笑福亭鶴瓶流“テレビ魂”「毒」を楽しむ文化は絶対に必要【後編】

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そして現在、笑福亭鶴瓶さんが出演するCMシリーズがオンエア中です。TVerプラスでは、長年テレビと深いかかわりを持つ鶴瓶さんに、“テレビ魂”と銘打ちインタビュー。【後編】では幼い頃のテレビとの思い出や、第一線で活躍し続ける原動力、さらに、これまで語られなかった引退への思いなどについて伺いました。

――鶴瓶さんにとって、あらためてテレビとはどんな存在ですか?

中学校にあがった頃、『東京オリンピック』が開催された昭和39年(1964年)に初めてうちにテレビがきました。「テレビっ子」と言われる時代があったけど、僕は今でもそうなんですよ。家に帰ってからも、ずっとテレビばかり見てる。子供の頃から「テレビばっかり見て」と言われてたけど、“自然と近くにあるもの”なんでしょうね。

――幼い頃のテレビの思い出についても聞かせてください。

はじめは家にテレビがなかったので、テレビのある近所の家に見に行くわけです。そこの兄ちゃんが見ているものを一緒に見るけど、当時は子供だからその内容の意味が分からず「これ、なんやねん!」と思いながら(笑)。チャンネル権がないから変えられないけど、それでも見るんですよ。親が仲いいから、金持ちの家に行って、お茶を出してもらって、眠たくなったら帰るっていう。いい時代ですよね。

それで、家にテレビが欲しいと思ってたら、近所に住んでいた“おっちゃん”が、「安いテレビがある」と。それで、2000円で買うたんです。それを上岡(龍太郎)さんに言ったら、“入手ルート”について色々イジられて(笑)。今のコンプライアンスでは、こういったやりとりを笑いにするのは難しいけど、その時代はそれができたからね。

「毒」を楽しむ文化は絶対に必要なんですよね。毒を楽しまないと、テレビを楽しめないですよ。だから、「テレビ魂とは何か」と聞かれたら、いつまでもコンプライアンスとの戦いです。いかに毒を楽しむか。今はダメと言われているものが多いけど、それはそれでちょっとおもろいじゃないですか。

――時代ごとに“今の楽しみ方”もあると?

そう思いますよ。

――明石家さんまさんも、ダウンタウン松本人志さんも引退について言葉にされたことがありますが、鶴瓶さんは言及されていませんよね?

全然思わないんですよね。ずーっと出ときたい(笑)。こんな楽しいものを70歳になって取り上げられてしまったら、ボケるで(笑)。若いうちやったらいいけど、70歳まで覚えたものを取り上げんといて(笑)。それに、きっと自然に終わっていきますよ。おもろくなければレギュラーもなくなるし、それはそれでおもろいやん。

制作サイドが「もうええわ」と思ったら終わりますからね。その時点で、向こうが引導を渡してくれるでしょう。若い子がどんどんディレクターになって、こんなオッサンと仕事せんでもええ、と思うようになるかもしれんしね(笑)。

――長年、第一線で活躍し続けている鶴瓶さんですが、やりがいや原動力はどこから来るのでしょうか?

僕はずっと舞台をやってて、「これはテレビでイケるかな?」と思うことを、まずは舞台で喋るんです。それで、お客さんが笑いますでしょ? テレビの向こうの人がいかに笑っているかどうかは、生のお客さんとの対比でわかるんです。(生のお客さんに)“ドーンドーン”ってウケると、テレビでもイケるなって思うんです。おもろいことは日常にいっぱい落ちてますから。やらなあかんことは、いっぱいありますよね。

――今、“テレビの中の人”になりたいと思っている若者や子供たちには、どんな言葉を贈りたいですか?

今は“テレビ離れ”と言われてるけど、やっぱり憧れられてると思いますよ。この職業についてると、みんなが興味を持ちますよね。カメラマンだって、「CMを撮ってんの?」「そんな有名人とお仕事してんの!?」とか言われるわけ。儲かるか儲からないかは知らんけど、それは後からついてくるから。でも興味を持たれるって、すごく嬉しいんですよね。

それでも、僕は“中の上”。たとえば『鶴瓶の家族に乾杯』で、すごい有名な人と僕が一緒に歩いてても、道で出会う人たちの目線はまず僕にくるんですよ。あとで放送を見たら「えー! こんな有名な人が一緒にいたの?」って感じると思うけど、自然に目が行くのは、中ぐらいの僕(笑)。ものすごい有名な人が来てるのに、世間は“上の上”が、まさか歩いてると思わないんですよね。

――今回のCM撮影では、「テレビはもっとできる」とおっしゃっていました。

これだけ長い歴史があって、メディアの中の老舗ですよ。それを諦めて、「テレビはもう終わり」とか言うたらあかん。だって、僕がドラマで“あがってる”芝居をしたら、エキストラで出てはる村人が「あがってたなぁ」とか言うわけですよ(笑)。あがってる役をやってるのに、ほんまにあがってると思うんやから。捨てたもんじゃないですし、まだまだテレビはすごいですよ。

――鶴瓶さんの子供の頃のお話にもあったように、昔はみんなで一緒に同じ番組を見ることが多かったテレビ。今は、スマホやパソコンで番組が見られたり、見逃した番組やリアルタイム配信が無料で見られたりと、テレビ番組を様々なかたちで楽しめる時代になりました。鶴瓶さんのテレビの見方に変化は?

一番近くにいる嫁が、TVerを使って色々な番組を見てますよ。僕は忙しくて、見逃し配信まではなかなか見られませんけどね。それに僕は、テレビを見始めるとずっと見てしまうんですよ。そういう時は、「アホか!」って自分で自分に言うんです(笑)。周りに誰もいないのに、「なにしとんねん!」って自分を叱って。それくらいしないと、テレビを切れないんです。

――本当にテレビがお好きなんですね!

そうやね、お笑いなんかずっと見てますからね(笑)。

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