10月8日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』（テレビ東京系、毎週土曜24:25～）は、サッカーを学ぶためにスペインへ渡った1人の少年に注目。夢に向かって突き進む彼と家族の物語を追った。

香川県高松市にある街クラブ・香川町FCのボランチで活躍するのは、小学6年生の児山藍士くん。監督やチームメイトからは足の遅さを指摘されるが、ゲームをコントロールする視野の広さで弱点をカバーしている。

この武器を手に入れたのは、2年ほど前のこと。スペインの名門・FCバルセロナが行った日本でのトレーニングキャンプに参加したことがきっかけだった。当時、小学4年生だった藍士くんは、キャンプ中にチームの指導者から実力を認められ、バルセロナ遠征にも参加。10日間のスペイン留学を経験したことで、大きな意識改革が起きたという。

留学中は、バルセロナのホームスタジアムであるカンプ・ノウで試合も観戦。スタジオでは藍士くんが「パススピードとかトラップの置きどころとか、一つ一つの質がめちゃくちゃ高かった」と、スペイン選手の技術力の高さを指摘すると、MCの勝村政信も「日本人もうまいんだけど、何かが違うよね。あれは見なきゃわからない」と同意していた。

帰国後は独自の自主練習を行い、試合中に相手や味方をより意識するように癖付け。さらに、試合映像を見ながら、自身のプレーの反省点を分析する日々。そして、自身の強みを伸ばしながら、いつかは「海外で！」と夢見ていた藍士くんに、千載一遇のチャンスが訪れる。番組にも出演したことのあるドリブルデザイナーの岡部将和が、スペインのマドリードに日本人選手育成のためのアカデミーを開校。藍士くんはアカデミーの入学資格を得るためのセレクションに合格する。

岡部は合格の理由について、「感覚的なプレーヤーと努力を積み重ねたプレーヤーがいて、彼は後者だと思っています。その中でサッカーを楽しくやっていて、そこに輝きを感じました」と説明。念願だった2度目のスペイン留学を実現させた藍士くん自身も「（留学には）うまいから行けるのではなく、うまくなるために行くと思っている。あっちに行ってうまくなる自分を毎日想像しているので、ワクワクと楽しみしかありません」と心境を明かした。

留学の費用面では、「海外に自分から挑戦する勇気と、それを応援するお父さんお母さんの英断に敬意を持った」という地元の後援会や、藍士くんの元コーチが立ち上げたクラウドファンディングなど、多くの人々が支援。いよいよ留学が現実のものとなる。

藍士くんの夢が様々なサポートを受けて形となったことに、勝村も「1人の行動がたくさんの人を実際に動かしている」と感激。解説の福田正博も「純粋な志だから応援したくなる。結果はどうなるかわからないけど、そんなのは二の次。チャレンジするって相当な勇気が必要だし、素晴らしいことだと思います」と褒め称えた。

こうして、たくさんの人の思いを背に日本を飛び立った藍士くんは、マドリードのアルコベンダスという街にあるアカデミーの選手寮にいた。アカデミーには9歳から16歳まで、23名の日本人が在籍し、寮にはサッカーコートはもちろん、ジムやプールなども完備されている。藍士くんは同じアカデミーの生徒4人と同じ部屋で共同生活をしており、サッカー漬けの毎日を送る一方で、海外での成功には欠かせない語学力も磨いていた。

スペインに渡って1か月。言語にはちょっと苦戦しているようだが、大好きなサッカーに関しては「めっちゃ楽しい。めっちゃ早く1か月が経っちゃう」と笑顔を見せる。寮では食事管理も栄養士によって徹底されており、アスリートとしての体作りをサポート。野菜が少し苦手だった藍士くんだったが、「（メニューに）野菜の量がめっちゃ多くなりました。最初はあんまりやったけど、今は慣れて、めっちゃ美味しく食べてます」と声を弾ませた。

サッカーのトレーニングは週5回。指導するのは、レアル・マドリードやアトレティコ・マドリードなど、スペインリーグのクラブで育成年代を見てきたスタッフたち。そんなプロフェッショナルに、日本のジュニア世代はどう映るのだろうか。

藍士くんを指導するキケ・ヒメネスコーチは、日本の子どもたちの技術力はスペインの同世代よりも高いとしながらも、「試合の流れや組み立て方についての知識は、まだまだ足りない」と指摘。一方で、藍士くんに関しては、逆に技術力は足りないが、自身の位置や戦略的な動きを作り出すことには長けていると評価した。

プロリーグに所属するクラブの下部組織との練習を通し、世界のレベルを肌で感じた藍士くんは「他のチームに呼んでもらったり、他のチームに入ったりして、こっちでなるべくサッカーがしたい」と夢を語り、「もっと言うと、プロ契約ができたらいいなと思ってます」と、その先の目標を明かした。