ロシアでたい焼き店を経営する女性が、ニッポンの職人技を学び...帰国後、驚きの展開に!:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時~)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、「ニッポンにご招待したら人生が変わっちゃった! 感謝のビデオレターが届いちゃいましたスペシャル」をお送りします。

憧れの「天然もの」に感動! あんこの作り方など職人の技を学ぶ

紹介するのは、ロシアのサンクトペテルブルクに住む、たい焼きを愛するアナスタシアさん。

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鯛をかたどり、あんこが詰まったニッポンの味「たい焼き」。東京にある「浪花家」の創業者が「めでたい」にちなみ、大阪の今川焼きを鯛の型で焼いたのが始まりだそう。

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アナスタシアさんは20歳の時、ニューヨークへ旅行し、たまたま入ったお店で食べた、たい焼きの美味しさに一目惚れ。ロシアで自ら「タイヤキ カフェ」を開きました。ニッポンにはまだ一度も行ったことがなく、中国製のあんこを使い、インターネットで調べたレシピでたい焼きを作っています。

そんなアナスタシアさんをニッポンにご招待。約5年前、念願の初来日を果たしました。

向かったのは、東京・港区の麻布十番にある「浪花家総本店」。明治42年創業で、たい焼きの元祖といわれています。「浪花家」のたい焼きは、今では少なくなった、一つひとつ丁寧に焼き上げる「天然もの」。元々は「一丁焼き」と呼ばれ、一匹ずつの型で作るのが基本でしたが、一気にたくさん焼ける型が流通し、手間がかかる「一丁焼き」を扱う店は減少。貴重な存在となった一丁焼きを「天然もの」、大量生産できる型を「養殖もの」と呼ぶようになったそう。

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「浪花家」のたい焼きは、あんこが透けるほど皮が薄いのが特徴。試食したアナスタシアさんは、「素晴らしいです」と大感激! そして、自分が作っている養殖ものとの違いに気付きました。直火で焼く「浪花家」に対し、アナスタシアさんが使っているのは電気のたい焼き器。火力が違っていたのです。「香ばしいのが大事なんです」と、四代目の神谷将守さん。「あとは自分で研究して自分のたい焼きを美味しくしないと。いろんなものにヒントを得て」とアドバイスをいただきました。

続いて向かったのは、富山県富山市にある昭和46年創業の「わかば富山店」。実は、「たい焼き御三家」と呼ばれているお店があり、先ほどの「浪花家総本店」、東京・人形町の「柳屋」、東京・四谷の「たいやき わかば」がそれにあたります。この「わかば」から暖簾分けした「わかば富山店」で、たい焼きの作り方を教えていただくことに。

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受け入れてくださったのは、店主の小澤雄一さん。天然もののたい焼き作りを見せていただきます。約80度に熱した型に油を塗り、素早く生地をのせ、自家製あんこをたっぷり入れるのが「わかば」の特徴。長年の勘でタイミングを見極め、裏返します。生地には卵を使わないそうで、「ネットで調べたレシピは間違っていました!」と焦るアナスタシアさんでしたが、卵を入れて作る方法もあると教えていただき、安心する一幕も。

出来たてのたい焼きをいただき、あまりの美味しさに感激。甘みを引き立てるため、小豆に塩が少し多めに入っているそうで、早速、あんこ作りを見せていただくことに。
使うのは北海道十勝産の小豆30kg。銅製の鍋に蓋をし、強火で煮ます。小豆が水分を吸い込むまで煮込み、塩500gを全体に行き渡らせ、続いてザラメを30kg加えてかき混ぜ......あんこに固さを出すため、かくはん機でかき混ぜながら煮込みます。作り始めてから5時間半、ようやく完成! このあんこが「わかば」のたい焼きの要なのです。

あんこを試食し、「これが小澤先生のあんこの味ですね」と噛み締めます。小澤さんにとってあんこはどんな存在なのか質問すると、「50年こうやって商売していますけど、あんこが命。あんこが美味しくなかったら、私は今生きてないと思う」と答えてくださいました。

いよいよ、念願のたい焼き作り。一見簡単そうに見えますが、そこには職人の技が詰まっています。ざっくりとあんこを取り、馴染ませてヘラを斜めにすると、先の方のあんこが多く、手元の方が細い形に。生地にのせる時、この細い方をしっぽの側にすることで、しっぽまでバランス良くあんこが行き渡るのです。出来上がったたい焼きにハサミを入れると、全体にあんこがびっしり!

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あんこを取る作業も、簡単なようで難しく、アナスタシアさんがあんこを取った回数が200回を超えた頃、ようやく合格。天然ものの型で焼いてみることに。緊張しながら出来栄えを見ると、あんこの量が多すぎて、たい焼きの口から漏れてしまいました。
そして一番重要なのが、あんこがしっぽまで行き渡っているかどうか。割ってみると、頭としっぽにあんこが足りません。「やはりあんこのバランスが、小澤先生が焼いたものとは全く違います」。

お店を閉めた後、向かったのは小澤さんのご自宅。この日は、富山や北陸地方の名物を用意していただきました。甘い黒豆と餅米に、少量の塩を加えて炊いた「御霊(みたま)」は、法事やお祝い事の時に出されるそう。黒豆を甘く味付けしているので、ご飯もほんのり甘い味。御霊を口にしたアナスタシアさんが「美味しいじゃないか、これは」と日本語で話すと、皆さん笑顔が溢れます。

さらに、小澤さんが出してくださったのは鯛の塩焼き。たい焼きは見たことがあっても、本物の鯛を焼いたものは見たことがないだろうと用意してくださったのです。初めての鯛の塩焼きに「美味しい」と舌鼓を打ちました。

その後も小澤さんは、ロシアに帰ってからもたい焼きをうまく作れるようにと、時間を割いて何度も教えてくださいました。

別れの時。アナスタシアさんは「憧れだった天然たい焼きについてたくさん教わりました。本当のたい焼きの美味しさをロシアで伝えます」と話し、小澤さんに、似顔絵を贈りました。
すると小澤さんは、自ら「たいやき」と書いた手作りの看板と、あんこを取るヘラをプレゼント! ロシアでもあんこを取る練習ができるように、竹を削って作ってくださったのです。あんこを取りやすいように片側を薄くする工夫も。小澤さんの心遣いに感謝し、「また必ず来ます」と約束しました。

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あれから3年...。2019年にアナスタシアさんのたい焼き店を訪ねてみると、お客さんで満員! 一番人気はつぶあん。生地は「わかば」のレシピに従い、卵は入っていないそう。味の決め手となるあんこも、2日に1度、小澤さんのレシピ通り小豆を煮て作っています。ただ、ザラメはロシアでは入手が難しいため、甘みがまろやかなロシア産のブラウンシュガーを使用。塩を多めに入れたつぶあんを、しっぽの先までたっぷり入れています。

実はアナスタシアさん、帰国後に2号店をオープン。広さは1号店の倍で、多い日は200人ほどのお客さんが来るそう。しかし、このお店を開くまでには苦労がありました。亡くなったお父さんから贈られた自宅の部屋を売っても資金が足りず、借金をしたそう。

今年9月にアナスタシアさんから届いたビデオレターを、小澤さんのもとに届けます。

2号店の入口には、小澤さん手作りの看板が。いただいたヘラも、「もったいなくて、たい焼き作りには使えません」と、店内に飾っています。変わらずたい焼きも作り続けており、小澤さんに教えていただいたつぶあんも好評。現在はコロナ対策で、席数を減らして営業していますが、繁盛している様子で、店の外には大行列が!

そして、たい焼きカフェのフランチャイズも始めていました。フランチャイズ化したのは、たい焼きの温かさと日本人の心の温かさをロシア中に広めたいと思ったから。ひとりでロシア中に広めるのは難しいため、別のオーナーを立てるフランチャイズで店舗を増やすことにしたのです。

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9月4日、フランチャイズ第1号店がオープン。店内には、アナスタシアさんと小澤さんの写真が飾られています。午前11時にオープンするといきなり満員になり、なんと40分待ち! 生地は小澤さんに習った通りの配合ですが、つぶあん作りが間に合わず、急きょ中国製のこしあんで代用。いずれは、小澤さんに教わったつぶあんを作るそう。

アナスタシアさんには、まだ他にも報告したいことがあるそうで......直接伝えてもらおうと、遠く離れた絆を中継でもう一度結んじゃいました!

再会を喜ぶアナスタシアさんの背後には、ビルが映っています。そのビルは、サンクトペテルブルクにオープン予定の3軒目のお店。これには小澤さんもびっくり! 広さ260平米、2階建ての大型店舗で、日本庭園も作る予定だそう。

最後に感謝のメッセージを伝えます。「仕事に対する情熱を見せていただき、感謝しています。私は早くに父を亡くしました。でも、ニッポンにお父さんがいます。だからひとりじゃない。先生と一緒にこれからも前に進んでいきます」。小澤さんも、「ありがとう。体に気をつけてがんばってください」と伝えました。中継が終わると小澤さんは「日本のお父さんっていってくれて、本当に嬉しかったですよ」と微笑みました。

アナスタシアさんをニッポンにご招待したら......たい焼き店をフランチャイズ展開し、3軒目もオープン予定。ニッポンのたい焼きをロシア全土に広めるべく、奮闘していました!