元日本代表・太田宏介が名将・黒田剛のサッカー哲学を深堀り!FC町田ゼルビアの強さの理由とは

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元日本代表・太田宏介が名将・黒田剛のサッカー哲学を深堀り!FC町田ゼルビアの強さの理由とは

2月3日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)は、J2覇者のFC町田ゼルビアが躍進する原動力となった監督・黒田剛の“マネジメント術”と、ピッチ外での施策に迫った。

昨シーズンは勝ち点87を積み上げ、悲願のJ2優勝を果たしたFC町田ゼルビア。しかし、その前年となる2022年のシーズンは、勝ち点51で15位と悔やまれる結果に終わっていた。なぜ町田はわずか1年で飛躍できたのか。町田のCEOで、サイバーエージェントの社長・藤田晋は「1番大きいのは黒田監督の手腕かなとは思いますね。やっぱマネジメント力が非常に高い」と証言する。

高校サッカーの名門・青森山田高校の監督から町田の監督になった黒田は、就任1年目となる昨シーズンから、戦力を大幅に入れ替えるなどのクラブ改革に着手。2022年12月の就任会見では「このクラブがJ2で優勝すること、J1に昇格をすること。そこに関して揺るぎない努力とメンタリティを持って取り組んでいきたい」と宣言した。

2022年から町田に加入し、昨シーズンいっぱいで現役を引退した元日本代表の太田宏介は「(町田が)2位に落ちそうな瞬間って何回もあったんですよ。でも監督は常に1位を求め続けてくれたことによって、僕たちもブレなかったですし、改めてそういう目標設定って大事なんだなっていうのを感じました」と、目指すべきものを明確にすることの重要性を語った。

十分な実績があるものの、それでも高校サッカーの指導者によるJリーグへの挑戦は異例なこと。MCの勝村政信から「ほとんどなかったじゃないですか」と水を向けられた太田は「不安な部分も多かったですけど」と吐露しつつ、「1年間やってみて、黒田さんのすごさだったりとか、マネジメントだったりとか、一選手として、いろんなことを学んだ1年でしたね」と振り返った。

黒田と同時期にS級ライセンスを取得し、親交もある解説の福田正博は「もう少し僕は苦戦すると思いましたね。結果を残してくれたらいいなというふうには思ってましたけれども」と、町田のJ2優勝が想定外だったことを告白。続けて、「年末にも実は(黒田と)会って話しましたけど、ちょっとホッとはしてましたね。もう毎日が不安でしょうがないっていうような話をしてました」と打ち明けた。

そんな黒田の行ったクラブ改革は、選手たちに自覚と責任を持たせるためにキャプテンを総選挙で選び、チームの一体感を高めるためにコーチや選手すべてに役割を与えるという、各々の自主性を重んじるもの。

若手の台頭もあり、昨シーズンの試合出場数は11と、ベンチ外で過ごすことも多かった太田は「コーチ陣と選手のつなぎ目に徹していたかなと思います」と自身に与えられた役割を把握。黒田にも「今、試合に出られなくて、もちろん悔しいと思うけど、宏介はわかってると思う。とにかく若い選手のことを鼓舞し続けてくれ」と声をかけられたのだという。

試合に出ない選手にもマネジメントも行い、チームを作っていった黒田の方法論について、福田は「高校の場合はそれできるんですよ。ベンチじゃない選手もチームのためにって一つになりやすいんですよ。プロの場合は自分の評価が変わってきたり、移籍もできるから、なかなか一つの方向に実は行きづらい」と指摘。プロの世界でチームをまとめ、結果を出した黒田の手腕を高く評価した。

さらに、黒田は試合に勝っても負けても発破をかけ続け、選手のやる気を引き出すことに注力。太田は「サッカー界もサッカー以外でもそうですけど、年々怒られることって減ってくるじゃないですか。時代の流れと共に。やっぱり厳しく言ってくれる人がいるっていうのは、すごくチームにとってプラスに動く」と、黒田の言葉に大きな効果があったと主張した。

また、太田はミーティングの際の印象的だった話として、「(黒田は)よく車の運転で例えていたんですけど」と切り出し、「免許を取りに行くときってやっぱりたくさん勉強するし、免許を取ってからも周囲に気をつけながら運転するじゃないですか。ただ、それが5年、10年経つと、気をつけていたことを忘れがちになる。(サッカーでも)プロになったとたん忘れてしまう。顔面でもいいから体に当てて、1点を防げばチームはもしかしたら勝つかもしれない。綺麗なサッカーに憧れて、そういった当たり前のことを忘れがちだけど、それができているか?っていうのを何度も何度も言われて」と回顧。当たり前のことをやり続ける“習慣”こそが、黒田のもっとも大切にしていた哲学だと明かした。

そして、黒田のマネジメントだけではなく、町田はピッチ外でもクラブを盛り上げるための様々な取り組みを実施。特に力を入れたのが、イベントなどの“エンタメ革命”だった。J2初となる新国立競技場での試合開催では、ド派手な演出で観客を沸かせ、ホームゲームではスタジアムを城に見立て、RPGの世界感を再現。まるでゲームの主人公になったようなワクワクする仕掛けを散りばめ、サッカー以外の側面からもスタジアムに行ってみたくなるアプローチを行っていた。スタジアム近くの広場では本格的な夏祭りを開催するなど、町田の取り組みは実を結び、昨シーズンの観客動員は前年比229%もの増加率を達成。J2の平均観客数も上回った。

ピッチの内外で革命を起こし、ファンを増やしてきた町田は、今月末から開幕するJ1リーグで、FC東京や東京ヴェルディと共に東京勢として新たな戦いへと挑むことになる。激戦が必至の今シーズンについて、太田は町田の順位を5位と予想。昇格したチームが翌シーズンに優勝した過去の事例などを挙げながら、「今いる選手たちのポテンシャル、あとは黒田さんのマネジメント含め、十分にやれると思うんですね」と期待を寄せた。

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