“芸人ガチバンド”ジュースごくごく倶楽部にインタビュー「目指すは武道館」

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関西を拠点に活躍するお笑い芸人が結成したツインボーカルバンド・ジュースごくごく倶楽部。「芸人がバンド!?」とあなどるなかれ、キャッチーなメロディライン、魅力的な歌詞、圧倒的なライブパフォーマンスといった“中毒性”のある楽曲で、沼にハマる人が続出しているのだ。

メンバーは、ベースの堂前タオル(ロングコートダディ堂前透)、ギターのクラシック(ニッポンの社長・辻)、ドラムのポイズン反町(シカゴ実業山本プロ野球)、ボーカルのジンジャーエール阪本マユリカ・阪本)、キーボードのあたし(滝音さすけ)、ボーカルの愛コーラ(山崎おしるこ ※崎=たつさき)と、お笑いファンなら聞いたことがあるだろうメンツだが、ミステリアスな部分は多い。

今回は、そんな彼らを深掘りすべく、7月17日に開催された東京での初ワンマンライブ『ジュースをこぼすな!』に潜入。ライブレポートはもちろん、独占インタビューも行ったので、ぜひご覧いただきたい。

バンドと芸人の両面を見せたワンマンライブ

記念すべき東京初ワンマンとなったのは、吉本興業の常設劇場・ヨシモト∞ホールの目の前にあるライブハウスSHIBUYA TAKE OFF 7。ライブ会場には多くのオーディエンスの姿があり、今か今かと6人の登場を待ち侘びていた。

ジュースごくごく倶楽部は「盛り上がろう!」の掛け声で始まる「飲み会で喋れない人」を皮切りに、おなじみのナンバーや、新曲、カバー曲などを織り交ぜて披露。会場と一体となって「楽しい!」を共有する時間を作り上げていく。

阪本&辻作詞の「井上さん」では、阪本が初恋の相手・井上さんへの思い出を回顧する一幕も。MCで「僕には忘れられへん初恋の女性・井上さんがおんねん……」と語り出すが「そんなんええから」と辻。周囲の冷たい反応にも負けず阪本は続ける。

「井上さんは今でも僕の心のマドンナ。あの子と出会ったんは中1のときかな?」

ここで、あたしがキーボードでBGMを流す。しかし、間違った楽曲が流れたため、阪本が注意。さらに客席に向かって「ごめんなさいね。信じられへんくらい盛り下がりましたけど……」と語りかけて笑わせた。

また、ライブの最後はジュースごくごく倶楽部の活動では珍しい「大喜利コーナー」でしめくくり。メンバーは「こんなライブ盛り上がれるか! どんな感じ?」「売れている曲に一言くわえて、売れなくしてください」とのお題で爆笑回答を連発し、“笑いの渦”を巻き起こしていた。

芸人たちがバンドを結成するまでの軌跡

ここからは、ジュースごくごく倶楽部へのインタビューの模様をご紹介。バンドを結成したころのエピソードや、それぞれの“担当”についても聞いた。

――まずは初東京ワンマンライブを終えての感想を聞かせてください。

辻:いつもミスせーへんところをミスして、初ライブみたいな感じでした。“東京”という名の大都会に飲まれたのか……(笑)。でも、めちゃくちゃ楽しかったです。

さすけ:ボーカル2人が歌っている後ろ姿を見ていると、“みんなと同じ空間を共有できているな”と思えて幸せでしたね……。

辻:憧れの存在やったん?(笑)。

山崎:芸歴が私だけ短いので、(普段のお笑いライブで)みなさんと一緒にならないんですよ。だから、先輩方と大喜利できたのが嬉しかったです。大喜利つよつよ兄さんばかりですし、いい思い出になりました。

堂前:大喜利のとき一答出すと、いつもはない大きな拍手をもらったんで、普段の大喜利ライブでも何曲かやってからライブした方がいいんじゃないかと思いました。

――(笑)。

阪本:対バンのときって、持ち時間45分くらいで、今回は90分。いつもの倍だったんですよ……。

辻:イヤやったんや?

阪本:こんなにしんどいことあんのかって……。

一同:えー!

阪本:(笑)。ただ、45分と同じくらいの体感で、めっちゃ楽しかったです。

――阪本さんは、冒頭にファミチキを食べるくだりがありましたが(笑)。

阪本:油分のために必要やったんですけど、ノドを通らなかったですね。

――ジュースごくごく倶楽部は、2019年にバンド結成。そのきっかけは?

辻:堂前さんから「バンドをやる。俺はベースを始めるからお前はギターをやって」と誘っていただいたのが始まりです。僕は2年くらいギター経験がありましたけど、ほぼ素人。堂前さんもこれを機にベースを始めるって。

堂前:最初は「みんなで1曲できたらいいな」くらいの気持ちでしたね。

辻:そうなんや……。俺が“ガチでやるつもりや”と勘違いして本気で動いた感じです。そこからメンバーを集めるんですけど、ボーカルは阪本やなと思っていました。舞台で替え歌大喜利をすることがあって、そのたびに気持ちを込めて歌うんですよ(笑)。ちゃんと歌いあげるし、うまかったし、いいかなと。

堂前:カラオケ行ったとき、V6の「Darling」を歌っていたんですけど、ほんまに感情を込めて歌ってた(笑)。

阪本:誘われたときは相方の中谷の方が歌上手ですし、“なんで僕なんやろう?”と思いました。

辻:(ボーカルが)中谷やったら僕は抜けますね。あんなヤツの横でやりたくないです(笑)。阪本加入後は、何も誘ってないのに、山本さんが「俺はドラムを始める!」と言い出して入りました。その後、1回目のライブを見に来ていたさすけが加入することになるんですけど、さすけは回りくどくて。「あたし、じつは中学の時にピアノ習ってたんよ。また触ってみようかな……1年後とかにサポートメンバーとして入るのはどう?」とか言うてくるから「もう入れや」って(笑)。

さすけ:(既存メンバーは)最初から「『ミュージックステーション』に出よう」と言っていたんですよ。これに乗っかって、マジでそれくらいの気持ちでやりたいな、と思って入れさせてもらいました。今はこうしてインタビューを受けていますけど、昔から(モチベーション高く)やっているから、ここまでこられたんやと思います。

堂前:インタビューが最終目標みたいになってるやん。

――(笑)。愛コーラさんは最近加入したばかりです。急きょライブに出ることになったそうですね。

山崎:ある日、寝ていたらさすけさんから電話がかかってきて「今日ライブ出れる? 歌ってくれ!」と言われたので、ダッシュで向かって、歌詞を覚えて、打ち合わせして、ライブして……という1日でした。

――急きょでも対応できたんですね。

山崎:ジュースごくごく倶楽部さんは、以前からスマホで聴いたり、ライブを観に行かせていただいたり、ファンだったので、ある程度覚えていました。

辻:その日のライブで、急きょ女性ボーカルが必要となったんですけど、まさか山崎が出てくれるとは思っていなかったんですよ。だから20世紀しげという男芸人を女装させて、お笑いで「ごめんなさい」で終わらそうとしていて……。(山崎が)出てくれたのは願ってもないことやったし、ちゃんとした演奏も披露できてよかったです。

――バンドとして大事にしたいポイントを教えてください。

辻:しっかり音楽を聴いた上で、(芸人ではなく)バンドとして見ていただきたいです。お笑いファン以外の方や、たまたま聴いて好きになった方が増えると嬉しいですし、“芸人がバンドをやっている”という入りで聴いてくれると、いい意味でハードルが下がっていいのかなと思っています。もちろんお笑いから入ってくる人のためにも芸人活動も頑張りたいです。

堂前:僕らのネタを見たことないけど、曲はめっちゃ聴いてるみたいな人が増えると嬉しいですけどね。

山本:劇場に届いたファンレターで「バンドから知りました」という方がおったから、俺からしたら収穫やわ。

さすけ:相乗効果やな。

――みなさんライバルというより仲間という意識が強いんですか?

阪本:全員、仕事がない時代からの仲良しメンバーなので、ライバルという感じじゃないですね。

辻:メンバーの誰かが売れたら得するなぁとは思います。一番はボーカル2人(阪本、山崎)が売れてくれたらめっちゃ嬉しい。

山本:売れたあと、レコード会社の人に「お前ら2人でデビューさせたい」って話がきて葛藤してほしいよな。

――(笑)。楽器以外に、活動やマインド面での担当を教えてください。

辻:タメ口担当はこいつ(さすけ)。(先輩もいるのに)全員にタメ口やし、対バン相手にもタメ口なんで。「タメ口」という名前に改名する案もあったくらいですから。

さすけ:(笑)。

堂前:(辻は)一番音楽に詳しいし、作曲もしているし、曲と(バンドの)道筋担当じゃない?

山本:僕は「芸人がやっているから演奏はヘタでもかまへん」というのが一番イヤなので、真面目に取り組む担当ですかね。レッスンに通ったり、スタジオに行って動画に残したり、努力をみせてアピールしています。

辻:山崎は、マジでデザイン力あるんで、堂前さんと2人でどんどんグッズを出してほしいです。

堂前:あと、(山崎は)“華”担当とかね。

辻:(阪本)1人やと華ないもんな。

阪本:そんなことないやろ。

堂前:僕は、みんなの妹担当ですかね。

辻:そんなこと思ったことないわ(笑)。メンバーみんな積極性があって「行こうぜ!」みたいな感じなんですけど、(堂前は)「ちょっと待ってくれ」と冷静にさせてくれます。妹じゃなくて、みんなのおばあちゃん?

阪本:ストッパーババアでいいんじゃないですか?

山崎:全然、妹じゃない(笑)。

阪本:僕はカリスマ担当であり、バンドの顔であり、不動のセンターです。

辻:ピエロやろ。

堂前:不動のピエロ。

さすけ:(笑)。でも、昔よりは(雰囲気が)出てきたな。

辻:みんなジャンルは違えど音楽は聴いてきたんですけど、(阪本は)アイドルを聴くくらいで、まったく興味ない中、ここまで歌えるようになったんはスゴいと思います。

――本日も多種多様なパフォーマンスをされていましたが、みなさんに教えられたものなんですか?

阪本:そうですね。最初は、ほんまに何も知らなくて。たとえば、間奏中に水を飲んじゃったことがあったんですけど「それは変なことやで」と教えてもらいました。

――(笑)。

堂前:変な知識がないからどんどん吸収していったよね。

さすけ:対バン相手からも吸収するんで。

――では、阪本さんはライブをこなすたびに成長していくんですね。

さすけ:今と昔とでは全然違うと思います。初ライブを見に行きましたけど、(阪本の)ボーカルはただのカラオケでしたよ。

阪本:当時、(さすけとは)面識なかったのに、僕にいきなり「(さすけの声マネで)あなたの歌い方はまだまだカラオケね〜!」と言われましたもん。なんやこいつと!

辻:辛辣やな~(笑)。

――これまでのライブについて。印象的だった回は?

堂前:結成当初、初めてライブに出たときは、芸人の初舞台を思い出しました。あの緊張を味わえただけでも収穫やったし、次はもっとうまくなりたいとも思いました。芸人の活動だけやっていても、あの緊張感はもう味わえないと思うんでね。

辻:初めてのワンマンを無観客配信でやったんですけど、あとで芸人にデータを送ったら、みんな見てくれて評価もしてくれたのが嬉しかったです。音楽やってた先輩もめっちゃ褒めてくれて、“やってたことは間違ってなかったんや”と安心しましたね。

山本:僕らのライブって、毎回大ハプニングが起きるんですよ。阪本がコードを引っこ抜いたり、阪本が間奏中に歌いだしてソロの邪魔をしたり、阪本が……。

阪本:俺のミス並べてるだけやん。

辻:(笑)。でも「対バン相手もプロやし、ちょっとハプニングやめようか」という話になってから、なくなったよな。

山崎:私は、(前述した)初めて参加したライブですね。忘れがたい1日です。

――愛コーラさんの当時の心境を教えてください。

山崎:すでに(バンドとして)ジュースごくごく倶楽部さんが仕上がっていたときに入れさせてもらったんで、余計に努力しようと思いましたし、賞レースでも結果を出している先輩だらけなので、同時にお笑いの方も頑張ろうという気持ちになりました。

――愛コーラさんの印象はいかがですか?

さすけ:どんどんよくなっていますよね。ただ、いまだに「ジュースごくごく倶楽部“さん”」と言っているから、それだけがよくない。

辻:ラジオでも「他人行儀や」と怒ってたな(笑)。

さすけ:僕らが(山崎より)めっちゃ先輩なんで気を遣うのは分かるんですけど、ほんまにこちらからしたら仲間やし、気にしないでやってほしいです。パフォーマンスもそれくらいレベル高いんで。

辻:一発目から高かったよな。阪本の一発目とはまったく違うというか。

阪本:比べるもんじゃないし、僕らの手本を見てたというのも大きいですよね?

――ライバル心があるんですか?

阪本:いやいや、ないですよ。

辻:(阪本が山崎に)だいぶ厳しいんですよ。歌で入る場所間違えたら怒ってたもんな?

阪本:全然怒ってないですよ。“間違えてはるな”という顔をしているだけです。“間違えているのは僕じゃないですよ”って。

――(笑)。今後の活動や目標について教えてください。

辻:僕らが『Mステ』に出たら面白いと思うんですけど、最近はライブの方が楽しいなって思うようになっているので、(目指すは)武道館ですかね。でもそのためには『Mステ』に出るくらいじゃないとアカンし……。このメンバーで武道館に立ってみたいです。

山本:武道館もそうですけど、バンドでしかできへん経験をしたいですね。みんなでよく言うのは、海外の山奥でのレコーディング。結局は趣味の延長なので、とことん楽しむ方にいきたいです。

さすけ:お笑いもそうなんですけど、バンドの給料だけでもメシ食えるくらいしっかりやりたいです。二足の草鞋を履き切れるくらい頑張ります。

山崎:もっと歌がうまくなりたいですし、みなさんと武道館で大喜利したいです。

――(笑)。

堂前:個人的には、音楽に対する自信をつけていきたいですね。最初はお笑いも自信がなかったんですけど、今は割とついてきているので、音楽もそうなっていけたらなと。バンドとしては、大きいキャンピングカーに乗って、みんなで全国を回りたいです。

阪本:どこまでいっても、いい意味でこのままでいいというか。“バンド=仕事”となりたくないです。楽しいまま、景色だけが武道館に変わったら最高ですね。

堂前:でも歌詞とかミスってたら武道館は行かれへんかもしれんな。

阪本:そういうのがイヤやねん。

辻:注意されるのがイヤってことやんな?

阪本:そうは言うてない。もう……ほんまイヤなバンドやで。

――(笑)。

<プロフィール>

バンド内での呼称:堂前タオル
芸人としての名前(コンビ名):ロングコートダディ・堂前透
楽器:ベース
バンドでの役割:みんなの妹、ストッパーババア

バンド内での呼称:辻クラシック
芸人としての名前(コンビ名):ニッポンの社長・辻
楽器:ギター
バンドでの役割:曲と道筋

バンド内での呼称:ポイズン反町
芸人としての名前(コンビ名):シカゴ実業・山本プロ野球
楽器:ドラム
バンドでの役割:真面目に取り組む

バンド内での呼称:ジンジャーエール阪本
芸人としての名前(コンビ名):マユリカ・阪本
楽器:ボーカル
バンドでの役割:カリスマ、バンドの顔、不動のセンター、ピエロ

バンド内での呼称:あたし
芸人としての名前(コンビ名):滝音・さすけ
楽器:キーボード
バンドでの役割:タメ口

バンド内での呼称:愛コーラ
芸人としての名前:山崎おしるこ
楽器:ボーカル
バンドでの役割:華担当

<ライブ情報>


『YES!ごくごくTHEATER』
8月26日(金)
OPEN 18:30/START 19:00
@YES THEATER
出演者:ジュースごくごく倶楽部、セルライトスパ肥後裕之、マユリカ・中谷、(O.A)SO.ON project、シークレットゲストあり
チケット:SOLD OUT

『LIVE STAND presents「ごくごくスタンド」』
9月17日(土)
OPEN 13:30/START 14:00
@COOL JAPAN PARK OSAKA WW HALL
出演:ジュースごくごく倶楽部 ほか

『ドリアンジュース』
9月23日(金・祝)
OPEN 13:30/START 14:00
@神戸VARIT.
出演:ジュースごくごく倶楽部/超能力戦士ドリアン
チケット:SOLD OUT

『おとぼけ倶楽部』
9月23日(金・祝)
OPEN 18:00/START 18:30
@神戸VARIT.
出演:ジュースごくごく倶楽部/おとぼけビ~バ~

(取材・文・ライブ写真:浜瀬将樹、アーティスト写真:松本理加)

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