子役出身が“成長期の壁”を見事にすり抜けていく時代 放送作家・鈴木しげきの「テレビを読む」

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子役出身が“成長期の壁”を見事にすり抜けていく時代 放送作家・鈴木しげきの「テレビを読む」

朝ドラ『舞いあがれ!』で福原遥さん(24歳)が『鳥人間コンテスト』らしきものに挑戦しようと奮闘する姿が好評を博している。福原さんといえば、ある年代にはEテレ『クッキンアイドルアイ!マイ!まいん』の“まいんちゃん”として知られる子役出身者だ。

ひと昔前までは、子役でブレイクするとどうしてもそのイメージに引きずられ、成長期に「かわいくなくなった」「劣化した」などの声に悩まされることが多かったように思う。ところが昨今の子役出身者はどうだろうか。“成長期の壁”をするりと切り抜け、なおフレッシュに活躍している。

いったい何が変化したのだろう?

演技者として達者であるがための壁

子役出身者は、その後の人生がマスコミのネタにされることは多い。海外の話ではあるが、映画『ホーム・アローン』で主演を飾り、10歳にして大スターとなったマコーレー・カルキン(42歳)は、自身の莫大な稼ぎをめぐって父親と母親が対立。泥沼裁判になった。その後、アルコール依存症、薬物中毒疑惑も飛び出し、すっかり変わり果てた姿が報道された。

この手の報道は他の有名子役でもたびたびあり、成功しすぎた子役の難しさを感じずにはいられない。

ここまで極端ではないにしても、日本でも子役が成長期に素行不良になって週刊誌の見出しをにぎわせることは昔から定番ネタとしてある。が、その数はぐっと減った印象だ。

芦田愛菜さん(18歳)。中学受験のために一時的に芸能活動を抑えていたものの、難関私立中学校に複数合格。慶應義塾中等部に進学したあたりから、世間は圧倒されたのではないだろうか。子役に対して囁かれがちなイジワルな声が出る隙もない。成長期は、素のしっかり者で愛くるしいキャラクターを生かしてバラエティーにレギュラー出演し、好感度の高さからCMに出る。この戦略は見事だと思う。

2002年のドラマ『人にやさしく』で注目を集め、今や大人の俳優として成長した須賀健太さん(28歳)が過去にこんなことを言っている。「実は高校時代とか仕事していない時期もあった。それは子役から成長して、イメージとのギャップで使いづらい時期で」――いわゆる“成長期の壁”だ。どんな才能ある子役も、この時期には役者としての仕事は減ってしまう。そもそもティーンエイジャーが主人公の作品は「ボーイ・ミーツ・ガール」的な物語や「王子様がやってきた!」のようなストーリーが多く、すでに演技に定評のある子役出身にとっては少々ハマりづらいというのもある。

彼らは10代にして達者な役者なのだ。2009年の大河ドラマ『天地人』や“こども店長”などで注目を集めた加藤清史郎さん(21歳)は、将来、野球選手になるか俳優になるかを悩んでいたところ、共演した市川團十郎さん(当時は海老蔵)からこう言われたという。「君は芸能界で何年やってるんだ?」と聞かれて「13年です」と答えたら、「普通のサラリーマンで13年もやっていたら、かなりのベテランだぞ。そのキャリアを捨てることはないんじゃないか」と。

確かに成長期の壁はあるのかもしれない。しかしそこを乗り越え、成人ともなれば役者として第2レースの始まりだ。そこでは圧倒的なアドバンテージを持つだろう。

演技者として天才である芦田愛菜さんも2020年公開の映画『星の子』では難解な役を演じ、さすがだなと思ったが、今の時期に限っていえば、愛菜ちゃんが演じるにふさわしい役はそんなに多くはないのかもしれない。と同時に、10代は学業をちゃんとやっておきたいと考える子役や、その保護者が増えたのではないか。それは子役のキャリアをスポイルさせない業界の変化でもあるといえよう。

人生の経験を積む時期として着実に歩む10代

加藤清史郎さんは中学卒業後、イギリスの高校へ留学している。現地で高校生活を送りながら放課後に通ったのが俳優学校だったという。多感な時期を日本の雑音に左右されずに伸び伸びと過ごせたに違いない。世の中はちょっぴりイジワルだ。「最近あまり見ないね」くらいの陰口を言う人はいるだろうが、海外なら気にしなくていい。

帰国後、彼はオーディションでドラマ『ドラゴン桜』での役をつかみ、再注目を集めるに至った。

ドラマ『ホタルノヒカリ』『メイちゃんの執事』などで活躍した吉川愛さん(22歳・子役時の活動名は吉田里琴)は、高校入学とともに芸能界を引退。当時のブログには彼女の引退報告とともに所属事務所が「吉田里琴の人生もこれから先がずっと長く、芸能以外の世界を知ることは彼女にとっても良い事なのではないかと考えます」とコメントしている。実際に、彼女は一般の女子高生として過ごし、パン屋さんでアルバイトも経験。その後、「もう一度演技がしたい」と復帰するが、そのバイト経験などが演技に役立っていると語っている。

鈴木福くん(18歳)は学業をしながら仕事もしているが、『真相報道バンキシャ!』では新成人としてコメンテーターもしており、これなども“成長期の壁”に俳優業だけに縛られずにさまざまな経験を積む方法といえよう。また、本田望結さん(18歳)は仲のよい三姉妹のYouTubeが人気で、成長期そのものをファンと共有している。さらに、子役出身者は演技力があるので、体格が大きくなったり声が変わったりしても声優業で発揮しやすい(実際に子役出身で声優さんになった人は多い)。そうやって、上手にオトナのステージへ向けて前進できるようになった。

以前に『ダウンタウンDX』で鈴木福くんが主演する映画での初キスシーンを紹介されたことがあった。この時、ゲスト一同がそのシーンに釘付けになり、「あの福くんが!?」と大騒ぎになった。まるで親戚の集まりだ(笑)。昨今の子役さんは謙虚だ。全国民が親戚のおじさんおばさん状態で「はぁー、大人になったねぇ」と見守ってもらえる。これって子役さんの強みだろう。

もはや子役出身は国民的な俳優になる第一歩だといえないか。安達祐実さん、高橋一生さん、小栗旬さん、神木龍之介さん、伊藤沙莉さん……。芦田愛菜さんなどはすでに存在が国民的だ。日本代表の感すらある。

芸能界を離れても培ったものは大きく生かされる

先日、『世界一受けたい授業』に出演していた、ぽっちゃり体型の“細山クン”こと細山貴嶺さん(27歳)のネット記事を読んだ。慶応大学卒でゴールドマンサックスに勤務歴あり。今は保護イヌやネコと共生型の老人ホームをやりたいと起業を準備中だという。素晴らしい着眼点だ。しかし、そのようなビジネスを発想するようになったのは、自身の小中学時代に受けたイジメが影響しているという。

残念だが、子役に対するそういった現実はなかなかなくならない。けど、負の経験すらも生かして社会に役立とうとするのは、芸能界で成熟した大人をたくさん見てきたからだと語っていた。

子役時代に培ったものは大きい。

それを実感したことがある。筆者は昔、芸人さんのトークイベントを構成していて、そこに『あっぱれさんま大先生』に出演していた有田気恵さんが高校生の時に出てくれたことがあった。すでに“きーちゃん”はテレビで見かけることはなく、イベントという限定されたお客さんに向けてということで特別に出てくれたのかもしれない。そこでの“きーちゃん”は、当意即妙、臨機応変、立て板に水のトークでこちらは脱帽だった。ものすごく盛り上げてくれて「お疲れさまでした」と去っていく、とてもキュートな女の子でした。やはり、幼い頃に培ったものは揺るがない。

そのまま芸能界に進むか、それとも別の世界に進むかはそれぞれだが、きっと子役経験者は身につけた特別なモノをなんらかの形で生かして人生を充実させているに違いない。

【文:鈴木 しげき】

執筆者プロフィール
放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。

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