『風間公親-教場0-』“あすなろ会”木村拓哉・筒井道隆の渋みを増した胸アツ共演と、シリーズの謎を担う雨の惨劇

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『風間公親-教場0-』“あすなろ会”木村拓哉・筒井道隆の渋みを増した胸アツ共演と、シリーズの謎を担う雨の惨劇

いよいよ雨の屋上での惨劇がやってきてしまった。5月15日に放送された『風間公親-教場0-』(フジテレビ系、毎週月曜21:00~)第6話は、風間公親(木村拓哉)と遠野章宏(北村匠海)のバディ後編。風間と遠野を襲う“あの事件”が、ついに物語とつながっていく。

木村拓哉と筒井道隆が同じフレームに収まる嬉しさ

熊之背山で、頭部と両手首が切断された遺体が発見された。犯人は画廊を経営している向坂善紀(筒井道隆)で、遺体は向坂の元妻の再婚相手である歯科医・苅部達郎(浜田信也)。息子の匠吾(城桧吏)の進路をめぐり、口論の末の犯行だった。

臨場後、風間からの質問に遠野が答えられないままでいると、続けて「絵を描いてみろ」と助言が。前回、風間の指導をほぼ受ける必要がない優秀っぷりを発揮していた遠野だが、今回は苦戦しているよう。

DNA鑑定で遺体の身元が特定されるまでは3日。科捜研より先に被害者を特定し、犯人を仕留めるのが今回の遠野のミッションとなる。

容疑者を向坂に絞った遠野に対して風間が発した「画家を容疑者に挙げたのなら美術の勉強をしろ」という言葉にはしびれた。風間は、事件の数だけ教養を身に付けてきたということか。

遠野は向坂に熊之背山の絵を依頼し、画廊前のショーケースに飾ってもらう。絵を不特定多数の目に触れさせて心理的な圧迫感を与える作戦だった。遠野は人の感情に目を向けている。

それはそうと、向坂を演じた筒井道隆と木村拓哉についてもやはり触れたい。かつて月9『あすなろ白書』で同級生を演じた二人。数年前にプライベートでも当時のメンバーが揃って“あすなろ会”をしたと鈴木杏樹がテレビ番組で語っていたから、実際には数年ぶりの再会だと思う。

当時は大学生役。時を経て、渋みを増した二人の共演が見られるなんて。会話シーンはほぼなかったが、同じフレームの中で視線が交わっているだけドラマファンとしては胸アツだった。“あすなろ会”のメンバーそれぞれが立派な俳優に成長していることを思うと、木村拓哉による大人の群像劇もみてみたくなる。

芸術文化への無理解が引き起こした事件

かつての道場生・瓜原潤史(赤楚衛二)の母である医師の助言のおかげで、被害者が歯科医だと特定できた遠野。道場生が入れ替わるスタイルの中で、ちゃんと過去の登場人物についても触れてくれるのはありがたい。

しかし、遠野の追及に向坂は落ちなかった。風間は向坂がシャバに思い残しがあることを察して引き上げるが、容疑者にとって一番大事なものはなんなのか。

遠野は熊之背山の絵を描かせることで向坂を追い詰められると思ったが、向坂がオーダーを受けた目論見は少し違う角度にあったようだ。原風景を想起させる絵画を、絵の心得を持つ人間=匠吾が目にしたらどうなるか。きっと画家として立つ未来の自分の姿がはっきりイメージできるようになる。

匠吾の意思を聞き受け、向坂は自首した。芸術の才能がある匠吾を画家の道に進ませたい向坂と、歯科医にさせたい苅部。今回のエピソードの根幹は「芸術なんかで食っていけるか」という台詞に尽きる。

芸術家と歯科医、天秤にかけたら誰もが歯科医の方が儲かるからそうしろと思うかもしれない。需要があるのか、日本での歯科医院の数はもはやコンビニよりも多いといわれている。

実際、芸術文化をないがしろにした価値観はかなり蔓延しているように思う。コロナ禍では政治が文化・エンタメ活動に「自粛」を要請。「不要不急」と名指されたと受け止めた文化関係者たちに、大きな衝撃が走った。

一方でドイツの文化相はアーティストを「生命維持に必要不可欠な存在」と言い、フリーランスのアーティストに支援を約束。文化を民主主義の根幹とする姿勢が話題になった。

当然ドイツにも、作品だけでは食えないプロのアーティストはたくさんいる。でも、彼らは自分の本職はアートだという誇りを持っているし、それを尊重する空気が街全体にある。「芸術は食えない」なんて考えで切り捨ててはいない。

このように、お金がすべての資本主義軸にとらわれずに「真に素晴らしいものが評価される社会」こそ私たちが進むべき理想の未来なのだと思う。芸術家を目指す人が多い社会ほど、醸成されているといえるのかもしれない。

雨の惨劇、千枚通しの犯人役は森山未來

剣道着姿の遠野が竹刀を構える姿は、風間に似ている。もしかしたら遠野は風間のような凄腕の刑事になり得るのではないかと思った。しかし、その後の惨劇を視聴者はすでに知っている。

雨の屋上シーンに向かうにつれて、増す緊張感。風間は信頼する人にしか運転を任せないが、遠野がハンドルを握ることを許可されるのをみて、遠野を刑事として認めたのだなと理解した。

指導官と新人ではなく、刑事のバディとなった証。だからこそ、このあとの展開は余計に悲しい。遠野が開いた傘が血で真っ赤に染まるシーンは、前回風間から注意された“犯人に背を向けるな”を実践できなかったがゆえに起きてしまったことだ。

その後、風間が繰り広げる犯人との攻防戦はとても見応えがあるものの、目を刺される展開を思うと気が気ではない。

鳥羽暢照(濱田岳)が犯人を目撃するシーンも『教場II』のラストと同じ。ただ今回、犯人役が森山未來だったという新事実が判明する。

倒れる遠野に名前を呼びかける声は、風間史上最大のボリュームだったと思う。「指導官、僕は刑事になれませんか」「お前はすでに刑事だ」。無口な風間からこの言葉が聞けた遠野は幸せ者だ。

エンディングではストレッチャーで運ばれる二人の様子が映っていた。まさか『教場』シリーズ最大の山場だと思われた事件が第6話で描かれるとは。次回、どうなってしまうのだろう。

(文:綿貫大介)

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