない能力を引き出し開花させるのかもしれない。

また、生き馬の目を抜くような戦乱の世を生き抜いてきた孔明だからこそ語れる言葉にも思わずハッとさせられる。「言いたいことも言えず、戦場で死んでいった命をたくさん見てきました。率直な意見、率直な感想は生きているうちに語ってこそ」「才能とは学習の結果、身に付くものだと考えております」など、特に自身には才能がないと自らの夢を見限ろうとしている英子には目からウロコな発言だっただろう。

ここぞという時に、とんでもないマルチタスク能力を発揮し頼りになる有能すぎる孔明。スマホの使い方もわからなかったはずがすぐさまサブスクに申し込んでみたり、食べログを使いこなしていたり。バイト先のバーでは初日からとんでもない即戦力となって活躍する。クレジットカード決済の扱いもそつなくこなし、なんと言っても客へのドリンク提供シーンでは元々バーテンダーとして働いていた向井のシェイカーさばきに見惚れてしまった。

非常にアイコニックだからこそ渋谷にもライブハウスにもすんなり溶け込む孔明のビジュアルも、現代にそぐわない感覚を場違いに発揮しながらもなぜだか成立してしまえるそのキャラクターを向井がなんとも愛くるしく、説得力を持って好演している。そして、歌声だけでなく、人の裏を読まず無欲で純度高い上白石演じるある意味平凡な英子が都度孔明に自然なツッコミを入れながら見せてくれるからこそ、この突拍子もない設定も無理なく楽しめる。

アヴちゃん、菅原小春、関口メンディーのパフォーマンスが圧巻!

第1話から豪華ステージシーンが多々盛り込まれた本作。ドラマ初出演となるアヴちゃん(女王蜂)は、高校時代の英子に生きる力を与えた世界的シンガー、マリア・ディーゼルとして、その場を一気に自分色に染め上げてしまう妖艶で圧巻なステージを繰り広げる。また、世界的ダンサー/振付師として活躍する菅原のパフォーマンスはパワフルかつダイナミックで、ミアと英子こと“EIKO”のスタイルとの違いを際立たせた。ラストには関口メンディー(EXILE/GENERATIONS)演じる前園ケイジの仕上がったボディから繰り出されるキレッキレのダンスと歌唱が披露され、今後英子の前に立ちはだかるであろうライバルが強敵揃いであることが示唆され、期待が高まる。

孔明に“夢は何か”と聞かれて何も答えられなかった英子。最高の軍師を得たことで、どんな夢を描き、自身の使命を見出していくのか楽しみでしかたない。

文:佳香(かこ)