「遺品整理」で処分費用を抑えるには?業者に依頼する際の注意点と高額見積りになる理由

公開: 更新: テレ東プラス

処分費用が高額になってしまう理由

――松井さんの会社では価格を抑えた対応をされていますが、一般的に遺品整理業者に依頼すると、高額になるケースがあると聞きます。

「遺品整理など一括で作業する場合、買取り品などで相殺できるものもありますが、一番コストがかかるのは処分費用です。一般的な遺品整理業者の場合は、まず全ての荷物を引き取って倉庫に運び、仕分け作業をして処分に出します。このやり方だと、短い時間で荷物を運び出し、物件の明け渡しが可能になりますが、荷物の量だけ処分費用が必要で、仕分け用の一時保管の倉庫代もかかるため、どうしても高額になってしまいます。

当社は現地で仕分け作業を行うので、一時保管などの倉庫費用がかかりません。荷物処分の面では、買取り対象外の品物でも、まだ使えるものはコストがかかる処分対象とせず、無料で引き取ります。無料で引き取った品は、福祉関連施設で行うイベントに参加し、寄付しているので、他の事業者さんと比べて処分の量を減らせるため、費用を抑えることができるのです」

ihin_20230125_03.jpg▲処分費用を抑えるため使えるものは無料で引き取り、寄付の他、炊き出しボランティアに充てる費用のため、フリマ販売も行っている 写真提供:松井麻律

――自力でやる場合でも、大きな家具などは処分費用がかかりますよね?

「処分するために処理業者に出すと、それなりの金額がかかります。ただ、私たちが無料引き取りするような、まだ使える品物の場合は、地元の人同士が無料でやり取りする情報交換サイトやフリマサイトに出品してみる方法もあります。

取引の手間や時間はかかりますが、費用を抑えることは可能です。また、介護ベッドなど、専門の買取り業者が存在する場合もあるので、そういった事業者を探してみることもお勧めします」

――買取り品の話が出ましたが、本当は金銭的な価値があるのに処分してしまう、見落としがちなものはあるのでしょうか?

「意外なものを挙げるとしたら、入れ歯に金を使っているケース。いわゆる金歯ですね。生前は本人も入れ歯として使用しているので金という意識がないですし、ご遺族も気づかずに処分してしまいます。今の相場を考えると歯に使われている量でも、一定の金額になるはずです。
現在ほど銅の相場が高くない時期でしたが、過去にブロンズ像を処分したことがあります。今なら買取りでそれなりの価格がついたのでは…と思いますね」

生前整理なら思い出の品の価値が伝わる

――専門の業者なら高く売れるもの、例えばコレクションなどの場合、家族や整理業者では価値がわからず、処分されてしまうケースがありそうです。

「価値のあるものであれば、査定に出して業者の連絡先や価格がわかるようにしておくといいかもしれません。生前整理であれば、ご自身でフリマサイトに出品して、お金に換えることも可能ですし、業者の買取り価格より高額になる場合も多いのではないでしょうか。

貴金属でも古いデザインだと、買取り価格が安く見積もられることがあります。安く売られてしまうのであれば、ご遺族が引き取って新たなデザインにリメイクし、思い出の品として身につける方がいいと感じます。生きているうちに一緒に確認したら、『これはあなたが小さい頃、“大きくなったらちょうだいね”と言っていたのよ』という話が聞けるかもしれません。
一緒に整理できたら、それぞれの品物の価値を確認できますし、仮に資産的な価値がないものでも、たくさんの思い出を共有できます。私自身それができなかったことを後悔しているので、生前整理をお勧めしているところがありますね」

ihin_20230125_04.jpg▲大量の荷物の中から、残すべき思い出の品や資産価値のあるものを選り分けるのは困難なことも 写真提供:松井麻律

――終活を考えて自ら生前整理をする人はいいと思いますが、家族が「生前整理をして」と口にするのは、なかなか難しいところもありますよね。

「生前整理という言葉を出すのは、ナーバスな問題がありますよね。親御さんの家が物でいっぱいになっている場合、闇雲に処分しようとするのではなく、『一緒に片付けよう』という形にする。もしも実家の自分の部屋が物置状態になっていたとしたら、『あの部屋に保管したい物があるんだよね』と持ち掛けてみてください。

『自分のものを処分される』と感じさせる言い方ではなく、誰かと一緒に作業する、誰かのためにスペースを作るといった方向。ましてや子どもの頼みなら、『じゃあやろう』という気持ちになりやすいはずです。片付けるのは物を処分するためではなく、残された時間を楽しく快適に過ごしてもらうためですから」

【松井麻律 プロフィール】
1984年栃木県栃木市出身。遺品整理や生前整理、引っ越し事業などを行う「株式会社トカノ ハート&ハート」代表、遺品整理アドバイザー。映像制作やフィットネジムのスインストラクターを経て、遺品整理や生前整理業を起業。処分品を無料で引き取り、生活困窮者へ寄付するなどのボランティア活動も行っている。

(取材・撮影・文/鍬田美穂)