竹農園を営むアメリカ男性が、京都の伝統的なたけのこ栽培に感動!意外な竹の活用法も:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、「ニッポンにご招待したら人生変わっちゃった! スペシャル」をお送りします。

京都で300年続くたけのこ農家で栽培の極意を学ぶ

紹介するのは、アメリカ・ノースカロライナ州に住む、「たけのこ」をこよなく愛するデイヴィットさん。

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「かぐや姫」をはじめ、古くから日本人と深い関わりを持つ「竹」。「竹馬の友」や「破竹の勢い」など慣用句も多く、階級を表す「松・竹・梅」の竹は、"丈夫さの象徴"とされてきました。尺八のような楽器や茶道の道具まで、日本人の生活とは切っても切れない存在です。

アジアを中心に分布する竹の種類は1200以上。うち600種ほどがニッポンに生育しています。デイヴィットさんは、自らの農園でニッポンと同じ竹を50種類、約600本栽培。ノースカロライナ州の気候は温暖で湿度が高く、明確な四季があるため、ニッポンの竹がよく育つそう。

そんな竹を、外壁用や観葉植物として販売しているデイヴィットさん。新たに挑戦しようとしているのが「たけのこ」です。

たけのこは日本料理における定番の食材。旬は3~5月下旬までとされています。ちなみに、竹にはたくさんの種類があるものの、味が良いものはほんのわずか。中でも、日本人が最もよく口にするのが「孟宗竹」。江戸時代に伝わり、その甘みと歯ごたえから一気に全国へと広まりました。

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デイヴィットさんはたけのこ好きが高じ、竹林で自生しているたけのこを自家製ピクルスにして販売するまでに。ただ、アメリカではたけのこを食べる習慣がなく、あまり売れていないそう。

一度もニッポンに行ったことがないデイヴィットさん。元々はウェブデザイナーとして働き、2005年にニコルさんと結婚、2人の子供に恵まれました。しかし、リーマンショックの影響で失業。転職にあたり、自然に携わる仕事を探す中でニッポンの竹に出会い、ビジネスを始めました。ところが、最初の5年間はまったく売れず、生活できるようになったのは2年ほど前だとか。

「私は竹が大好きです。絶対にこの仕事で家族を幸せにしたいです」と意気込むデイヴィットさんをニッポンにご招待! 5年前、念願の初来日を果たしました。

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向かったのは、春爛漫の京都・嵐山の竹林。約400mにわたって続く「竹林の道」は、平安時代から貴族の別荘地として知られ、1000年を経た今も守り続けられています。デイヴィットさんは、初めて見るニッポンの竹林に「本当に美しい! もう泣きそうです」と感動。

竹林に植えられているのは、古くから日本列島に自生している真竹。頑丈で、籠やうちわなど竹細工の素材としても重宝され、日本人の生活に欠かせない存在です。トーマス・エジソンが発明した白熱電球のフィラメントという発光部分にも使用され、京都の真竹を使ったことで耐久時間が45時間から1200時間に向上したそう。

京都のラーメン屋さんでメンマも味わいました。原料となるのは、ニッポンでは5月に収穫する麻竹。麻竹のたけのこを約1ヵ月以上自然発酵させて作られるメンマは、納豆やヨーグルトと同じ発酵食品なのです。近年では孟宗竹を使った日本産メンマもブームになっています。

京都には「京たけのこ」という食材も。白く美しい姿は「白子たけのこ」とも呼ばれ、その希少さから幻とも言われる最高級品。値段は一般的なものと比べ、倍以上! たけのこ本来の甘みとほのかな香り、柔らかな食感が特徴でえぐみが少なく、料亭でも重宝される春の旬野菜です。

そんな京たけのこを収穫できるのは、4月のわずか2週間。1年で最も忙しい時期にもかかわらず、「山田農園」の山田作登司さん一家が快く受け入れてくださいました。

「山田農園」では、300年以上前から代々たけのこを栽培。伝統的な栽培方法にこだわり、忙しい時期は家族総出で毎朝5時からたけのこを収穫しています。採りたてのたけのこは直売所で販売。ちなみに「山田農園」のたけのこは、1本300gで3000円ほど。

早速、畑を見せていただくことに。竹は地下茎で1つにつながっており、親竹から栄養が送られることで、地下茎から新しい芽、すなわちたけのこが生えてきます。8年経つと、たけのこが生えにくくなるため伐採。このため、それぞれの竹にたけのこが出てきた年が書いてあるのです。

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京たけのこが、他と比べて決定的に異なるのは土。秋になると、畑一面に乾燥させた稲藁を敷き、その上にミネラルたっぷりの赤土をのせます。これを毎年繰り返すことで土壌が柔らかくなり、たけのこにストレスがかからず、柔らかく育つそう。

ここでいよいよ念願だったたけのこ掘りを体験! 80年近くたけのこ掘りをしている山田長作さんに指導していただきます。たけのこ掘りに使うのは、ホリとよばれる刃の長い鍬(くわ)。まずは周囲の土をよけ、長い刃を使って地下茎とたけのこを切断。テコの原理を使い、一気に掘り起こします。

一見何も見当たらない地面から、立派なたけのこを掘り出した長作さん。実は、地割れを見つけて掘っていました。「土の中に入っている時に掘り起こすのが京都のたけのこなんです」。たけのこは日の光に当たると固くなり、えぐみが増すと言います。

デイヴィットさんもたけのこを探しますが、なかなか見つかりません。地割れを見つけるのにも長年の経験が必要なのです。初めてホリを使って掘ったたけのこを、生で食べさせていただくと......「美味しいです!」「こんなに甘さを感じるたけのこは初めてです」と絶賛。

全てのたけのこに栄養が行き渡るよう、親竹の間隔を傘一つ分空け、日の当たり具合まで調整している「山田農園」。丹精込めて育てられた京たけのこは、すぐにあく抜きした方がおいしく、「たけのこは掘り始めたらお湯を沸かしておけ」と言われるほど。米ぬかと一緒に茹でると、えぐみを取るだけでなく甘さも引き出してくれます。

その夜は、山田さんが夕飯を振る舞ってくださいました。食卓には、最高級の京たけのこをふんだんに使った料理がずらり。山椒と白味噌で和えた木の芽和えや田楽、刺身、京都では定番のたけのこのすき焼きも堪能。デイヴィットさんはインターネットでアメリカの家族も紹介し、楽しいひとときを過ごしました。

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翌朝5時、収穫開始。デイヴィットさんもたけのこ掘りをお手伝いします。採ったたけのこは見た目を整え、サイズ別に仕分け。この日は全部で140kgになりました。多い時は朝だけで300kgほどになるそう。雨にもかかわらず、たけのこが直売所に並ぶと、次々とお客さんがやってきました。

直売所が一段落すると、再び竹林へ。山田さんによると、最後に大事な仕事があるとか。それは、たけのこを収穫した穴の中に、アブラナから油を絞った「油粕」を入れる作業。今年も無事に収穫できた感謝と、来年もたけのこが育つよう願いを込めて肥料を与えるこの作業を、「お礼肥(ごえ)」と言います。「とても気分が良いです! 竹にこんな恩返しの仕方があったんですね」とデイヴィットさん。

続いて向かったのは、京都の料亭「筍亭」。今回は、15品全てに旬のたけのこを使った、春だけの特別コースをいただきます。次々に運ばれてくるたけのこ料理に、「王様になった気分です」と大満足!

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竹筒の鍋でいただくのは、湯豆腐。竹の切り口から出るしずくは竹瀝(ちくれき)と言い、昔から喘息や肺炎に効果があると言い伝えられてきました。そこにお酒を入れて、竹の香りを楽しむ粋な飲み方も。手に塗ると天然の化粧水にもなるそうで、「竹の魅力は底が知れませんね」と感心しきり。

そして、山田さん一家との別れの時。山田さんから、「2日間、朝早くから色々な作業をありがとうございました」と竹とんぼのプレゼントをいただきました。「山田農園」のたけのこと佃煮も!

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デイヴィットさんは、日本語で一生懸命考えた手紙を読み上げます。「山田さんは、忙しい時期に竹について私に教えてくれました。今では家族みたいです。一生心に残る思い出です。ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えました。

あれから5年。デイヴィットさんからのビデオレターを山田さんの元へ届けます。この日は「山田農園」のご家族12名が大集合!

帰国後、デイヴィットさんはますます竹を使ったビジネスに力を入れ、農園の面積を3倍に拡大。山田さんの話を参考に、竹がよく育つよう、フカフカの土を敷き詰めています。扱う竹も、以前は50種類ほどでしたが、現在は100種類にまで増加。ニッポンの竹垣は、高いデザイン性だけでなくプライバシーも守れると愛好家が増えているとか。

アメリカでは珍しい天然竹にこだわり、この5年でお客さんが急増! 今やアメリカ全土に常連さんがいる注目の農園に。ニッポンに行く前と比べて売り上げも3倍以上に増え、仕事で使うトラックも購入。さらに、枝を自動で刈る重機に1000万円を投資するなど、今後も事業を拡大する予定だそう。

「以前の撮影の時は、生活は本当に大変でしたが、ニッポンに招待してもらったことで、家族も健康的で幸せに暮らしています」。山田さんは「5年でそれだけ成長されて嬉しいですよ!」と笑顔で応えます。

竹ビジネスで成功し、新たに挑戦したいことができたと話すデイヴィットさん。今年から孟宗竹を植え始めました。たけのこも生えてきましたが、残念ながら小さいため商品にはなりません。「山田農園」のように藁を重ねることはできないため、土の上に米の殻をまいて竹の成長を促しています。すると、どうしたら早くタケノコが育つのか、「山田農園」の皆さんが緊急会議を始めますが......結論は「頑張ってやってもらうしかない!」とのこと。

今はたけのこを育てるため、東京ドーム1個分の専用農地を探しているそう。「来年には農園を確保し、必ずたけのこ栽培を開始します!」と意気込みます。

「皆さんと過ごした時間がとても懐かしく感じます。たくさんのことを教わった中で常に心にとどめているのが、お礼肥です。収穫を終えた後、感謝の気持ちをこめて行うあの作業には、とても感銘を受けました。今も仕事をするときは、竹に対し、感謝の気持ちを忘れずに接しています」

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山田さんは「また日本に来られるのをお待ちしています!」と呼びかけ、皆さんも「頑張ってください!」とエールを送りました。

デイヴィットさんをニッポンにご招待したら、竹ビジネスを成功させ、たけのこ栽培の夢に向かって走りだしていました!