リストラ・離婚...つらい経験を経て、ニッポンの「昆布」に救われたスペイン人男性の今:世界!ニッポン行きたい人応援団

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ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、「ニッポンにご招待したら人生変わっちゃった! スペシャル」をお送りします。

東京と名古屋の名店でおでんを学び、福岡でちくわ作りにも挑戦!

紹介するのは、ドイツに住む、「おでん」を愛するザーラさん。

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おでんとは、竹串に刺した豆腐田楽のことで、丁寧に「お」を付けて呼んだのが名前の由来。江戸時代から庶民に人気の食べ物でしたが、現在のように煮込むようになったのは江戸末期以降のこと。今や日本全国で様々な変化を遂げ、鰹出汁で「ちくわぶ」が入った東京のおでんや、鰹出汁に昆布を加え、タコや牛スジを入れた大阪のおでんなど、地域によって出汁や具材に特色があります。

大学生の頃、出汁のうま味に魅了され、自分で和食を作るようになったザーラさんは、様々な具材に出汁を吸わせるおでんの虜に。しかし、本物のニッポンのおでんはまだ味わったことがありません。ザーラさんが住むドイツの郊外では、おでんダネが手に入らないので、材料を買うのは電車で1時間かかるデュッセルドルフ。本やインターネットを参考に独学で作っています。

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出汁は昆布を水に浸すところから始め、がんもどきは手作り。大根は面取りをし、こんにゃくも下茹でしてアク抜き。鍋に具を盛り付け、醤油を加えた出汁を注いで火にかけ、一晩煮込めばおでんが完成! 彼氏のカロルさんも、おでんが大好物。

そんなおでんを愛するザーラさんを、ニッポンにご招待! 4年前、念願の来日を果たしました。

地方によって違うニッポンのおでん作りを学ぶため、向かったのは「おでんの街」として有名な東京・北区にある田端銀座商店街。「佃忠かまぼこ店」で人気のさつま揚げをいただいたザーラさんは、念願だったニッポンのおでんに感激!

翌日。「ミシュランガイド東京2017」にビブグルマンとして掲載された東京・新橋の「かま田」で、おでんの調理工程を特別に見せていただきました。出汁を具材によって変えるこだわりがあり、北海道川汲(かっくみ)産の真昆布をベースに、鹿児島産鰹の荒節と本枯れ節、まぐろ節で3種類の出汁を作ります。温度や煮込む時間にもこだわりがあり、まぐろ節と本枯れ節の出汁を合わせて味付けしたメインのスープは、何杯でも飲めるように、みりんを入れないのがポイントです。

ポイントは大根のむき方にも。硬い繊維が通っている皮を5ミリほど厚く剥きます。この部分があると、煮ても出汁が染み込まないそう。

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食べ方にもこだわりが。一般的に、具材は一緒に煮込んだ出汁と提供しますが、「かま田」では、お客さんに出す直前に、具材に専用の出汁を合わせます。こだわりのおでんを堪能し、「出汁の素晴らしさが分かりました」。うま味を引き出す出汁の醍醐味を教えていただきました。

続いて向かったのは、名古屋の名店「島正」。「どて焼き」と呼ばれるみそおでんの専門店です。人気の秘密は、八丁味噌の味が中まで染み込んでいながら、何個でも食べられるあっさり味。みそにはザラメや秘伝の出汁を加え、癖になる味に仕上げています。

しかし、中まで味が染みたおでんダネを提供するまでには大変な手間がかかるそう。特に大根は、湯がいて、アク抜きのために水を替えながら3〜4日浸し、特製の味噌出汁で1週間煮込んで味を染み込ませ......仕込み始めから10日かけてようやく完成! 他にも、5時間煮たこんにゃくを容器に詰めて保存し、水分を抜くなどの工夫がなされていました。

次に向かったのは、福岡。ラーメンの屋台が有名ですが、実はおでんの街でもあります。創業67年の練り物のお店「豊島蒲鉾」でお世話になります。

おでんの数ある具材の中で、ザーラさんが一番好きなのはちくわ。ザーラさんもちくわを作らせていただけることに。手本を見せてくださるのは、創業者のちくわ作り名人・豊島喜多男さん。手作りにこだわる「豊島蒲鉾」では、スケソウダラ、エソ、イトヨリダイなどのすり身を使用します。
ちくわ1本に使うのは100グラムですが、名人は量らずに取り分け......棒に巻き付けて途中で一回転させ、15秒ほどで完成。短時間で作り、水を適度につけて照りを出すのがポイントです。照りの良しあしで歯ごたえが決まるそう。

名人の娘で、二代目社長の山口美栄さんに教えていただきます。水は、指先に少しつけるのがポイント。その手ですり身を巻き付けますが、力加減も重要です。薬指と中指で一番端を形どり、一回転させ上下を反対に。ねじるようなイメージで、親指で模様を付けながら下に伸ばしていきます。何度も続けるうちに、山口さんから「やるじゃん!」とお褒めの言葉も。ただ、名人のものと比べるとまだまだのよう。

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いよいよ回転式のちくわ焼き機を使い、約10分間焼いていきます。ここでの重要な作業は、膨れて形が崩れるのを防ぐため、針で空気を逃がしながら焼きあげること。全体に焼き目がついたら完成! 出来立てを試食したザーラさんは、「食感、味と全てが言葉にならないほど美味しいです」と絶賛。

翌日やってきたのは、山口さんの長女・奈緒さんのご自宅。ドイツに帰ってからも福岡のあご出汁おでんが食べられるようにと、山口さんが教えてくださることに。

九州で「あご」と呼ばれるトビウオは、この地方の代表的な高級出汁。吸い物や雑煮にも使われています。出汁がよく出るよう、半分に折って水に入れ、さらに昆布も水に浸した後、弱火でじっくり煮込んでいきます。

そして、具材の仕込み。ザーラさんは東京で学んだことを活かして大根の皮を厚くむき、こんにゃくは名古屋で学んだことを活かして下ゆでしてから容器に詰め、重しをして水抜き。茹でた玉子を加え、鰹節を足した出汁で煮込めば、東京、名古屋、福岡で学んだおでんが完成!

出来上がったおでんを、山口さんのご家族と囲みます。ザーラさんが作ったちくわも好評で、おでんを囲み、笑顔が絶えない食卓...これも、ザーラさんがおでんを愛する理由の一つ。「一緒に料理ができて本当にうれしかったです」と話すと、「センスがいい! きっと日本人より上手なおでんができる」と山口さん。

別れの時。お土産に手作りのかまぼこをいただいたザーラさんは、山口さんのご家族への感謝のメッセージを読み上げます。涙を浮かべてハグを交わし、「ドイツにいい娘が1人できました」と山口さん。ザーラさんは優しく教えていただいた皆さんに感謝し、「ドイツに帰ったら最高のおでんを作りたいです」と話しました。

あれから4年。帰国後、ザーラさんのおでん愛はさらにパワーアップ! 現在は、半熟玉子のおでん作りに挑戦中。休日は彼氏のカロルさんと、仲良くおでん作りを楽しんでいます!

剣豪・宮本武蔵ゆかりの地を巡り、剣術の稽古を通して深い絆も

続いて紹介するのは、南米アルゼンチンに住む、「剣術」を愛してやまないメリッサさん。

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剣道の母体となったニッポンの古武術、剣術。刀の登場とともに生まれた武術で、始まりは古墳時代まで遡るとか。江戸時代には様々な流派が生まれ、その数は700を超えたとも。中でも、メリッサさんが夢中なのが五輪書です。五輪書とは、江戸時代初期の剣豪・宮本武蔵が侍の心得を記したもの。その精神が武術以外にも役立つと世界で高く評価されています。

ニッポンにはまだ一度も行ったことがないメリッサさん。宮本武蔵を尊敬するあまり、お手製のポスターに「二天」の文字を入れていました。二天とは、宮本武蔵が考案した「兵法二天一流」のこと。「相手が自分より弱い時、本当の勝利は戦わないこと。人を思いやる心が学べる剣術の稽古は本当に勉強になるんです」と話します。

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メリッサさんは、お父さんのエドワルドさんの影響で、9歳からアルゼンチンの二天一流の道場に通って稽古をしています。「腕は未熟ですが、練習がとにかく楽しくてたまらないんです!」。ニッポンの道場で剣術を習い、宮本武蔵が五輪書を書いた熊本に行ってみたいそう。

そんなメリッサさんをニッポンにご招待! 4年前、お父さんとともに初来日しました。

向かったのは、宮本武蔵ゆかりの地・熊本。武蔵が五輪書を書き上げるためにこもった霊巌洞がある、雲巌禅寺にやってきました。

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洋服では失礼にあたると道着に着替え、念願の霊巌洞に感動! 宮本武蔵が座禅を組んだという「船頭石」に座りました。武蔵に想いを馳せ、「これからも剣術の稽古に励むということと、心より武蔵先生を尊敬していますと伝えました」。

熊本で必ず訪れたかった場所がもう一つ。宮本武蔵の墓がある武蔵塚公園です。熊本藩主の細川忠利に軍事顧問として招かれ、手厚いもてなしを受けた武蔵。その恩から、武蔵は細川家を見守り続けたいと、熊本を一望できるこの場所に墓を建てるよう遺言したそう。

武蔵の墓に手を合わせ、その足で向かったのは公園のすぐ向かいにある「武蔵茶屋」。インターネットで見つけて以来、どうしても食べたかったのが、こちらの武蔵うどん。怪力を誇った武蔵にちなみ、力餅が入った武蔵うどんをいただき、大満足!

もう一つの夢は、尊敬する兵法二天一流の宗家に稽古をつけてもらうこと。宮本武蔵が考案した剣術の集大成でもある兵法二天一流は、実戦を想定した古武術。そんな武蔵の技を370年以上にわたって受け継いできたのが、十二代宗家の吉用清さんです。吉用さんにメリッサさんの熱意を伝えたところ、快く引き受けてくださることに!

やってきたのは、大分県宇佐市。ここに吉用さんの道場があることを、メリッサさんはまだ知りません。道場の中に入り、サプライズで吉用さんが登場すると、びっくり!

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神棚に礼をし、早速稽古を開始します。兵法二天一流は、二人一組で行う「形(かた)」の演舞が中心で、当たる寸前で木刀を止める刀さばきが求められます。宮本武蔵の二刀流のイメージから、二本の刀を使うと思われがちですが、本来は一刀を鍛えることが大事。二刀流は片腕になった時でも刀が振れるように、両腕を鍛えるべく考案されたそう。

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メリッサさんの演舞を見て、「よくぞここまで修行しました!」と吉用さん。しかしメリッサさんによると、美しい寸止めができないのが悩み。大事なのは「一寸の寸止め」で、一寸とは3センチ。メリッサさんの打ち込みは止める距離が浅く、理想の形には遠いそう。一方、吉用さんは3センチより深く入っていますが相手には当たらず、しっかり止まっています。

美しい寸止めをするには、古武術ならではの足さばきや構えに秘密が! 剣道の場合、左右のかかとを上げてすり足移動することで素早い動きを可能にしていますが、実戦を想定した剣術では、かかとをしっかりつけて歩かないと体が安定せず、太刀筋がブレてしまいます。メリッサさんも、つま先立ちの足さばきをしていました。

構えにもポイントがあり、吉用さんはメリッサさんと比べて腕が顔につくほど脇を締めています。こうすることで体幹がぶれず、より安定した太刀筋になるのです。これは、ゴルフや野球の安定したスイングにも通じるという姿勢。脇を締めた姿勢になっているかは、模造刀を振った時の音でわかるそう。

メリッサさんが模造刀を振っても特に音はしませんが......吉用さんが振ると、空気を切り裂いた音が! 脇を締めることにより太刀筋が真っ直ぐになり、素早く真っ直ぐ振り下ろせば空気が振動し、この刃音が鳴るそう。メリッサさんも脇をしっかり締めると音が鳴り、「全然力を入れていないのにすごいです」と感動!

その後も足さばきや脇を締める構えを猛特訓! 寸止めも少し上達しました。「吉用先生に教えていただいた稽古は発見の連続でした」と感謝すると、「日々鍛錬、日々稽古、頑張りましょう」と吉用さん。

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稽古の後は、吉用さんのご自宅で歓迎会。奥様の美智子さんが、落ちハモの天ぷら、味噌仕立ての汁に平麺が入った「だんご汁」など、郷土料理の数々を用意してくださいました。門下生の皆さんと一緒に楽しい時間を過ごし、「今だけは自分が日本人になれたような気がしてすごく嬉しいです」。

翌日、吉用さんと向かったのは、八幡神社の総本宮「宇佐神宮」。祀られているのは、昔から武士の間で「武運の神様」として崇拝されてきた八幡大神です。武士ゆかりの地で祈願することで、剣術の道を究めてほしいと案内してくださったのです。

そして吉用さんからサプライズ! 神宮を管理する宇佐神宮廳(ちょう)に案内されると、そこには、宮本武蔵が作ったといわれる木刀が! 兵法二天一流の後継者が代々受け継いできたもので、十代目の宗家が厳重に保管したいと宇佐神宮に奉納し、非公開とされてきました。武蔵の木刀を触らせていただき、あまりの神々しさに手が震える一幕も。

別れの時。メリッサさんは、感謝の気持ちを書いた巻物を読み上げます。「遠く離れても、いつもいつも大好きな皆さんのことを想っています」という言葉に、道場の皆さんの目に涙が......。吉用さんから、宗家の銘が入った二天一流の太刀と小太刀が贈られ、大感激しました。

あれから4年、メリッサさんからのビデオレターを道場の皆さんのもとへ届けます。