吉高由里子、直球のラブストーリー挑戦に照れも「自分の中のドキドキも探そうと…」【連載PERSON】

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人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回はドラマ『星降る夜に』(テレビ朝日系、毎週火曜21:00~)で主役・雪宮鈴を演じている吉高由里子さんです。

2006年、映画初主演となった『紀子の食卓』で『第28回ヨコハマ映画祭』最優秀新人賞を受賞するなど、デビュー当時から注目を浴びていた吉高さん。NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』でヒロイン、2024年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』で主演が決定しており、国民的俳優として人々に感動を与え続けています。

数多くの名作を生み出した大石静さんが脚本を担当する本ドラマ。心を閉ざす生活をしていた産婦人科医の鈴は、ソロキャンプ中に出会った10歳年下の“音のない世界”で生きる柊一星(北村匠海)に突然キスをされてしまう――。強引で自由な一星に翻弄されながらも、鈴自身に変化が訪れていきます。

質問を投げかけると、時には熱く、時には笑いで場を和ませる吉高さん。彼女の“人柄”にも触れられるインタビューとなっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

『星降る夜に』の魅力は「言葉ではないコミュニケーション」

――鈴という人物をどう捉えていますか?

仕事場だと、プロフェッショナルな技術を持っていて、責任感のある立場。キャリアも長いでしょうし、プライドの分だけ自信を持って仕事をしていると思うんですが、過去のトラウマを余計に引きずっていて、弱い顔を人に見せないように、鎧をかぶってみんなと接しているのかなと思います。

今回、鈴の過去の恋愛の背景が描かれていないので、どういう感じなのか分からなかったんですが、想像で思っていたのが、人に甘えられないような人だったのかな、と。「寂しい」という気持ちをどう伝えたらいいのか、どこにぶつけていいか分からないから、とりあえず仕事してるみたいな。仕事に生かされているというか……仕事をしているときは、呼吸できるような人なのかなと思っていましたね。

あと、声を出して台本を読んでいたら、自分の声帯から通る「言葉の違和感」が感覚としてあって。「なんで彼女はこういう言葉を選んだのだろう」とか「こう返したってことは、こういう人なのかな」とか、1ピースずつ重ねていくこともありますし、一気にバッとハマることもありますし、想像で輪郭を作っている感じです。

――役柄として「命を扱う仕事」に携わることについてはどう思われますか?

今回、医療モノに出るのが初めてで、“(出産のシーンは)自分がこの中から生まれてきたのか!”という不思議な感覚もあって、まだフワフワしています。出産って自分が当たり前に生まれてきてるから何も思わなかったのですが、“本当に命がけだったんだな”と身に染みて感じていますね。奇跡的なことなんだなと思いました。

――これまで演じた「お仕事ドラマ」とは雰囲気が違うがゆえに、工夫している点や難しいと思うところはありますか?

難しいのは、医療の現場でも、左利きは右利きに直されるそうなんですよ。私はふだん左利きなので大変ですし、最初で最後になるかもしれない医療用語もあるし(笑)……手術はみんなとのコミュニケーションも大事だから、“一人でやってないんだな”と感じました。

――本編では、10歳年下の一星と10歳年上の佐々木深夜(ディーン・フジオカ)という男性が登場します。吉高さんは、どちらのキャラクターに惹かれますか?

若いころは年上だったでしょうけど、いまちょうど(自身の年齢的に)中盤に来ちゃったなというのもあって。自分の10個下の子たちでいうと24、5歳で、社会人として自覚のある行動をしているときだと思うんですけど……。惹かれるのはどっちだろうな……10個上と10個下って絶妙ね!

――(笑)。

「大人だな」「憧れるな」と思える内面を持っている10個上だったらいいんですけど、(精神年齢が低く)「はいー?」っていう45歳も嫌だし、若々しくなくて「疲れた~」っていう25歳も嫌(笑)。でも、(視聴者には)手話で想いを伝えてくれる一星(北村)とか、(深夜の役柄として)“ポンコツおディーン”にキュンキュンしてもらえればなと思います。

――他のラブストーリーにない本作の魅力はどんなところにあると思いますか?

大石さん脚本というのもあるのかもしれないですし、「言葉じゃないコミュニケーション」というのもあるのかもしれないですが、すごく言葉が直球というか。活字で読んでもすごく情熱的だし、一星の言葉がすごく重い。声に出して言うとモジモジしちゃう言葉でも、声に乗せられない思いを“手”で伝えることが、コミュニケーションに厚みを与えているのかなと感じました。

――直球のラブストーリーは久しぶりだと思います。感触としてはいかがですか?

「好き」とか「愛してる」というのが恥ずかしくて(笑)。ただ、この先、母親役などの方が多くなってくると思いますし、「ド直球のラブストーリー」という年代でもなくなってくるのかなと。“10個下の方とラブストーリー作品ができる機会も少なくなるな”と考えると、楽しみながら、自分の中のドキドキも探しながらやりたいなと思っています。

幼きころに見ていたテレビの世界

――ここからは、吉高さんとテレビとの関わりについてお聞きしたいです。よくご覧になっていたテレビ番組を教えてください。

アニメだと『るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー』『新世紀エヴァンゲリオン』。ドラマは『家なき子』『星の金貨』を見ていました。小さいころ、平日は「早く寝なさい」と言われていたんですけど、夜遅くまで起きていいのが金曜日の夜だったんです。だから、『人間・失格ーたとえばぼくが死んだらー』や、『聖者の行進』など、金曜22時のドラマは印象に残っていますね。

――そうした作品が現在の職業に影響することはあったんですか?

当時、この世界は全然意識してなくて。私、小さいころ、テレビを割ったら“芸能人に会える!”と思っていましたし、ドラマもワンカットで全部撮っていると思っていたんです。いざ、自分が演じる側になったら、“2分間のシーンを5時間かけるの!?”と、衝撃的でしたね(笑)。

――いまご覧になっているテレビ番組はありますか?

水曜日のダウンタウン』『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』『マツコの知らない世界』などバラエティが多いです。お仕事が終わって、お風呂に入って、寝る前の一杯にちょうどいい感じに見られるのがいいなと思います。

ドラマは全部録画されるようになっていて、その中で見たいものを決めていますね。だから、(ドラマのスタート時期と重なるため)1月、4月、7月、10月は、ハードディスクがパンパンになります(笑)。

――配信系でご覧になっている番組はありますか?

この間までは、ABEMAで『ワールドカップ』をずっと見ていました。あと、配信で海外ドラマを見ることもあるんですけど、連ドラが入ったら見ないようにしています。寝なきゃいけないのに「次の話に進む」ボタンを押しちゃうんですよ。ヒロインとしてはありえないクマを作る上に、台詞も覚えないで現場に行くことになるので、連ドラ中は卒業しています。

――役者をするにあたって大切にしている軸や信念を教えてください。

「違和感」というものを忘れないでおきたいなと思いますね。自分に近づけた方が楽な役もあるし、逆に近づけると苦しい役もあるけど、対比として違和感をもってる自分がいないとなって。こんなに不思議な仕事もないじゃないですか。自分のスケジュールを管理する人がいて、自分の服を着させる人がいて、自分の顔を作る人、自分が発する言葉を決める人がいて……お芝居だとはいえ、すべてにおいて違和感を持っておきたいです。

ただ、自分が出てるドラマとか映画とか、全部を客観的に見られないんですよ。いまだに思うんです。“私、こんな声じゃない!”って。CMが流れてパッと見たら「あ、私なのか」と思うし、モニターチェックでスタジオから声が流れてきても「ん?」みたいな。もっとハスキーボイスだと思っているんですよ。これは違和感というか、慣れない感じではあるんですけど(笑)、ただ、「変だな」と思うことは、ちゃんとつかんでおきたいなとは思っています。

取材・文:浜瀬将樹
写真:フジタヒデ

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