『風間公親-教場0-』5人目は問題児?木村拓哉“風間”が呼び覚ます、染谷将太“中込”のトラウマ

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『風間公親-教場0-』5人目は問題児?木村拓哉“風間”が呼び覚ます、染谷将太“中込”のトラウマ

これまでも個性的な新人刑事がやってきたが、こんなにも最初からインパクトの強い人物はいなかった。染谷将太、恐るべし。『風間公親-教場0-』(フジテレビ系、毎週月曜21:00~)6月5日放送の第9話で風間公親(木村拓哉)の元に送り込まれたのは、所轄署の問題児・中込兼児(染谷将太)。中込が抱える事情も相当シビアなもので……。

推理小説マニアが導き出す事件の真相

今回の事件は跨線橋の上での殺人事件。「この現場は懐かしい感じがする」と風間が言ったが、それは推理小説において跨線橋とは、遺体を橋の上から落として列車の屋根に載せ遠くへ運ばせる、という展開でおなじみだから。

通り魔の犯行のように見えるが、ご遺体は顔や指までライターで焼かれていた。被害者の身元特定に必要なものは何かという問いや、犯人になったつもりで動きをシミュレートするという捜査のコツは、瓜原潤史(赤楚衛二)や遠野章宏(北村匠海)との事件でも教えていたことを思えば、捜査の基本のキなのだろう。

防犯カメラの映像から、被害者と思われる人物がかつて強盗事件で服役していた加茂田亮(金井勇太)だと判明。物の置き方に異常なまでに正確を期するクセから、厳しい規律にさらされてきた人物だと導き出せたのは、かつて自分たちもそんな特殊な環境にいたからだ。

警察学校は畳んだ毛布の角がわずかにずれていてもペナルティを課せられる世界。物の置き方には自然と神経質にならざるを得ない。同様に服役していた人も、私物の管理がしっかりできていないと刑務官から懲罰を食らってしまう。これはいい推理だった。

風間と中込は、加茂田がかつて起こした強盗事件の被害者の恋人・篠木瑤子(早見あかり)が犯人だとあたりをつけて捜査を進める。法律を盾に取り冷静に対応する篠木は、血の気が多い中込と対比させるにはもってこいの人物像だった。やり取りを録音しておくなど抜かりがない。これは実際に有効なテクとなっている。

最終的には中込が伊上幸葉(堀田真由)と訪れた病院で目にしたカプセル内視鏡がヒントとなり、物証が決め手となって事件は解決。犯人がいくら念入りに準備をしていても、いざ実行となればどうしても不測の事態に見舞われるもの。そこを見逃さないのが、刑事の手腕なのだろう。

問題児・中込が抱える深い闇

これまで所轄署の強行犯係で刑事をしていた中込。被疑者に対して平手打ちをするなどの暴力や素行の悪さが原因となり、風間道場への異動を命じられていた。

風間や他の刑事に対しての態度や言葉遣いは決して良いとは言えないし、舌打ちもするし、現場でタバコも平気で吸う。この無頼漢な刑事像、ちょっと懐かしい。

昔は刑事ドラマにこういう刑事がたくさんいた気がする。家の棚に刑事や探偵モノの小説やDVDが多かったのを見ると、かなり影響されていそうだ(コンプライアンス研修などがしっかり行われている現代では絶滅危惧の類だろうけど)。

臨場したあと、ご遺体に手を合わせない新人刑事も今回が初めて。そういえばスペシャルドラマ版『教場』の198期生たちは、被害者の苦しみを想像する言葉が足りないことで卒業検定を不合格にされていた。無礼な態度の刑事をこれ以上増やさないためにも、風間教場は厳しく指導するようになったのだろうか。

しかし、常にいらだっている態度の原因は家族にあったよう。中込は若年性認知症になった母(余貴美子)を、妻(大西礼芳)と二人で介護していた。ご飯を食べたことも忘れ、息子のことも忘れてしまう母の介護に疲弊しきっているストレスがイライラの要因だった。

もちろん大変なのはわかる。しかし、認知症の人に対して声を荒らげたりする態度は逆効果。認知症ケアは相手の尊厳を守りつつ、その人の視点や立場を理解することが大切になる。

本来その精神は、刑事なら当たり前に持っているべきものだろう。被害者の無念を理解すること。加害者の気持ちを想像すること。苦しんでいる人の声に耳を傾けること。それが警察官の仕事だということは警察学校でも習うはずだ。同様に、もう少し母や介護疲れの妻の気持ちも理解・想像できるようになってほしい。

ただそれだけではなかった。なんと、誘拐された過去があることも判明。もしかしたら心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩まされている可能性もある。

トラウマを呼び覚まそうとする木村拓哉の迫力のある追及シーンはとても見ごたえがあったが、目が泳ぎ、激しく体を揺らす反応を示す染谷将太の演技の応戦も素晴らしかった。この二人のやり取りはもっと長尺で見たい。

また、幸葉とのコミカルなやり取りも楽しみの一つになりそう。中込にそっくりな起き上がり小法師のレゴをプレゼントしていたが、何度転んでも立ち上がれという幸葉なりのメッセージか?

千枚通しの事件チームに隼田が加入

風間と遠野が刺された事件についても同時進行で捜査が続いている。十崎波琉(森山未來)はその後も犯行を繰り返していて、もはや一刻の猶予も許さない事態。

十崎を追う柳沢浩二(坂口憲二)は、事件の目撃者である鳥羽暢照(濱田岳)のことも言及。『教場II』で風間は鳥羽に「私の右目のことで覚えがあるな」とささやいていたが、今回目撃シーン以外での再登場はあるのだろうか。

また、風間に恩返しがしたいと隼田聖子(新垣結衣)は事件の専従捜査チームに志願。風間のそっけない態度は気になるが、これは指導官としての照れか。ともあれ、また二人の交流が見られるのはファンにとってはありがたい。

(文:綿貫大介)

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