船越英一郎、山村紅葉、西村まさ彦、高島礼子、名取裕子、内藤剛志と、サスペンスドラマ界のレジェンドたちが夢の競演を果たす、超豪華な刑事ドラマが誕生。
秋元康が企画・原作を手掛けるドラマプレミア23「警視庁考察一課」(毎週月曜夜11時6分。※11月14日(月)は夜11時16分)を放送中!
現場の状況から妄想を膨らませ、事件のあらましを勝手に考察するのが彼らの仕事。被害者は誰に、なぜ殺されたのか? そして彼らはどんな考察を話すのか!?
個性豊かなクセの強いベテラン刑事たちの考察が時にぶつかり、時に二転三転していく...。果たして最後に見えてくる真実とは...?
レジェンドたちが出演した"名作ドラマのパロディ要素"も見どころのひとつだ。
「テレ東プラス」では、11月7日(月)に放送された第4話「セレブ華道家殺人事件!」の内容をプレイバックする。
大東京警察署・考察一課...それは、現場へ行かずに捜査する考察専門部署。ある夜、考察一課課長・船越慶一郎(船越英一郎)に、考察官の西村まさ雄(西村まさ彦)が退職届を提出する。驚いた顔で西村を見上げる船越。
「見れば分かるだろう。辞めるってことだ。潮時かなと思ってな」
「ここにいるのが不満なのか?」
「不満じゃない奴がいるのか? みんなそれぞれ一線でバリバリやってきたんだ。それが突然、ロートルは退けってよ。こんな仕打ちあるか?」
同じく悔しい思いを抱いている船越は、黙って聞いている。
「どうせもう、元いた部署には戻れない。だったら辞めようかなってな。それに僕はサイバー捜査専門だ。考察の役には立たない」
「......」
「窓際で干上がって枯れ果てるのはゴメンだね、僕は」
船越は退職届を重い気分で見つめる。
◆
翌朝。考察一課では、考察官の山村楓(山村紅葉) 、名取悠(名取裕子)と一緒に、新人考察官の藤井龍(藤井流星)がテレビでワイドショーを見ている。
「もうさ、テレビなんてずっとワイドショーでいいのよ。夜は1時間だけドラマやってさ」
「ときどき通販挟んで」
「そうそう、時々グルコサミン。テレビなんてそれでいいのよ。若い子はどうせテレビなんて観ないんだから」
2人の会話を聞いていた考察一課の管理官・徳永りえ(徳永えり)は苦笑い。すると山村が「もうこんな時間! 行かなきゃ〜」と立ち上がる。
「どこ行くんですか?」
「名取さんに知り合いのプロデューサー紹介してもらって、企画書出すの♡」
刑事ドラマの監修をした縁で、検事のドラマに出演することになった名取と、捜査の合間に推理小説を書いている山村。藤井が「小説のドラマ化ですか?」と聞くと、なんと山村が見せたのは『ニッポンの心!歌謡曲ベスト300ラーメンベスト100』という企画書。
「いや、歌とラーメンって...」
「もう警察全然関係ないじゃないですか...情報多いし」
「視聴率が取れればなんでもいいのよ。数字が取れれば好きなことができる、それがテレビよ〜。じゃ、行ってきまーす!」
山村はそそくさと出て行った。
ワイドショーは、新進気鋭の華道家・東柊一(齋藤雪弥)が殺害されたというショッキングな話題へ。事件後、実の母で東流の創始者・東百合(ひがし由貴)が出頭し、犯行を自供しているという。
殺された柊一は、イケメン家元としてメディアで注目されている東伊吹(近藤雄介)の兄。伊吹はメディアの突撃取材を受け、「私自身もショックです」とコメントする。
「この事件、発表されてないけど、遺体の口に花びらが詰め込まれてたって聞いた」
ニュースを見ながらそうつぶやく名取に、驚く一同。
◆
一方、捜査一課では、百合の取り調べが行われていた。百合は憔悴しきった顔で、「東流を飛び出した柊一が、東流を批判するのが許せませんでした。東流を守るためとはいえ、息子に手をかけたことは本当に後悔しています...」
泣き崩れる百合。壁にもたれて聞いていた捜査一課長の柳沢慎三(柳沢慎吾)は、どこか腑に落ちない表情で取調室を出て行く。
◆
考察一課に船越がやって来て、西村が退職届を提出したことを皆に知らせる。
「西村さんが辞める!?」
「ああ。辞めて蕎麦屋になると言って」
「蕎麦屋? なんでですか?」
船越は西村が蕎麦屋になると言い出した時のことを回想する。
〜〜〜
「蕎麦ってさ、なんかロマンがあるだろ?」と熱弁を振るう西村。
「ノスタルジックさも掻き立ててくれる。地方に行けば、どこも名物は蕎麦だってアピールしてくるだろ? それは、『すみません...名物なんて言われても、蕎麦ぐらいしかありません』ってことだ」
「そうじゃないんじゃないか?」
「それがいいんだよ。それでいいんだ。そこには、蕎麦に賭ける意気込みがある。『蕎麦しかないですけど、蕎麦だけは旨いです』っていう自信というか、強がりっていうか。とにかく、蕎麦で夢を切り開こうっていうロマンがさ、たまんないんだよ...僕は」
〜〜〜
経緯を聞くも、一同理解不能といった様子。
「で、西村さんは?」
「早速、仕事サボって蕎麦打ち教室に出かけた」
「西村さん、どうして辞めたいって言ってるの?」
「それがさ...どうせ元の部署には戻れないと思ってるみたいでさ。だったら、窓際で干からびて朽ち果てるのは嫌だって」
高島が「西村さん、本当は刑事辞めたくないんじゃないかな。だって、元の部署に戻れないなら辞めるってことは、元の部署に戻れるなら辞めないってことでしょ?」と言うと、船越も「そういうことだ」と頷く。
そこに、柳沢が真剣な表情で入って来た。「今、忙しいんで、後にしてくれます?」と追い返そうとする藤井に、「時間がねぇんだよ!」と柳沢。
「あと3時間で真犯人を見つけてくれよ」
「どんな事件なんだ?」
柳沢は、昨日起きた華道家殺人事件について考察してほしいという。被害者の母・百合が自首しているが、取り調べを見ていた柳沢は、どうしても百合がやったとは思えない。その理由を尋ねられると、柳沢はキメ顔で「刑事の勘だ」と言い、一同ポカンとする。
「勘と言われてもね、根拠もなしに」
「一番勘鈍そうですけどね」
白けたムードでひそひそ話をする藤井と徳永に、柳沢は「おいおい、そこのかまいたち、いや、お前たち!」とツッコミを入れる。一方の船越は「じゃあ柳沢の勘を信じて探してみるしかねぇな、ホンボシを」と生き生きとしている。
「いやいや、たった3時間しかないんですよ? ムリですって」
「藤井、俺たちは頭だけで捜査するんだ。3時間もありゃ十分だ!」
徳永がホワイトボードに関係者や事件現場で撮られた写真を貼る。名取は「ボサッとしてないで考察するわよ! 夕方には次の収録に行かなきゃいけないんだから。私が行かないと坂上忍が言いたい放題よ」と、すぐに考察を始める。
しかし、「無実の東百合が送検されちまったら、警察の威信に関わる。頼むぞ!」と言う柳沢に、「私は断る」とキッパリ言う高島。
「私たちがホンボシを挙げて捜査をひっくり返したら、上層部から反感を買うかもしれないでしょ」
「何言ってるの? 私たちをここへ追い出した連中よ、怒らせても構わないじゃない」
「怒らせたら元の部署に戻る道が遠のくかもしれないじゃない」
高島の言葉に納得がいかない名取は、立ち上がって反論する。
「それが何よ。あなた、自分の欲のために事件の真相を闇に葬ってもいいの?」
「...私は協力できない。ごめんなさい」
高島はそう言うと部屋を出ていってしまった。
「...高島さん、西村さんのために?」
「おそらくな」
「でもおかしいわよ、刑事として間違ってる」
「そりゃそうだ。でも、いずれ気付くよ。あいつのことだから」
百合の送検まで残り2時間35分。残った面々で考察に入る。
事件現場は東家のリビング。室内には争った形跡があり、遺体の口の中には花びらが詰め込まれていた。事件の概要を聞くと、山村は興奮した様子で「ミステリー感満載ね。いいわ〜」と目を輝かせる。
「一見、猟奇的な犯行に見えるけど、何かトラブルがあったのか?」
華道の東流は、母親の百合が創始者で初代家元。革新的な活花を提唱し、それが若い女性にうけ、全国に教室を開いた。
そして2年前、百合は家元を退くと宣言。2代目は長男の柊一か、百合の弟子で幹部の飯田喜平(丈)が継ぐと思われていたが、百合が後継者に選んだのは、次男の伊吹だった。
「セレブ一家に巻き起こった愛憎劇。小説に出てきそうなネタね!」
「でもさ、跡目を継げるってアテにしていた柊一と飯田は、心中穏やかじゃなかっただろうな」
「長男の柊一さんにしてみれば、弟に抜かれたってことですもん。それで柊一さんは東流を脱会して、自分で新しい流派を作ったの」
「アズマ・アートフラワー・ラボですよね。私、入会しようと思ってたんです」徳永が目を輝かせる。
「生け花よりイケメン目当てにでしょ?」
「違いますよ! 東柊一さんが提唱してるのは、華道と陶芸を総合的に芸術として表現するって新しい挑戦なんです。活花に花器は付き物ですからね」
被害者の柊一は、SNSで東流と新家元の伊吹を『今の東流はカネ儲け主義。華道への冒涜』『新家元は花ではなくカネを活けている』などと痛烈に批判するようになったという。その投稿には、サルビアの写真も添付されていた。
「弟相手に、随分辛辣ですね」
「伊吹が家元になった途端、やり方や経営方針を変えたりしたのか?」
「ビジネス主義と言われてもおかしくない方針転換をしたようだ」
「とは言え、身内に悪口を言われたら気分悪いわよね」
柊一のSNSを調べていた徳永が、殺害される直前にされた投稿を発見する。「いい知らせがあった」というつぶやきに、サルビアの写真が添えられている。
柊一の遺体からはトリカブトが検出され、毒殺されたとみられていた。胃の内容物から、犯人はワインに毒を入れて飲ませたようだ。現場に残された2つのワイングラスと栓の開いたワインボトルからは、百合以外の指紋は検出されず、毒も検出されていない。
「ちょっと待て。その2つのグラスから毒が検出されなかったってことは、実際に毒を入れて犯行に使われたグラスがあるはずだよな?」
「それがまだ見つかってないんだよ」
遺体を最初に見つけたのは、ちょうど家を訪れた飯田と百合。飯田の供述によると、リビングのドアに鍵が掛かっていることを不思議に思った飯田が、百合に鍵を開けてもらって中に入ったところ、柊一の遺体を発見したという。
山村は、またも目を輝かせ「じゃ、部屋は密室だったのね?」と言うが、柳沢が「いや、庭側の窓が開いていた」と説明し、「な〜んだ」とがっかりする。
弟・伊吹のアリバイはなく、自分の車で一人自宅に向かっていたと供述している。
考察一課随一の勘の良さを誇る名取が、「私の勘が、百合さんは犯人じゃないと言ってる」と言うと、「じゃあ間違いないな」と船越。
船越は殺害現場の写真を見ながら、荒らされた現場の状況に違和感があると言う。すると山村も船越の考察に気づいたようで、「再現すれば分かるわよ。ちょっと2人、揉めてみて」と柳沢と徳永に指示を出す。戸惑いながら揉める演技を始める2人。
柳沢は百合になりきり、「あんたに全財産なんかあげないわよ! 私は小さい頃から伊吹をかわいがってた」と言う。すると柊一になりきった徳永が、激高した演技で柳沢を突き飛ばす。
「そうやって腹が立って感情的になってきて、物を落とす。で、殺す!」
山村が演技指導を入れると、柳沢はテーブルの上にある物を床に投げ落とし、タンブラーを振り上げて撲殺しようとする。しかし山村から「違うでしょ! 死因は毒殺。やり直し!」と指導を入れられ、柳沢が床に物を落とすところからやり直す。
「毒殺!」
山村の合図で、柳沢は急に暴れるのをやめ、紙コップにワインを入れるジェスチャーをして徳永に差し出す。
「さあ、お飲み」
「......」
「あり得ないでしょ? 部屋を荒らしたのは、警察を惑わそうとした下手な小細工」
「なるほどな」
「そもそも百合が犯人で、自供する覚悟でいるんだったら、最初からこんな小細工必要ないんだからな。やはり百合は犯人じゃない...ホンボシは他にいる。炙り出すぞ」
残り時間は2時間半を切り、本格的に考察を始める一同。徳永が考察の要点をホワイトボードに書く。
「百合が犯人でないとするなら、どうして自首したのか。ここからだな」
「誰かを庇ってるんですかね? 庇うとしたら、次男の伊吹さんしかいません」
「確かに、伊吹さんには動機はあるわね。お兄さんとはいえ、SNSで金の亡者呼ばわりされたら腹が立つもの」
「じゃあ、真犯人は伊吹で決まりだな」
「待て、慌てるな。ここで終わっちゃったら、尺が足りないだろ」
「『孤独のグルメ』で埋めればいいじゃない?」
山村の提案に、船越は渋い顔で「こういうのどう?『孤独な刑事』...面白そうじゃないか?この企画」と言う。
「グルメどこいっちゃったのよ」
「アド街ック刑事天国」
「家、ついて行って充電させてもらえませんか?」
「刑事は何しに日本へ? 刑事の水抜いて......」
盛り上がる様子を柳沢がじとっとした目で見ていのに気づき、考察に戻る一同。口に詰められた花びらについて、「私の父の小説に、口に花を入れられた遺体というのがあったわ! 名作よ〜。『活けられた死体』」と山村。
「その小説の犯人はどうして口に花を?」
「死体の口が剣山に見えたんですって。秀逸よねぇ」
感心する山村に、白けた視線を送る一同。
「...口封じのメッセージか何かですかね? 被害者に"口をつぐめ"みたいな」
「その場合、メッセージの対象は、被害者以外の人物ってことになるぞ。『こうなりたくなければ、口をつぐめ』っていうな。ところが、家元の伊吹や東流を批判していたのは、兄の柊一だけだ。つまり、メッセージじゃないってことじゃないか?」
「じゃあ一体なんなんだよ? 口に詰められた花びらの意味は...」
「誰かを犯人に仕立てるための罠...そう考えるのが妥当だ」