PKで勝つためのヒントを探る!守護神・楢﨑正剛が現役時代を回顧「ウエルカムだった」

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PKで勝つためのヒントを探る!守護神・楢﨑正剛が現役時代を回顧「ウエルカムだった」

9月2日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)は、試合の命運を決めるPKの世界を特集。元日本代表の守護神・楢﨑正剛をゲストに迎え、PKをあらゆる角度から分析した。

W杯では1998年のフランス大会から4大会連続で代表に選ばれ、2010年にはゴールキーパー初のJリーグMVPを受賞。代表でもクラブでも、ゴールマウスを守り続けてきた楢﨑は、PKについて「若いときの方が勝つ確率は高かった」と言い切り、「いろいろ考えすぎちゃうことはあんまり良くなかったんじゃないかな」と、キャリアを重ねることの弊害を明かした。

一般的にはキッカーが有利と言われるPKだが、その成功率は70%。10本に3本は外している計算になる。この成功率を上げていくことこそ、日本が世界で戦うためのカギになるが、現在のJリーグではPKの機会が極端に減少。特にJ2ではPKの笛が吹かれるまでの時間が613分に1回と、世界75のリーグと比べると最も頻度が低くなっている。

解説の北澤豪は「僕らがJリーグにいた頃はPK決着が導入されているときもあったんで、割とPKを蹴っている印象はある」と振り返りながら、「今はあんまり選手もPKの練習をしようとは思わなくなりますよね」と現状を憂慮した。

北澤と同じくPK戦のあった時期を経験している楢﨑は「PKになりそうな時間帯になってきたら、“PKになんねえかな”とか思ってましたよ。キーパーは1本でも止めれば、ヒーローになる確率が高いので。だから、PK戦はすごくウエルカムだった」と述懐。これには北澤も「これが怖いのよ、こっち(キッカー)側にしてみたら。こっちは1回だけど、5回チャンスがあるわけだから」と白旗を上げていた。

PKの機会を増やすために、Jリーグでは来年のYBCルヴァンカップから予選リーグを撤廃し、トーナメントのノックアウト方式に大会フォーマットを変更予定。決着がつかない場合はPK戦で勝敗を決めることになる。現在、名古屋グランパスエイトでゴールキーパーコーチを務めている楢﨑は、カップ戦の直前には練習でもPKを行っていることを明かした。

PKの成功率を上げるためには、コース取りも重要になる。去年のカタールW杯におけるコース別のPK成功率を見てみると、ゴールの真ん中は上中下ですべて100%という統計に。楢﨑は「キーパーはキッカーよりも先に動くので、真ん中を蹴ることが多い選手と対峙しても、動くのを我慢するのは難しい」とキーパーの目線で指摘。その上で、「真ん中でも低いところにボールが来ると脚は残せたりするので、守れる範囲かなって思います」と主張した。それでも、やはりキーパーにとって真ん中は鬼門なようで、「真ん中に蹴ってくるヤツは、卑怯だなって」とぼやき、出演者を笑わせていた。

また、“コロコロPK”を武器に得点を決めてきた遠藤保仁は、かつて番組に出演した際に、キーパーのわずかな脚の動きを蹴るギリギリまでチェックしていると告白。逆に楢﨑もキッカーの軸足や助走の雰囲気を観察し、飛ぶ方向を決めていることを打ち明け、遠藤を筆頭に高度な駆け引きを要求してくるキッカーに対しては、「あれができるのはすごくレベルは高い人」と褒め称えていた。

他にも、5大リーグやワールドカップを元に算出されたコース別の阻止率を見てみると、ゴールマウスの上が阻止率0%という結果に。ここを狙われるとキーパーは手も足も出ないことがわかる。一方で、1994年に行われたアメリカW杯の決勝でPKを蹴ったロベルト・バッジョは、ゴールマウスの上を狙って外し、優勝を逃している。北澤は「外れる確率が高いから、上に行き過ぎていて」とし、「90分120分やった後だと軸足が弱っているのね。だから普段の練習とは違う影響力が出て、踏み込みが緩くなったりする」と、PKで通常のポテンシャルを発揮する難しさを強調した。

これら成功率や阻止率はPKを分析する上で重要な指針になる。熊本の強豪・大津高校で正キーパーを務め、現在は拓殖大学でプレーする西星哉は、研究を重ねて、多くのキッカーは左右の下を狙ってくることを導き出した。この研究によってPKの阻止率は20%から40%に上昇。コースを2つに絞ることで余裕が生まれ、迷いなく飛べるようになったのが、阻止率アップにつながったのだという。

自ら研究して阻止率を上げた大学生の西に、MCの勝村政信は「こうやって自分で思いついて考えて、自信を持って阻止率を上げるって素晴らしいじゃないですか」と絶賛。楢﨑も「全部を止めるというより、確率の高いところに絞ってというのは、すごく理にかなっている」と、コースを絞ることの有効性を認めていた。

さらに番組では、中学2年生が考案したPKを攻略するための計算式や、大学教授が提唱する効果的なPKを蹴る順番などを紹介。最後にPKを強化するために必要なものを聞かれた楢﨑は「技術をしっかり上げていくっていうのが一番かなとは思います」と断言し、「キーパーも方向が合ったときにしっかり止められるように、タイミングを合わせて、体を大きく見せて、体にしっかりボールを当てる。そういう技術の練習をしていくしかない」と説いていた。

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