まさか、自分が被害者となった事件現場の実況見分に立ち会うことになるとは。5月22日に放送された『風間公親－教場0－』（フジテレビ系、毎週月曜21:00～）第7話は、風間公親（木村拓哉）と遠野章宏（北村匠海）が襲われた事件後の物語。遠野はいまだに意識不明のままで、検証立ち合いは風間のみ参加。そこにはなぜか隼田聖子（新垣結衣）の姿も。どうやら今後もかつての道場生たちの登場に期待できそうだ。さらに風間のもとには新たな新人刑事・鐘羅路子（白石麻衣）がやってくる。
「なんとなくですけど」。新人刑事・鐘羅路子の勘は特別
今回の事件は、舞台俳優の元木伊智朗（前原瑞樹）の首吊り自殺。自殺も変死扱いとなるため、万が一の事件性を考え刑事が臨場することになっている。
参考人は、元木が死亡した部屋の住人で、主演舞台を控えている同じ劇団の女優・筧麻由佳（瀧本美織）と、隣室に住む佐久田肇（大村わたる）。二人は元木が自ら首を吊る瞬間を目撃していたのだ。
風間と路子は現場で初対面。路子は所轄署でも事件の解決に貢献するなど、一定の評価を得ていたようで、過去の新人刑事と比べても現場での聴取はうまく見える。それに、男女の恋愛における機微を察知するのにとても長けている。
路子は麻由佳が本性を見せていないことを怪しみ、他殺の線で捜査を開始。元木の部屋を調べる際にも、ちょっとしたことからドロドロの恋愛関係を察するなど独特の嗅覚を発揮していた。常に緊張感が張り詰める『教場』の世界観では異質だが、重厚な雰囲気をぶち壊してくれそうで気になる存在だ。
風間に対して「結婚されてるんですか？ 女の匂いがしないですね」とプライベートに切り込んだのにも驚いた。なかなかのツワモノかもしれない。風間に恐縮する他の新人刑事とはあきらかに違う。
「なんとなくですけど」という口癖も気になるが、勘の鋭さは刑事にとって大事なスキル。『警視庁・捜査一課長』で斉藤由貴が洞察力と直感力に優れた刑事を演じていたが、同じ匂いがする。ただ路子の場合、実体験に基づく経験がそうさせているのかもしれない。
酒の缶やカップ麺が散乱する部屋に、毎朝置かれる2000円。路子の家には、交際相手のヒモ男・西田徹（渋谷謙人）が住み着いていた。
「女がヒモ男と切れないのは弱みを握られたか、男がめちゃくちゃ優しいかのどっちかです。傷つくのが好きな女って意外と多いんですよね」。麻由佳に対しての見立てを風間にそう述べていたが、路子も傷つくのが好きなタイプなのだろうか。
今回路子を演じるに当たり、白石麻衣は役柄に合わせて髪を20cmカット。アイドル級の笑顔をも武器にして人の懐に入り込む自然体の刑事というのはぴったりの配役だ。
瀧本美織、木村拓哉、白石麻衣……俳優たちの熾烈な演技バトル
二重構造の劇中劇スタイルが入ってくるドラマは、なんだか見入ってしまう。麻由佳が所属する劇団の練習風景もおもしろかった。麻由佳演じる瀧本美織の存在感だけが秀でていたから。舞台女優然とした立ち居振る舞いが完璧だと思った。
芝居はもちろん、他人に対する横柄な態度も、サングラスを外すしぐさも、看板女優のイメージそのもの。動きがいちいち芝居がかり、声のトーンが高く、感情が激しい様は、三谷幸喜脚本に出てきそうな“誇張した有名女優役”を彷彿とさせる。
軽快なノリを崩さずに迫る白石麻衣と、終始何かを演じているかのように接する瀧本美織。腹の底を隠した二人が対峙する劇場の階段シーンは、サスペンスドラマとしての緊迫感に満ちていた。
「役者は欲張りなの。次は悪女を演じてみたいな」。冗談めかしてそうささやく麻由佳はまるで何かに取り憑かれているかのようだった。現場で事情聴取されていたときと態度が全く違う。
舞台上で事件を再現し、麻由佳を仕留めるシーンは今回の見せ場。もともと劇団で女優をしていた過去を持つ伊上幸葉（堀田真由）と、谷本進一（濱田崇裕／ジャニーズWEST）、尾山柔（結木滉星）コンビによる再現劇は2回目にして板についてきた。徹夜で練習したという後日談からは“劇団幸葉”の指導の厳しさも伺える。
風間が早々に麻由佳の怪しさに気づき機転を利かせていたことで、麻由佳が犯人である証拠はすでに採取済み。すべてを悟り、風間に「あなたの方が、一枚上手の役者」と告げ握手を求めるシーンもまた見事だった。それはドラマの筋書きというよりも、瀧本美織と木村拓哉という俳優同士の勝負のようにも見えたから。
ガーゼにサングラス（しかもティアドロップ！）をした姿で眼光がはっきり分からないにも関わらず、なお鋭い眼力と存在感を放つ木村拓哉。そして手錠を受けるように両手を合わせ「今度は容疑者を演じてみたい」と大粒の涙を流しながら笑う瀧本美織。二人とも恐るべし。
転属届はなしでも、次回は波乱の予感
お決まりの転属届は出てこなかったものの、風間は路子に「得意な技を持つことは、致命的な弱点にもなる」と意味深に告げる。路子が抱える問題に、きっともう気づいているのだろう。
路子が薬物対策課のデータベースに入ろうとしたり、担当の刑事に内偵捜査の状況を尋ねたりする場面も今回描かれていた。これは危険な匂いがする。もし交際相手やその周辺人物が違法薬物に絡んでいるとしたら。そして操作状況を漏らすようなことをしてしまったら。もはや転属どころの騒ぎではない。
一方、15年前に風間が逮捕して自白に追い込み、3か月前に出所した千枚通しの男こと、十崎波琉（森山未來）の行方も気になる。風間は眞堂丈史（小林薫）から捜査チームで指揮を取るよう要請されたが、指導があるからと首を縦に振らない。
こちらの事件は今後どう絡んでくるのだろうか。
（文：綿貫大介）
