お見送り芸人しんいち『R-1』優勝から激動の1年を振り返る「ほんまに正直なことを言うと…」【連載PERSON】

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人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回は、お見送り芸人しんいちさんが登場します。

昨年の『R-1グランプリ2022』で見事王者に輝き、一夜にして人生が激変したというしんいちさん。ネット上での悪評もなんのその。仕事もプライベートも「超幸せだった」という1年を、飾らない言葉で振り返ってくれました。

そして、3月4日(土)には『コーエーテクモゲームス PRESENTS R-1グランプリ2023』(カンテレ・フジテレビ系で19時より生放送、TVerではリアルタイム配信を実施)の決勝戦が開催。現チャンピオンとして、出場者に今、伝えたい思いとは? しんいちさんに本音を直撃しました。

ネットニュースになることすら嬉しい

――『R-1グランプリ』優勝から、激動の1年だったと思います。

めっちゃしんどかったですし、キツいこともツラいこともあったんですけど、振り返ってみると超幸せでした。今までだったらあり得ない人に会えるとか、こんな番組に出られるとか。うまくいかないことばかりなんですけど、そんな悩みを持てることすら幸せで。あとは、迷惑をかけた家族にいろいろ買ってあげられたのも幸せでしたね。

――たとえばどんなプレゼントを?

めちゃくちゃいやらしい話ですけど、オカンにルイ・ヴィトンのお財布、オトンにルイ・ヴィトンのセカンドバッグ、妹にルイ・ヴィトンのバッグ。甥っ子たちにゲームをあげて、お小遣いも配りまくってます。オカンはちょっと調子に乗って、「あれ欲しい」とか言ってくるようになったんですけど、それも可愛いんですよね。オトンもふだんはそんなこと言わないのに、「幸せな1年やな」とオカンに言ってたみたいで、それも嬉しかったです。

『R-1』の優勝で家族みんながハッピーに!
『R-1』の優勝で家族みんながハッピーに!

――家族みんながハッピーになれたんですね。一方で、日常生活も大きく変わったのでは?

常にギター、リュック、トロフィーを持ち歩くので、体が悲鳴を上げてます。あとは焼肉にしょっちゅう行けるようになりました。そんな高級な焼肉は行かないですけどね。それから競馬、競輪、ボートレース、パチンコに今まで5000円を握って行っていたのが、2万円を握って行くようになりました。ただ僕、この1年でギャンブルめっちゃ負けたんですよ。仕事でやりたいことをやらせてもらっていたので、やっぱり神様はいるんやなって思いますよね。積もり積もって、1年で100万以上負けましたから。

――「売れたな」と感じた瞬間はありましたか?

それが、未だに売れたとは思ってないんです。今はまだバブルが続いてるだけというか、ずっと優勝旅行をしてるような感じで。「どうせこんなん続かんやろな」って、どこか開き直りながら生きてるというのはありますね。

――でも、だからこそ今を楽しんじゃおう、と。

そうそう。自分は恵まれていて、助けてくれる人がいっぱいいるので。ただ僕、めっちゃネットニュースになるんですよ……やっぱり悪口を言いやすいんですかね(笑)。でも、コメントで批判されても、それすら嬉しいんです。基本的にネアカ(根が明るい性格)なので、他の芸人さんと違ってウケなくてもずっと楽しいんですよね。しかも今の芸人さんって、うちの事務所で言えばランジャタイさんも東京ホテイソンティモンディも、1分以内にめっちゃボケるじゃないですか。

――ショート動画時代で、すべてが短くなってますからね。

ボケまくるタイプではないのにお仕事をいただけているのは、スーパーラッキーだと思います。僕、焦ってもしゃあないなと思っちゃうんですよ。「牡牛座で丑年やから、牛乳飲みながら牛のようにゆっくり進みます」とかスピリチュアルみたいなこと言ったりして。頑張りすぎるとしんどいし、ゆっくりでもまっすぐ歩いてたら、いつか追いつくと思っています。

――しんいちさんは、とにかく素直なんですね。

嘘がつけないんですよね。テレビでも全部言っちゃうので、「もっと器用にやって」とよく言われます。「なんで嘘つかなあかんの?」って思うし、嘘ついて好感度が高い人のほうが嫌ですけどね。それをこの間テレビで言ったら、また怒られましたけど。

さんまさんに「しんいち」と呼ばれて

――出演された際に、「ついにここまできたか!」と感じた番組も教えてください。

いっぱいありますけど、パッと思い浮かぶのは『行列のできる相談所』。あとは毎回、足も手も震えながら、エナジードリンク入れながら、ブラックコーヒー3杯くらい飲みながらやってる『さんまのお笑い向上委員会』。僕は“モニター横”出身なので、スタジオの椅子に座れたときには嬉しかったですね。それに、僕はさんまさんに「お見送り」って呼ばれてたんですけど、それが「しんいち」に変わった瞬間に「あの明石家さんまの脳みそに“しんいち”が入ったんだ!」って。あとは『ダウンタウンDX』もそうですね。収録中は無我夢中なので、帰りの車で「松本(人志)さんと浜田(雅功)さんが笑ってくれたなぁ」ってしみじみと噛み締めました。

収録が終わってから喜びを噛みしめ…
収録が終わってから喜びを噛みしめ…

――先輩との関係にも大きな変化がある1年だったんですね。

この間は、ウエストランドの井口(浩之)さんが『人志松本の酒のツマミになる話』で僕の話を出したときに、松本さんが「おっ、しんいち」って言ってくれたんです。1年前だったら、誰かが僕の話をするときには「グレープカンパニーにお見送り芸人しんいちっていう芸人がいるんですけど……」から入らないといけなかったのが、「お見送り芸人しんいちが」だけで通じるって、すっごい感動しますよね。

あとはやっぱり、僕が芸能界一尊敬している平成ノブシコブシの吉村(崇)さんにお近づきになれたことが嬉しくて。常に気にかけてくれますし、吉村さんからいただいたBMWで収録に行って、帰りにレインボーブリッジを渡ったときには涙が出ました。それから、ずっと僕に投資してくれていたピースの又吉(直樹)先輩と共演できたこともよかったです。“同じ高校のサッカー部の後輩”っていうだけで可愛がってくれて、お金もいっぱい使ってもらってきたので。

――先輩からかけてもらった言葉で、特に印象的だったものを教えてください。

サンドウィッチマンさんには説明もいらないほどずっとお世話になっているんですけど、1か月くらい前に、まず富澤(たけし)さんが「このままの立場が続くのはしんどいかもしれないけど、数年後にもう1個何かあるから。絶対に大丈夫だから」と声をかけてくれて。同じくらいの時期に、伊達(みきお)さんもラジオで「俺は今のしんいち悪くないと思ってる」と一言言ってくれたんです。伊達さんは僕にずっと厳しくしてくれていたので、その言葉が何より響きました。ほんまにムチばっかりだったので、アメがめちゃくちゃ甘かったですね。

『水ダウ』制作陣は恐ろしい集団?

――『R-1グランプリ2023』準決勝の審査員をされましたが、いかがでしたか?

いやー、難しかったです。もちろん全員面白いっていう難しさもあるんですけども、一番はメンタルの持っていき方。去年はあっち側でブルブル震えていた僕が審査員なんて、生意気すぎると思いますよね。でも、「審査員です」と紹介されて拍手が起こって、審査員席に座った瞬間にめっちゃ天狗になっちゃって(笑)。上から目線で審査してやろうっていう気持ちになれて、そこからはただただ楽しくできました。とはいえ僕は去年、自分自身に98点をつけたんですけど、それを超える芸人は1人もいなかったです。

――今年出ても優勝だと(笑)。決勝進出者に伝えておきたいことはありますか?

僕なりに「こういう動き方をしたほうがいい」とかいろいろあるんですけど、一つも教えたくないです。ほんまに正直なことを言うと、当日大会が中止になるか、チャンピオン該当者ゼロになって、僕がまた1年間『R-1』を背負いたいと思ってます。

――(笑)。ここからはテレビとの関わりについても伺いたいのですが、小さな頃はどんな番組を見ていましたか?

『めちゃイケ』はずっと見てました。この前、鈴木紗理奈さんと極楽とんぼの山本(圭壱)さんと、奥さんの西野未姫さんとご飯に行けたんですよ。ナインティナインさんは僕に会うと「あとで連絡ちょうだい」「いや連絡先教えてもらってないです」っていうくだりを毎回やってくれて、それも幸せです。それこそ、北海道繋がりで加藤(浩次)さんの弟子的な存在が吉村さんなので、僕にとって加藤さんは師匠の師匠、先代ですよね。その加藤さんに、吉村さんに車をもらえたと報告できたことも嬉しかったです。

TVerの活用法は?
TVerの活用法は?

――ふだんからTVerは使ってますか?

めちゃくちゃ使わせてもらってます。風呂を溜めて、濡れないようにカバーをかけたタブレットでずっとTVerを見てます。TVerがなかったら、たぶん暇ですね。

――お気に入りに登録してる番組はありますか?

(スマホを確認しつつ)『水曜日のダウンタウン』……(苦笑)、『ロンドンハーツ』『千鳥の相席食堂』『アメトーーク!』『マルコポロリ!』。『マルコポロリ!』なんて全部チェックしてるから、顔出ししてる裏方さんに会えたときには感動しましたもん(笑)。あとは『トンツカタン森本&フワちゃんの「Thursday Night Show」~学ばない英語~』。番組に出させてもらって、2人へのリスペクトも込めて登録しました。

――やはり『水曜日のダウンタウン』は登録されてるんですね。何度もドッキリにかかると、「これもドッキリなんじゃないか」と生活に支障を来すような気がします。

もはやビクビクしてもしゃあないなと開き直ってるかもしれないです。しょっちゅう自宅に来るんですけど、「はいOK」ってカットがかかると3秒くらいで一番のお偉いさんが現れて、そのままマンションから出されるんですよ。僕にカメラ位置がバレないように撤収作業をするために。「いつか女の人とイチャイチャしてるときにバッティングしますよ」ってスタッフさんに言ったら、「いいじゃないですか」と言われて、頭おかしいんやなって(笑)。もう恐ろしい集団と契約してると思ってます。

――最後に、芸人としての目標をお願いします。

やっぱりCMがほしいです。この1年の言動が視聴者さんの逆鱗に触れたらしく、「久々に本当に嫌いなヤツが出てきた」とか言われるんですけどね。僕がただ単に正直に生きているだけなんだとわかってもらえるまでには時間がかかると思いますけど、アンガールズの田中(卓志)さんに言われたんですよ。(モノマネしながら)「今、お前はめちゃくちゃ嫌われてるけど、ある日突然、すごい大金が入るから」って。

――説得力がありますね。その日が来たらどうします?

その日が来たらそりゃ天狗になりますよ! って今は言いますけど、せっかく大金を手にしたところまで登ったんで、びびって大人しくなると思います! その日が来たら静かになります(笑)。

(取材・写真・文:nakamura omame)

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