『寄生獣 完結編』ピエール瀧×山崎貴監督 スペシャル対談

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――撮影していて一番グッと来たシーンは?

山崎監督:監督なので、そこは冷静に、あまりグッときてはいけないのですが、赤ん坊にまつわる部分はちょっときますね。それからミギーとの別れのシーンを撮っている時も、染谷くんがガイド(CGを重ねる目安となるミギー人形)に話しかけている姿が妙に切なくて。ちょうどミギーが出てこなくなるぐらいのタイミングだったということと、この仕事も終焉だなっていう感じも含めて切なかったです。ミギーと会えないんだ……って思いきや、その後はCGで毎日死ぬほど会うようになって(笑)。

ピエール瀧:ミギーは存在が面白いですよね。僕は映画を見ていて、「ミギーほしいな」って思いますもん(笑)。でも、阿部(サダヲ)くんのミギーはお見事。あのちょうどいい距離感のミギーは、原作に忠実ですごいと思いました。

――完結編では新一と里美の関係性に変化がみられますね。

山崎監督:全編を通して染谷くんも橋本さんもよく頑張ってくれたと思います。ラブシーンも、本当にドキドキするような状況下でやっていたのでね。本当に一生懸命、若い二人が頑張ってくれました。

――原作ファンでもあるお二人ですが、一番印象に残っているエピソードは?

山崎監督:今回の映画化でますますそう思いましたが、人間はひとり一つ、それぞれが脳を持ってるけれど、それとは別に巨大な脳を持ってる、我々は集団生命体だという考え方は、確かにそうだと思いますし、すごく印象に残っています。

ピエール瀧:ネット社会になって、さらにそうじゃないですか? リアルな感じがしますね。僕は、実は一番最初に出てくるモノローグというか、「人間の数が半分になったら……」というところ、あそこがすごく好きなんです。あれが最初にあって、物語が全部進んでいくのでね。どちらが悪でどちらが善かというところが、ずっとあの一言でぼかされるじゃないですか。すごく効いているなと思いますし、好きな概念です。

山崎監督:人間に寄り添った話じゃないぞ、ということを、最初に高らかに宣言しているんですよね。

――そもそも原作とはどんな形で出会ったのですか?

ピエール瀧:僕は多分リアルタイムで「月刊アフタヌーン」(講談社)の連載を読んでいたと思います。当時、創刊したばかりの頃だったかなぁ。漫画読みとしては「おっ! これは本気だぞ」っていう作品ばかりが掲載されていて、硬派というかしっかりした作品が多かった印象ですね。日本のSF漫画って、主人公の成長ストーリー物が主流だと思うんですけど、こっちは骨太なSFという感じで、当時どんどんのめり込んでいったことを覚えています。

山崎監督:僕も「月刊アフタヌーン」ですね。掲載されていた漫画が本当すごくて、内容も濃い。月一の楽しみとして読んでいましたが、「寄生獣」を初めて読んだ時は、「何かすごい面白い漫画が始まったぜ」と思いました。岩明さんがその前に描かれていた漫画「風子のいる店」とは、全然雰囲気も違っていて「こういうテイストの漫画を描くんだ」とびっくりした記憶があります。

――映画化にあたり、実際に岩明均先生とお会いになられたことは?

山崎監督:実は1回も会っていなくて。

ピエール瀧:え、本当に? 今日は山崎さんに、岩明先生ってどんな方なのか聞きたいと思っていたんですよ(笑)。

山崎監督:プロデューサーは1度会いに行ったんですけどね。だって、(大好きな人に)会うことが正解じゃないときもあるでしょう? でも、「ヒストリエ」もすごく好きなので、もし会えたら褒めちぎろうと思っているんです(笑)。

ピエール瀧:たしかに「ヒストリエ」は面白い。新刊が待ち遠しいな。じゃあ「ヘウレーカ」は? 山崎さんが映画にしてくださいよ(笑)。とにかく、漫画読みにとっては、「岩明均」作品は、絶対読んでおかなきゃいけない、基礎中の基礎! 意外と20、30代の若い世代で「寄生獣」を読んでいないという子がいて、これを読んでいないのはちょっと人生の損失に近いというか。だから、僕はうちにあるコミックスをいろんな人に貸しましたよ(笑)。