名門・青森山田高校を率いた黒田剛、新たな挑戦に決意「高校サッカー指導者の価値を高めるために」

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サッカー指導者の黒田剛が、2月18日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)にゲスト出演。青森山田高校サッカー部の監督からFC町田ゼルビアの監督に転身した理由や、チーム強化のための取り組みなどについて語った。

1992年に大阪体育大学を卒業した黒田は、3年後の1995年に青森山田高校サッカー部の監督に就任。全国高校サッカー選手権では3度の優勝に導くなど、青森山田高校を高校サッカー界随一の強豪校へと育て上げ、日本代表の柴崎岳やパリ世代の松木玖生などの名選手も輩出した。

そんな黒田が、今シーズンからJ2のFC町田ゼルビアを率いることになる。異例ともいえる抜擢に、MCの勝村政信は「まさか高校の監督がJリーグに行くとは思っていませんでした」と驚き、黒田をよく知る解説の福田正博は「初めて聞いた時には、黒田監督らしいなというふうに思いました」と納得していた。

沖縄のキャンプ地からリモートで出演した黒田は「高校サッカー、いわゆるアマチュアの世界でやってきましたので、それがプロで通用するかどうかは町田のクラブも、全国のサッカーをやっている人たちも、全員が半信半疑だった」としながら、「私を推薦してくれた覚悟みたいなものを感じた」と、監督を引き受けた理由を打ち明ける。

これまで約30年間にわたって高校生を指導してきた黒田だが、高校とプロの違いについては早くもミーティングで実感したそうで、「高校生だと“あれしろ、これしろ”と言うと“はい!”って言ってやるんですけど、プロは“はい!”なんて言いませんから。モチベーションの部分で高校生は分かりやすいけど、大人は難しいですよね」とこぼしていた。

その言葉を受けて福田は「勝つことだけでしかマネジメントはできないんですよ。勝ち続けないとやっぱり不満分子はたくさん出てきて、一つの方向には絶対向かないです」とアドバイス。プロにはチームを移籍するという選択肢もあるため、一丸となって戦うには、とにかく勝利を重ねていくことが大切だと説いた。

しかし、昨シーズンのFC町田ゼルビアは15位に留まっており、シーズン最後の10試合は勝利なし。勝負所で勝ち切れなかったため、黒田は青森山田高校も得意とした“堅守速攻”を中心としたサッカースタイルの浸透に取り組んでいた。長いリーグ戦への決意をにじませる黒田は「守備組織をうまく作りながら、1対0で勝ち切れるようなメンタリティと体力、しぶとさを同時に作っていけたらいいなと思っています」と狙いを明かす。

黒田の得意とする“堅守速攻”を機能させるべく、新戦力も補強。FC町田ゼルビアでは、昨シーズンから12人が退団し、19人もの新戦力を獲得している。19人の中には、カタールW杯でもゴールを決めたオーストラリア代表のミッチェル・デュークや、横浜F・マリノスでゴールを量産したブラジル人のエリキの他、黒田の教え子の姿もあった。

青森山田高校のキャプテンを務めた20歳の藤原優大は、黒田から電話でオファーを受けたそうで、入団の決め手については「監督はこだわりが強いし、志もある中で、自分も成長できるんじゃないかと感じました」と告白。また、黒田の意外な一面を聞かれると「めちゃくちゃ綺麗好きです」とポロリ。「一回、車に乗せてもらったときにめっちゃ綺麗だった。性格的に細かいところまでこだわれる人なんだと思います」と明かし、VTRを見ていた黒田から「車の話しか入ってこなかった」と指摘されていた。

さらに黒田は、フィジカルトレーニングの充実にも力を注ぐ。青森山田高校では強靭な肉体を作るため、校内に充実したトレーニング施設を完備。黒田は相手と競り合いながらも選手が常にゴールへ向かえるよう、フィジカルの強化を徹底していた。その結果、高校生ながら、90キロ以上のベンチプレスを上げ、腕立て500回、腹筋700回をこなす選手もいたという。

黒田は「ボールを自分の前にこぼす攻防で負けないということが試合を優勢に進めるためにはすごく重要な要素になってくるので、筋トレの道具を増やしてもらったり、施設のトレーニングルームを充実させてもらったりしました」と、FC町田ゼルビアでも同様の方針で指導を行っていくことを宣言。実際に、FC町田ゼルビアの2面ある天然芝のピッチ横には、昨年トレーニングルームを備えたクラブハウスが完成している。

こうした黒田の改革は、早くも実を結びつつあった。プレシーズンマッチでは、J1相手に4戦4勝。ファンの期待も高まる中、チームが勝ち続けていくためには、他に何が必要になるのか。福田は「正しいマネジメントが当然必要」と前置きしつつも、「高校サッカーであれだけ結果を残せているんで、最後はちょっとした運ですよ。そこはものすごく重要だと思いますね」と、運も必要な要素になると助言した。

黒田の成功は高校サッカーの指導者たちの未来をつなぐことにもなる。「私が成功を収めることになれば、希望と夢を持って、この世界に飛び込んでくる指導者もいるだろうし、高校サッカーの指導者の価値を高めるためにも、このチャレンジは絶対に成功したいなと思っています」と意気込む黒田に、勝村は「Jリーグ開幕して30年経って、やっとこういうイレギュラーなことが起こり始めた。今回の黒田さんの挑戦、普通だったら世界じゃあり得ないんだけど、このチャレンジをみんなで褒め称えましょうよっていう流れができるといいですね」と期待を寄せていた。

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