『厨房のありす』門脇麦“ありす”と永瀬廉“倖生”から大切な存在を奪った真犯人とは?

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『厨房のありす』門脇麦“ありす”と永瀬廉“倖生”から大切な存在を奪った真犯人とは?

最終話直前、八重森ありす(門脇麦)の実の父親の正体が明かされた『厨房のありす』(日本テレビ系、毎週日曜22:30~)第9話。

酒江倖生(永瀬廉)の父・十嶋晃生(竹財輝之助)が横領の濡れ衣を着せられたのと、ありすの母親・五條未知子(国仲涼子)が亡くなった25年前の放火事件がどうやら繋がっているらしいことがわかってきた。2人からそれぞれ大切な存在を奪った真犯人が同一人物である可能性が浮上したのだ。

真犯人についての情報を調べ始めたありすと倖生は、五條製薬の元研究員・温田実(岡部たかし)に行き着く。

25年前のあの火事発生時、研究室には必要のないはずの薬品があったことがわかっている。空気に触れると自然発火する危険薬品のジエチル亜鉛があり、これを研究室に持ち込むことができた人物は限られている。ラボのドアの暗証番号を知っていた心護(大森南朋)、晃生、未知子、蒔子(木村多江)、誠士(萩原聖人)に温田の6人。このうち温田が犯人と疑っているのは未知子の化学の才能に嫉妬していた蒔子だ。

さらには蒔子の口から語られたところによると、ありすの実の父親は誠士らしい。ということは蒔子は妹の恋人に恋心を寄せていたということなのだろうか。時系列が不明だが、あるいは自分の恋人が妹に心変わりしてしまったということなのか。未知子はなぜ未婚の母という道を選んだのかも気になるところだ。

それを知った上で聞く蒔子の「私、母親っぽいことしたいの、未知子の代わりに」はなんだか不気味にも聞こえる。

心護が頑なに守り通そうとしている真実

また気になるのは、心護がふと三ツ沢和紗(前田敦子)に尋ねた「すごく大切な人が2人いて、そのどちらかしか守れないとしたらどうしたらいいんだろう」という質問だ。

ここで晃生が亡くなる前日に心護と交わした会話が思い出される。

「今まで一番愛した人は心ちゃんだったけど、それ超えちゃった。ごめんね」と倖生の存在を愛おしそうに話す晃生に「そんなの俺もそうだよ」と重ねた心護。彼にとっての“すごく大切な人”というのは間違いなく晃生とありすの2人だろう。25年前の放火事件の前にジエチル亜鉛の発注が心護の名前で入っていたことがわかるが、これは何らか晃生に協力するつもりで頼んだものだったのだろうか。もしかすると晃生が何かしら秘密裏に進めている研究があり、そのために心護の名前で購入したジエチル亜鉛が予期せぬ形で発火し未知子が亡くなってしまったという可能性はないだろうか。未知子が亡くなるという点は不慮の事故だが、その裏に晃生の研究が関わっており、それを心護は「単なる火事ではない」と誠士に話していた可能性はないだろうか。あるいは、ありすが意図せず火事を引き起こしてしまい、その事実を心護は何が何でも守り通そうとしているのだろうか。

和紗は先ほどの心護からの問いに「私がいないとどうしようもない人を守るかな」と答えていたが、大切な二者の間で揺れる心護はますます口を固く閉ざし、ありすはどんどん彼のことが信用できなくなっていく。心護だって打ち明けてしまえれば楽になるだろうに、相手を思っての言動が全て裏目に出るのが切ない。

ありすがハードな現実と向き合いながら得た最強の味方とパートナー

ありすもありすで一気に衝撃の事実の断片に襲われ、もはやキャパオーバーだ。和紗に「どうして私の家は和紗の家みたいではないんでしょうか?」とポツリポツリ溢す彼女を思わず抱きしめたくなる。「もし何も起きなければ私にもそのまま幸せな未来が続いていたんでしょうか」と、これまで心護からかけられた愛情を一度たりと疑ったことなどないだろうありすの口から、今とは違う“幸せな未来”という言葉が飛び出すのもやるせない。血縁関係もない中、男手一つで自分を育ててくれた心護の手前、ありすはそんなふうに思うことさえ憚られるときっとどこかで抑えてきただろう。

そんな彼女の中で、母親が生きていた場合の“もしも”の“もう一つの人生”という考えても仕方ないことが頭を過ぎる。それくらいに追い詰められているのだろう。そして自分の周りは嘘に溢れていると嘆き、それさえも自分が自閉症だからと関連づけてしまいそうになるありすを「大丈夫だよ、私は味方だろ。どんなことがあっても私はありすのそばにいるだろ」とそのまま丸ごと受け止めてくれる和紗がいて良かった。

同じように「俺も一緒に受け止めるから。どんなに嫌な気持ちになっても、どんなに不安なことを知っちゃったとしても。全部一緒に受け止めるから」と真っ直ぐ嘘のない言葉をかけてくれる倖生がいて良かった。

さて、次週はついに最終話。心護をずっと悩ませる研究室のデスクの上から2段目の鍵付きの引き出しにしまわれていた封筒の中身はなんなのか。その手紙や書類にはどんな真実が書かれているのだろうか。

五条製薬の創立250周年パーティーに駆け付けた心護は会長・道隆(北大路欣也)と蒔子を前に何を語るのだろうか。心護はこうまでしてありすを悲しませないために一体何を守り通そうとしてきたのだろうか。

文:佳香(かこ)

次回最終話は3月24日に放送される。なお現在、民放公式テレビ配信サービス「TVer」では、第1話~第3話、ダイジェスト、配信限定の「化学で簡単レシピ」なども配信中。

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