コロナ禍で急増、20代未経験の若者が介護職を選ぶ理由...浮かび上がる現場のリアル

公開: 更新: テレ東プラス

コロナ禍で介護職への転職を希望する人が増えているという。無料で資格取得の支援を行うプログラムも存在し、私の10年来の友人(50代)も、コロナ禍になって20年以上勤めていた会社を辞め、介護福祉士を目指して学校に通い始めた。
「クラスに意外と若い子がいてビックリした」
それが彼女の第一声だった。20~30代の生徒が複数名おり、話していくうち、みな自然と介護職を選んでいることがわかったという。
「おばあちゃんの介護を通して、自分も役に立ちたいと思うようになった」など、実体験がきっかけとなることもあるようだが、そうでない若者たちは、なぜ今、介護の道を選ぶのか...。

今回の「テレ東プラス 人生劇場」は、障がい者共同生活援助事業所「グループホーム アゼリア」で働く20代後半の柴田さんを取材。柴田さんはこの施設で、数年にわたり入居者の自立支援を行っている。

入居者には車いすの方が多く、柴田さんが声をかけると、皆さん晴れやかな笑顔になるのが印象的だ。その関係性は介護者の域を超え、どこか友達のようにも見てとれる。好青年の柴田さんだからこそなせる業だが、これこそが若さの特権なのかもしれない。

そんな柴田さんに、介護福祉士を目指した経緯から実際に直面した様々な壁、やりがいに至るまで...介護現場でのリアルな話を聞いた。

kaigo_20220426_01.jpg▲車いすを片付ける柴田さん

体を動かすのが好きなので、人の役に立てるこの仕事は自分にすごく合っていると思った

――福祉の専門学校を卒業後、20歳から「グループホーム アゼリア」で働き始めた柴田さん。少し遡りますが、子どもの頃はどんなお子様だったのでしょう。

「幼い頃からサッカーをやっていたので、活発でいつも外で走り回っているような子どもでした。両親は共働きで兄弟が多く、下の弟とは5歳離れていたこともあり、保育園の送り迎えなどもしていましたね。子どもの頃から世話好きだったので、どちらかというと、面倒見はいい方だったかもしれません。反抗期もなく、親からはよく"我慢強い"と言われていました」

――福祉の専門学校に行こうと思ったきっかけは?

「正直に言うと、勉強したくなかったんです(笑)。高校を卒業したら、大学に行かず働くというのはずっと前から決めていましたが、親と相談した結果、まずはどんな職種に就くか決めて、専門学校で学んだ方がいいのではということになりました。
人と接するのが好きなので接客業も選択肢に上がりましたが、将来性を考えて福祉系がいいのではないかと。母に『福祉の道に進みたい』と話した時も『あなたに合っていると思う』と応援してくれましたし、その言葉があったので、自信を持って進めたところもあります。
私が専門学校に通っていた当時は、授業料も無料。在学中も現場で働けるシステムを利用し、実践を学びながら専門学校に通いました。もともと体を動かすのが好きなので、人の役に立てるこの仕事は、自分にすごく合っていると思います」

――専門学校の授業は具体的にどのような内容ですか? 勉強も大変な印象がありますが、実際にはいかがでしたか?

「座学だけではなく、実習や成果を発表するなどさまざまで、個人的には、実習日誌を何度も書き直した思い出があります(笑)。表現の仕方が難しく、より具体的に分かりやすく書き直す作業をひたすらしていました。
医療や知識の分野などは、授業をしっかり受けていれば理解できると思いますが、法律の分野はみんな苦戦していましたね。そこについていけず、途中で辞めてしまう人も。職業訓練として来ている人は長続きしますが、早々と辞めてしまう学生も多かったです。実際に私も、『勉強は苦手なのに...』と思うことはありました(笑)」

――辞めてしまう学生も少なくない中、柴田さんはここまでブレずに介護福祉士として勤めていらっしゃいます。専門学校在学中や卒業後、将来に迷いが出ることはありませんでしたか?

「なかったですね。でも、最初は考えが甘かったこともあり、試験はいつもギリギリの点数でした。何回も追試を受けて、親が呼び出されることも(笑)。試験は大変でしたが、目の前にあることをひたすらこなし、なんとか食らいついてきました。
ここまで続けてこられたのは、家族の存在が大きいかもれません。もし辞めたら家族に迷惑がかかりますし、この道と決めたからには最後まで行かなくてはと。今も、職場で最善を尽くしたいと思っています」

――高齢者施設と障がい者施設で、学ぶことに違いはありますか?

「高齢者施設と障がい者施設では支援内容も異なりますが、学科や資格の違いはありません。私の場合、学校での実習以前は介助未経験でした。実習は全部で4回、最初は1〜2週間の短期間から始め、最後は30日間施設に通います。実習先は障がい者施設や高齢者のグループホームなどさまざまで、先生方がなるべくいろんな実習先を体験できるように配慮してくれます」

――仕事に就き、資格を取得してから、ご自身の中で変化はありましたか?

「最初は入居者様のトイレや食事など、日常生活のお手伝いをすればいいという感覚でしたが、年月が経つごとに、だんだん責任感を持つようになりました。今は事務作業も増え、新人を指導しなければいけない立場になったので、少しずつではありますが全体を見渡すことも意識できるようになり、仕事への取り組み方もだいぶ変化したと思います」

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