中村俊輔、“ファンタジスタ”の復活を予言「絶対にまた戻ってくる」

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元日本代表の中村俊輔と横浜F・マリノスのキャプテン・喜田拓也が、1月14日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)にゲスト出演。 “日本サッカーの進化と未来”について、MCの勝村政信らとトークを繰り広げた。

中村といえば、記憶に残るプレーでJリーグ史上唯一となる2度のMVPを獲得した稀代のレフティ。海外クラブでも歴史に名を刻み、日本代表でもチームを盛り立ててきた。そして、カタールW杯が行われた去年、44歳になったレジェンドは現役を引退。長年の選手生活に幕を下ろした。

スタジオに登場した中村は、26年間のプロ生活を終えた今の思いについて、「ほっとした感じかな。やり終えたという」とこぼし、まだ実感が伴っていないことを明かす。中村の背中を見て育ってきた喜田は「本当に優しく話しかけてくれて、たくさんのことを教えてくれました。大好きなサッカーもそうですし、マリノスでできているっていうのは俊さんのおかげといっても過言ではないので、本当に未だに感謝してもしきれないです」と思いを伝えた。

そんな2人が、カタールW杯の日本代表について口を開く。中村がドイツとスペインという強豪国に勝利したことを絶賛すると、喜田は「あれだけの大舞台で物怖じしないというか、バタバタしないのは、やはり日常的に厳しい環境で戦っている選手たちがすごく多かった。非常に日本らしい戦い。団結力やチームとしてというところは出ていたと思います」と分析した。

中村自身は、2010年の南アフリカW杯で大会直前に控えとなったが、ピッチで戦う選手に水を運び、アドバイスし続けるなどのサポートに回り、その献身的な姿がチームを一つにした。中村は、カタールW杯でもベテランを中心にチームが一丸となったことを評価。バトンを繋いでいってほしいと訴えた。

中村は、バトンを継いでほしい期待の若手選手として、21歳の久保建英を挙げ、他にも、レアル・マドリードの下部組織で成長を続ける19歳の中井卓大と、青森山田高校を日本一に導き、ルーキーイヤーにFC東京でレギュラーの座を掴んだ、同じく19歳の松木玖生の名前を口にし、エールを送った。

日本代表の久保を筆頭とした期待の若手が育つ一方で、課題も浮き彫りに。それは、名手と言われるフリーキッカーがいないということ。J1史上最多となる24ゴールを決めた名手の中村は、フリーキッカーが育つのは環境が大きいとしながらも、「面白くないですね。いたほうが面白い」と言い切った。

また、自身のW杯に対する思いも吐露。番組からの「W杯は好きですか?」という質問には「僕はもう日本代表のためにプレーしているんで。日本代表が自分の中で一番で、結果出すのがW杯なので。2大会とも結果が出せなかったんで、そこは非常に残念ですね。本当、力不足なのを痛感した大会で、好きですけど辛い思い出のほうが多い」と答え、それでも悔しさや挫折がバネになったと明かした。

セリエAのレッジーナや、スコットランドのセルティックなど、およそ8年の海外経験がある中村は、海外で生き残るためには技術はもちろん、人間性とメンタリティが重要だと断言。運に左右されることもあるとしながらも、「ポジションが重なるとか、いろいろあると思うんですけど、でも本当に良い選手だったら絶対勝ち抜くんで、そういう選手になりたかったですね」と打ち明けた。

海外のリーグに比べて、クラブ間の実力が拮抗していると言われていたJリーグも変化の時を迎え、現在はスタイルを確立したクラブが台頭。横浜F・マリノスはチーム全体が連動するスピーディーで超攻撃的な「アタッキング・フットボール」で、昨シーズンもJ1の頂点に立っている。

しかし、チームの連動が主流の現代サッカーにおいて、個人技で試合を変える“ファンタジスタ”の時代は終焉を迎えようとしていた。突出した個が生まれづらくなっている現状に、中村は「真ん中の10番っていう感じの選手が少なくなっているのはあるんじゃないかなと思います。戦術が発達して、それに伴って選手の連動が本当に素晴らしいですし、コンパクトなので」と、理由を解説。その一方で、「俺、戻ってくると思います。絶対またそういう戦術が来ると思います。トップ下増えてきていますし」と、ファンタジスタの復活を予想した。

引退後、すぐに指導者の道に進むことを選んだ中村は、今シーズンから横浜FCのコーチに就任。これまで数々の指導者と向き合ってきた中村は「セルティックのストラカンとか、ジーコとか、やっぱり世界のトッププレーヤーだった人たちと一緒にやった時に、今思えば何も指示されないんです。でも感覚でしゃべってくるんですよ。その時にこっちが逃さないように噛み砕いて理解するようにする。難しいけど、それがすごいありがたかった」と、指導者にすべて教えられるのではなく、選手側が考えることの重要性を説いた。

最後に、「日本がW杯で優勝するためにすべきこと」を聞かれた中村は、「そんなに急には強くならない」としながら、日本サッカーにはこれまで積み上げてきたものがあると主張。「階段を自分たちでこうやって作って上がる、作って上がるっていうのを繰り返している。うん、いい流れだと思います」と期待を寄せた。

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