「遺品整理」で処分費用を抑えるには?業者に依頼する際の注意点と高額見積りになる理由

公開: 更新: テレ東プラス

離れた場所に住む家族が、遺品整理や終活での生前整理に困るケースが増えている。持ち主を失った大量の生活用品を廃棄する場合、業者に依頼すると高額な処分費用が発生。特に賃貸物件での遺品整理では、家を明け渡すまでの期間が限られるなど、時間的な制約で苦労することもあるという。

「テレ東プラス」では、遺品整理や生前整理を手掛けるトカノ ハート&ハートの代表で、遺品整理アドバイザーとしても活躍する松井麻律さんを取材。家族や遺族が揉めがちなケースや、荷物を整理する際に処分費用をできるだけ抑える方法など、話を聞いた。
*前編はこちら

ihin_20230125_01.jpg▲「トカノ ハート&ハート」代表の松井さん

松井さんが、遺品整理や生前整理を始めた理由

――松井さんはなぜ遺品整理や生前整理の仕事を始めたのでしょう?

「直接的なきっかけの一つは、祖母と祖父が相次いで亡くなり、その家を明け渡す際に遺品整理をしたことです。整理をするための期間が短く、思い出の品を残すために考える時間もない中、ほとんど全てを処分しなければいけませんでした。祖母が亡くなって気落ちした祖父は大量に物を溜め込んでいて、それらは汚れた状態だったので、処分せざるを得なかったんです。

生きているうちに一緒に片付けていれば、残すべきものや、それにまつわる思い出話などを聞くこともできたはずで、すごく後悔しました。この仕事をしていて感じるのは、家族や周囲の人と疎遠になったり、うつを患っていたりして孤立しがちな人は、家の中に物が溜まりやすい傾向があることです。セルフネグレクトというか自分のことをおろそかにしてしまい、暮らしやすい家にする気力が保てないのではないかと思います」

――このお仕事を始める直前は、女性向けフィットネスジムのインストラクターをしていたそうですね。

「中高年の主婦層向けのジムで、体を鍛えるというよりも健康のために運動をすることが目的。体調や日常生活で不自由していることを聞き、その人に合ったメニューを考えて指導するのが重要で、話を聞くのも仕事のうちでした。

インストラクターとしてのカウンセリングでご家庭や介護などのお悩みを聞くうちに、運動以外の面でも『助けになりたい。人の役に立ちたい』と思うようになり、祖父母の家で遺品を整理したことが自分の中で繋がって、今の仕事を始めました」

家族で意見が割れ、本人の意向が置き去りになることも

――遺品整理や生前整理では、処分するかしないかで、ご家族が揉めることもあるかと思います。

「遺品整理の場合は保管場所がないため、現金などを除いて全て処分するご依頼が多いです。ただ、生前整理でご本人だけでなく、ご家族の判断も必要となる場合は、揉めることがありますね。ご家族であっても価値観が違うので。

例えば兄と妹で考えが方に相違があったケース。同じ用途のものが二つあり、一つだけ処分する際、兄は大きくても高機能で価格が高いものを残すと言い、妹は母親が使いやすく、いずれ施設に入所する場合でも持って行きやすいサイズのものを残したほうがいいと主張して、ケンカになりました。どちらも良かれと思っているため、母親はどちらかの肩を持つわけにもいかず、ご自身の希望を言えないまま置き去りの状態になってしまって...」

ihin_20230125_02.jpgPIXTA

――そういう場合、松井さんの立場としては、結論が出るまで、待つしかないのでしょうか?

「基本的には、ご本人やご家族が結論を出すまで、お待ちします。でも、このケースの場合は、実際に使うご本人の意見を聞く気配がなかったので、『お母様はどちらを残したいですか?』と話しかけて介入しました」

――第三者が介入した方が話をまとめやすい場合もあるでしょうし、このケースでは、妹さんの意見の方が理にかなっている印象があります。

「状況によりけりですね。この時の妹さんのように、その先のことを考えるのは大切です。施設に入る場合、現在のお住まいよりもスペースが狭くなりますし、持ち込める身の回りの品が限られることもあると思います。親御さんとしては、子どもが良かれと思って言ってくれることを尊重したいと思いますが、ご自身の希望や暮らしやすさを優先してほしいですね。

自分をおろそかにしてしまうと、せっかく残したものを使わなくなる。一度、物を整理したはずなのに、逆に無駄なものを増やしてしまうこともあります。残りの人生を楽しく暮らすため...そういう基準で考えていただきたいです」