梅干しを愛するアルゼンチン女性が、南高梅の知られざる収穫方法に驚き!:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、アルゼンチン女性が初めてニッポンを訪れた際の様子をお届けします。

【動画】「ニッポンに行きたくて行きたくてたまらない」と願う外国人に密着!そこにはたくさんの感動が!

100年続く梅農家で、南高梅の収穫を体験


紹介するのは、アルゼンチンに住む「梅干し」を愛するクララさん。

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お弁当からおにぎりまで、昔からニッポンの食卓に欠かせない漬物の代表「梅干し」。
梅は奈良時代には果物として生で食べられていましたが、平安時代には肌荒れや熱冷ましなど、さまざまな効能がある薬として栽培されるように。その後、保存がきくよう塩漬けの梅干しにして食べるのが、武士や庶民の間で定番になりました。

戦国武将一、健康に気を遣っていたという徳川家康も、自分で育てた梅で梅干しを漬け、亡くなった後も毎年、墓のある静岡県の久能山東照宮に梅干しを奉納させたそう。

そんな梅干しを愛してやまないクララさん。ニッポンにはまだ一度も行ったことがありませんが、キッチンには10年前から毎年漬けている梅干しがズラリと並びます。

梅干しにハマったきっかけは幼少期。母・アドリアーナさんが日系人の友人から譲り受けた梅干しを、食卓でよく出していたところ、その味の虜に。気付けば梅干しについて詳しくなっていたとか。

クララさんの情熱は止まらず、独学で梅干しの作り方を研究し、毎年20キロ以上漬けるまでに。その作り方を見せてもらいます。

いつもは生の梅を使いますが、今の時期は手に入らないため、梅の仲間のスモモで作ります。しっかりと水洗いしたら、実の下処理。アルコールで消毒しながら丁寧にヘタを取り除いていきます。手間がかかりますが、ヘタが残っていると漬け置きする時に腐ってしまうため、重要な作業。

1時間かけて1キロ分のヘタを取り、水気をしっかりと切ったら塩をまぶします。ニッポンのような海水塩が手に入らないため、使うのは岩塩。実の重さに対して、塩は8%。少なすぎると保存がきかず、多いと酸味が強くなりすぎるそうで、試行錯誤して好みの味にたどりついたとか。

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本で読んだ通りの手順で作っているクララさん。ところが、なぜか塩漬けが終わった後に皮が破れていることが多く、果肉が出て、塩や旨味もなくなってしまっているそう。「何回やってもきれいな皮の梅干しにならないので、いつかニッポンの職人さんに聞いてみたいんです」。

3日間塩で漬け込んだらしっかりと水分を抜き、味を凝縮させるために丸3日、天日干し。その後、熟成させるため最低1年寝かせて、ようやく食べられるように。

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「成長を見守る楽しさも梅干し作りの醍醐味なんです」と話すクララさん。いつか日本一の梅の産地、和歌山県で南高梅を使った梅干し作りを学ぶのが夢だそう。和歌山県は、梅の収穫量が58年連続で全国1位。その生産の6割を占めるのが、和歌山原産の南高梅です。大粒で果肉が柔らかく、梅干しにすると極上の食感と味わいに。

しかし、シングルマザーのクララさんはフルタイム勤務が難しく、料理教室などを開いてなんとか生計を立てている状況で、来日は夢のまた夢。それでも、南高梅で有名な和歌山県みなべ町で梅干し作りを学びたいと願っています。

そんなクララさんを、ニッポンにご招待! 2歳の愛娘・バレンティーナちゃんも一緒に、初めてのニッポンにやってきました。

向かったのは、和歌山県白浜町。白浜の海岸から歩いて15分、江戸時代から梅農家として梅干しを作り続けて400年以上の「梅干し専門店 山崎屋」。インターネットで見つけて以来、ニッポンに行ったら必ず訪れたいと夢見ていたお店です。X JAPANのYOSHIKIさんも訪れるそう。

さまざまな梅干しが並ぶ店内に、「梅干しのパラダイスですね」と大興奮!
9代目のご主人・山崎有次さんが、4代将軍・徳川家綱の時代に漬けられた梅干しを見せてくださいました。この梅干しを食べさせていただいたクララさんは、「350年も経っているのに、なんでこんなにみずみずしいのでしょう?」と質問を。

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山崎さんによると、梅干しの外についているコラーゲンのおかげだそう。梅干しは、寝かせるほどコラーゲンが表面に表れ、皮膚のしわやたるみなどの老化にも効果があるといわれています。貴重な体験をさせていただいたクララさんは「ニッポンのスーパースターも求める梅干しが食べられて本当に感謝します」と伝えました。

「山崎屋」のご主人、本当にありがとうございました!続いて、紀伊半島の西南に位置するみなべ町へ。世界に類を見ないジューシーさと大きさで最高級ブランドとなった南高梅は、58年前にみなべ町で生まれた品種。南高梅の発祥の地、みなべ町は全世帯の8割が梅に携わっており、町役場には国内唯一の「うめ課」も。

そんな梅干しの町でクララさんを快く受け入れてくださったのは、100年以上続く梅農家「寺谷農園」。家族経営で南高梅の栽培から加工までを一貫して行うこだわりの梅干しは、高級スーパーや百貨店で販売されています。

事前にクララさんの梅干し作りの映像を観た4代目の寺谷雄二さんは、本格的な作り方に驚いたそう。クララさんが「独学なので、まだまだ全然だと思います。憧れの南高梅を勉強させてもらい、何とかよくしたいんです」と伝えると、翌朝作り方を見せていただけることに。

400年以上の歴史を持つ、みなべ地方の梅栽培。1954年に地元の南部高校の園芸科が、37種の梅から最優良品種を発見。南部高校の功績をたたえ、南高梅と命名されました。他の品種に比べて実はぎっしり。1本から120キロほど収穫できるそう。

寺谷さんの案内で、畑にやってきたクララさん。梅の木の下に敷かれた網には、たくさんの実が落ちています。梅干しに使うのは、極限まで熟し、自然に地面に落ちた実だけ。完熟した梅は香りが良く、皮が薄く仕上がるとか。

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冬の間に無駄な枝を剪定すると、養分が集中し、大きくなった実は自然に落下します。
毎日落ち続ける梅を拾う時に役立つのが、穴あき中華鍋。梅についた水分やゴミも落としてくれる、梅農家の定番アイテムです。6月の最盛期は1カ月の間休まず、四つん這いの姿勢で1日6時間以上収穫。腰や膝を痛める方が多い重労働なのです。

別の畑へ向かうと、網が張られた急斜面が。寺谷さんは梅の木がある上まで登ると、実を拾って投げ始めます。すると、転がり落ちた梅が、自然に下の1カ所に。これが「寄せ網」という仕組みです。「すごい工夫です。こんな収穫方法、初めて知りました」。

江戸時代初期、米が育たない田畑が多く、代わりに斜面に梅を植えて年貢として収めたことから始まった、みなべ町の梅干し作り。近年まで急斜面をハシゴで登り、命懸けで梅を収穫していたそう。

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その後、梅農家が知恵を出し合い、考案したのが寄せ網。毎年収穫前に、幅5メートルの青い網を140個ほど手縫いで繋ぎ合わせ、梅がどこに落ちても安全な斜面の下の1カ所に集まるよう、計算して張っています。

こうして、1日で5つの畑から10トンの南高梅を収穫。完熟梅は翌日には腐ってしまうため、その日のうちに塩漬けします。防腐効果を持つ塩で漬けることで、食感や香りを最高の状態のまま保存。「『旬を閉じ込める』っていうニッポンの文化なんです」と話す寺谷さんに、「実にニッポンらしい知恵ですね」とクララさん。

「寺谷農園」自慢の梅干しを食べさせていただくことに。クララさんは、白干し梅の強烈な酸っぱさと香りを堪能。白干し梅とは、梅農家が一番最初に作る、塩分濃度を高くして長期保存を可能にした昔ながらの梅干し。その後、水で塩分を落とし、ハチミツを加えて甘くしたり、紫蘇で鮮やかな色や風味をつけたりしていくのです。

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続いて、「寺谷農園」イチオシの本かつお梅を。白干し梅に天然の鰹出汁を加え、焙煎した鰹節と紫蘇を絡めています。ご飯に乗せ、梅と鰹出汁の旨味たっぷりのお茶漬けにしていただいたクララさんは「これは反則です。美味しすぎます」と絶賛。

ここからは、収穫した南高梅の塩漬け作業。来日前、なぜか塩漬けが終わった後に皮が破れていることが多いと悩んでいたクララさんですが、その原因と解決方法が明らかに。

塩漬けの前に水で汚れを落とし、梅の大きさを選別する選果機へ。上に穴の空いたローラーが回り、落ちずに手前にくるほど大粒。塩漬けの前に、Lから最高級の4L以上まで4つのサイズに分けます。

ここで、大粒も小粒も一緒に塩漬けしていたというクララさんが「なぜ漬ける前に大きさで選別するのですか?」と質問。寺谷さんによると、大きな梅は皮が柔らかくて潰れやすいので塩を多く入れ、小さい梅はそれほど塩を入れないそう。塩には皮を引き締める効果があり、梅の大きさによって適した塩分量が違うのです。

4センチ以上の大粒は、塩分濃度が低いと10日前後で皮がふやけてしまい、破れる原因に。クララさんは、8%と小粒に合った控えめな塩分濃度で大粒も一緒に塩漬けしていたため、失敗していたのです。

そこで、梅に合った適切な分量を寺谷さんに教えていただきます。大粒は水分も多く、塩が足りないとカビの原因にもなるので、たっぷりと15%。こうして塩漬けした梅を1カ月熟成させてから、旨味を極限まで引き出す次の作業へ。

と、ここで、クララさんが塩を味見。「にがりが入っていますね?」と聞くと、寺谷さんは「にがりご存じ? すごい」とびっくり! にがりとは、海水塩を作る時に出るミネラル成分。これによって果肉はしっとり柔らかくなり、皮が破けにくい梅干しに仕上がるそう。「寺谷農園」では、にがりを多く含む塩を使っているとか。

アルゼンチンでは、塩湖などから採れる岩塩が主流。クララさんは、梅干しを美味しくするニッポンの海水塩に強い興味と憧れが。「ニッポンの梅干し作りに欠かせない天然の海水塩がどのように作られるのか、見てみたいんです」。

そこで和歌山を離れ、沖縄県の浜比嘉島へ。実は沖縄は、愛媛・兵庫と並ぶ塩の三大生産地。今回クララさんを受け入れてくださるのは、国内に数軒しかないという伝統製法を行う「高江洲製塩所」です。塩職人の高江洲勝さんに、伝統の塩作りを見せていただきます。

向かったのは、工房に直結している塩作り専用のビーチ。海水を採り、海水に含まれる塩分を測れるボーメ計を浮かすと、4%の数値が。この海水を煮詰めて塩にしますが、その前に大切な工程があるそう。

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汚れの少ない満潮時にポンプで海水を汲み上げ、濾過したら流下式塩田の装置へ。約50年前に工場での大量生産が主流となり、ほとんど行われなくなった製法ですが、伝統製法を守りたいと、13年前に高江洲さんが手作り。高江洲さんは「自然の力を使って海水を濃くしないと、海水の中のミネラルも濃縮されないんですよね」と語ります。

緩い傾斜がついた木枠に上から海水を流すと、竹枝をつたい、流れ落ちる間に風の力で水分が蒸発。下に落ちた海水は、傾斜のついた地盤を流れる間に太陽熱で水分が蒸発します。これを3日ほどかけ72回繰り返すことで、4%だった塩分濃度が16%に濃縮。こうして煮詰める前に、塩分濃度が高い「かん水」を作るのです。

ここからが大変な手仕事。800リットル入る平釜で、かん水からさらに水分を蒸発させて塩を精製していくのですが、浮いている灰汁をよそって取らなくてはなりません。灰汁がつくと雑味になるだけではなく、真っ白な塩にならないため、沸騰させては灰汁を取る作業を3度繰り返します。

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100度近い蒸気を直に浴びながら行う過酷な作業を、クララさんも汗だくになってお手伝い。こうして塩分濃度が26%になるまで炊き上げると、ようやく塩の結晶が。まだ灰汁が残っているので、塩にくっつかないように寄せていきます。

500キロの海水から取れる塩の量は100キロほど。そして副産物のにがりを、味と栄養素がいい塩梅になるよう、2日かけて適度に抜いていけば、100%の海水塩「浜比嘉塩」が完成。味見させていただいたクララさんは「まろやかでとても美味しいです」と絶賛!
最後に「素晴らしい塩作りを学ばせていただき感動しました!」と伝えました。

高江洲さん、本当にありがとうございました!

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