リストラ・離婚...つらい経験を経て、ニッポンの「昆布」に救われたスペイン人男性の今:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

出迎えてくださったのは、奥様の美智子さんと長女の直江さん、師範の石井豊澄さん。実は、吉用さんは2020年1月に亡くなっていました。現在道場では、直江さんが十三代宗家を引き継ぐべく、石井さんの元で稽古に励んでいます。

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メリッサさんは、昨年アルゼンチンの超名門校・ブエノスアイレス大学に進学。物理学を学んでいます。吉用さんの訃報を聞いた時は、心に深い穴が空いたような気分だったそう。「すごく寂しいですが……でも先生はいつも私たちの心の中にいます」。直江さんの目から涙が溢れます。

帰国後も、メリッサさんのことをずっと気にかけていたという吉用さん。落ち着いたら
アルゼンチンまで指導に行きたいと語っていたそう。メリッサさんも帰国後、吉用さんの教えをより深く理解したいと、日本語を猛勉強。アルゼンチンで開催された日本語スピーチコンテストで、最優秀賞に選ばれるまでになりました。

帰国後、道場での様子を取材した際は、高校1年生にして、道場の指導役に。そんなメリッサさんのことを、道場の先輩たちは「吉用先生の教えを受け、大きく成長したと思います」「ニッポンに行く前は幼いところもありましたが、今では道場の将来を担う存在ですよ」と話します。

次の目標は、ニッポンへ留学すること。東京大学か東北大学の大学院で、AI(人工知能)について勉強したいそう。「全集中で日本語を勉強して必ずニッポンに行きますので、待っていてください」と、「鬼滅の刃」のフレーズを使って意気込みを語ったメリッサさん。「また会いましょう!」と手を振りました。

メリッサさんをニッポンにご招待したら、アルゼンチンで剣術を広め、ニッポンへ留学する夢に向かって歩み出していました!

昆布を愛するスペイン人男性が、羅臼昆布のうま味を出す工程を体験

続いて紹介するのは、スペインに住む、「昆布」を愛するホセさん。

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味の決め手、出汁として日本料理に欠かせない食材、昆布。湯豆腐や鍋物など多種多様な食べ方がある昆布は、「うま味」を生み出すグルタミン酸が豊富に含まれ、古くは縄文時代から食べられていたそう。平安時代の記録には「先祖代々献上してきたもの」として、昆布の名前があるとか。

スペインに昆布を食べる文化はないそうですが、ホセさんが夢中なのが「昆布締め」。富山の郷土料理で、漁師が余った魚を昆布に包み、雪の中で保存したのが始まり。魚の水分を吸収するので日持ちし、魚のイノシン酸と昆布のグルタミン酸が合わさって、おいしく食べられることを発見したのです。

ホセさんが昆布締めを知ったのは2年前。世界の料理が載った本に昆布締めのレシピがあり、その美味しさに感動! リストラされて失業中のホセさんの、唯一の楽しみが昆布締めなのです。
締める時間を短くするために水で戻した昆布を白身魚に巻き、冷蔵庫で半日寝かせて作っています。昆布の風味を増すため、昆布の粉末をかけるのがホセさん流ですが、魚の味が薄くなるのでバランスが難しいそう。

ニッポンにはまだ一度も行ったことがなく、試行錯誤して昆布締めを作っています。後日ニッポンご招待を伝えると、実は失業に加えて、奥さんが家を出て行ってしまったそう。「昆布に熱中すれば運が開けるような気がします」と話すホセさんを、4年前、ニッポンにご招待しました!

向かったのは、昆布の消費額全国一の富山県富山市。そんな富山でこだわりの昆布締めを出す名店が、「ミシュランガイド北陸2021」で2つ星を獲得した「御料理ふじ居」です。

早速、本場富山の昆布締めを初体験! 昆布に挟まず、昆布の上にのせる方法に驚きます。魚によって身の厚さ、柔らかさが違うので、挟むと昆布の味しかしなくなるそう。さらに、昆布を水に浸すとうま味が抜けてしまうと知り、水で戻した昆布で昆布締めを作っていたホセさんは「大きな間違いに気がつきました」と苦笑い。

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初めて味わう本物の昆布締めに「美味しい」を連発します。富山の白海老や甘鯛、旬の鱚(きす)を塩昆布で和えたものをいただき大満足!

ホセさんが富山でもう一つ気になっていたのは「おぼろ昆布」。お吸いものやうどんなどに入れると香りが引き立ち、より一層美味しくいただけます。そこで「扇子昆布商店」に向かい、職人歴30年の扇子忠之さんに作り方を見せていただくことに。

専用の草履を履いて昆布を固定し、「あきた」と呼ばれる刃物で、昆布を1ミリ以下の薄さに削ります。削りたてを試食したホセさんは、「透けるほど薄いのに、風味抜群です」。
おぼろ昆布に使うのは、酢に漬けた昆布。酢漬けにすることで日持ちし、柔らかくなるそう。ホセさんもおぼろ昆布作りに挑戦し、「初めてにしてはホンマにいいですね!」と褒めていただきました。

多彩な昆布文化が育まれてきた富山ですが、実は昆布が一切とれず、ほとんどが北海道羅臼産だそう。
そこで、次に向かったのは北海道羅臼町。羅臼がある知床半島の海にはたくさんの魚が生息し、魚の城下町とも呼ばれています。その理由は、シベリアからの流氷によって運ばれる大量の植物性プランクトンと山から流れ込むミネラル豊富な雪解け水。そんな最高の環境で育つ羅臼昆布は、幅広で濃厚なうま味が出る、まさに昆布の王様なのです。

船に乗り、羅臼昆布漁を見せていただくと「まさか、一枚一枚人の手で採っていたなんて驚きです!」。漁は全て手作業。箱メガネを使って海底の昆布に狙いをつけ、7メートルもあるねじり竿を海中に刺し、巻き取るように収穫。端が黄色くなっているのが完熟の証です。

貴重な昆布を守るため、漁の期間は7月の中旬から8月末までと決まっています。この他にも、漁は朝6時から昼12時まで、船を所有できるのは一家につき一艘のみ、乗船できるのは1名だけというルールも。

収穫した昆布は浜にあげ、一枚一枚洗います。それを乾燥機のある部屋で干すこと20時間。普通の昆布はここで完成ですが、羅臼昆布には、この後、驚きの工程があるそう。そこで、昆布漁師歴30年の相木茂樹さんに、その工程を見せていただくことに。

相木さんの昆布を味見させていただくと「とても甘いですね!」とホセさん。北海道には地域ごとに様々な昆布があり、中でも羅臼昆布はうま味成分が豊富。出汁は濃厚なコクと甘みが特徴で、この味を出すには20以上の工程があるとか。

まず見せていただいたのは、夏に収穫して乾燥させたばかりの昆布。乾燥させただけではうま味は出ないため、2ヵ月もの時間をかけ「庵蒸」と呼ばれる熟成を行います。
庵蒸の前に行うのがシワとり。乾燥して丸くなった昆布を開いて伸ばし、シワを取ったらサイズごとに仕分け。次に庵蒸の工程に入り、湿度と温度が一定した場所で一晩寝かせます。

翌日は、晴天の日にしか行えない「日入れ」。手作業で昆布を並べ、日光に当ててうま味を引き出します。この日の気温は30度近くありましたが、ホセさんもハチマキを巻いて昆布を並べます。

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約1時間かけて並べた2000枚の昆布を、わずか10分後にはすべて裏返しに。「日が入りすぎると、バリバリになってかけてしまう」と相木さん。こうして両面に日光を当てたら10分後に回収。多い日はこれを3回繰り返すこともあるとか。

日入れを終えたら倉庫に戻し、再び庵蒸。重しを乗せ、今度は1ヵ月以上熟成させます。こうすると、グルタミン酸やミネラルが増加するそう。

手伝ってくれたお礼にと、相木さんに誘われ、知床の温泉へ。温泉から戻ると、奥様の修子さんが夕食を作ってくださいました。ホセさんは、キンキに羅臼昆布を巻いて蒸した「キンキの湯煮」を大絶賛! 羅臼昆布で出汁をとり、昆布と一緒に麺をゆでたラーメンも堪能しました。

そろそろお開きかと思いきや、相木さんはホセさんを連れて再び浜へ向かいます。これは、シワとりの前夜に行う「湿り」という大事な工程。夕方、湿度が60%を超えたら昆布を並べ、夜露で昆布が柔らかくなるのを待ち、約5時間後に回収します。「相木さんはどんな時でも、昆布のことを考えています」「これが本物の職人なんですね」。これほど手間ひまかけた工程を行うのは、羅臼昆布だけだそう。

8月に漁を終え、2ヵ月かけて庵蒸を繰り返し、いよいよ出荷の準備。出汁がとれる部分を残し、ひれをカットします。左右対称にしないとランクが落ちるため、作業は慎重に。切り落とした部分は、耳昆布として低価格で販売します。羅臼昆布は、箱詰めまで家族で行うのが伝統。漁師の名前がブランドとして箱に記されています。

別れの時。「皆さんの仕事を拝見し、ますます昆布が好きになりました。ニッポンの昆布は、僕がスペインで広めます」とホセさん。相木さんからは、昆布のプレゼントをいただきました。
ここで、ホセさんから嬉しい報告が。スペインから電話があり、就職が決定! 相木さんご夫婦とハグをして喜びをわかち合います。

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あれから4年……相木さんご夫婦の元に、ホセさんからのビデオレターを届けます。

「これをすると元気が出ます」と、ハチマキを巻いて登場したホセさん。帰国後に離婚が成立し、新たな生活がスタート。ソニアさんという新しい恋人もできました。ソニアさんはホセさんの昆布料理を気に入っているそう。

ますます昆布料理が好きになったホセさんが披露してくれたのは、コシードの昆布仕立て。コシードは肉と野菜を煮込んだスペインの伝統的なシチュー料理で、ホセさんは昆布で出汁を取っています。修子さんに教わった方法を参考に、温度があまり上がらないようにしているそう。

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「スペインで、もっと昆布の勉強を続けます」と意気込むホセさん。ニッポンの昆布の宣伝も続けており、友人に昆布料理を作っていると報告。「必ずまた羅臼に行きますよ!」と呼びかけます。「羅臼に来るっていうから楽しみ」「待ってます」と、笑顔が溢れる相木さんご夫婦でした。

ホセさんをニッポンにご招待したら、スペインで昆布の魅力を広め、昆布が大好きな恋人と、新しい人生をスタートさせていました!

1月17日(月)夜8時からは、ゲストに川田裕美を迎えて、月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団“ご招待で人生変わっちゃった!”」を放送!

「本物のどら焼きの作り方を覚えたい!」
“どら焼き”を愛するカナダ在住でイタリア出身のニコレッタさん。念願の初来日を果たし、静岡県・静岡市へ。1日350個限定!行列のできる専門店「河内屋」さんでこだわり抜かれた製法と美味しさの秘密を教わり大感動!さらに北海道・十勝のあずき農家の元で小豆を使用した料理を教わり感激!あれから3年…ますますどら焼き好きになったニコレッタさんからビデオレターが!

「“心ある芸”で小鼓を世界に広げたい!」
好きすぎるあまりニッポンに住んじゃって7年。“小鼓”を愛してやまないアメリカ人のJDさん。人づてに師匠の元を訪ね弟子入り志願!現在も“小鼓”の演奏をひたむきに頑張っている。そんな彼がニッポン行きを決意したのは、アメリカの大学にやってきた“ある太鼓グループ”の演奏に感銘を受けたことがきっかけ…そんな決意のきっかけになったグループとまさかの再会サプライズが!

どうぞお楽しみに!