『コタツがない家』小池栄子“万里江”と吉岡秀隆“悠作”が全面抗争!相手への気持ちを分解して見つけた一番大事な思いとは…

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『コタツがない家』小池栄子“万里江”と吉岡秀隆“悠作”が全面抗争!相手への気持ちを分解して見つけた一番大事な思いとは…

深堀家最大の危機が勃発! 12月13日放送の『コタツがない家』(日本テレビ系、毎週水曜22:00~)第9話は、悠作(吉岡秀隆)が突きつけた離婚に対して、万里江(小池栄子)、順基(作間龍斗)、山神達男(小林薫)の連合軍が奮闘。悠作が優勢の状態が続く中、万里江が下した決断とは?

順調にペンを走らせる悠作の離婚漫画

収入もない、家事もしない男と結婚するメリットってなんなの? そう聞かれると、正直そんなのない気がする。せめて愛嬌があるとか、夢を追いかけているとか、パートナーの自己肯定感を上げるような言葉を常にくれるとか、それぐらいのことはしていてほしい。万里江の周囲に二人の離婚に反対する人がいないというのもうなずける。

ただ、フリーターにおける「夢」と同等のものとして、悠作には「漫画」があった。今回はそのせいで離婚を申し込まれているのだからちょっと皮肉な展開だ。悠作、久々に筆が乗っている高揚感で、ランナーズハイならぬ“漫画ハイ”になっている気がする。そしてそれがさらに“離婚ハイ”につながってしまっている。

もちろん離婚は悪いことではない。けど、それは双方の同意の上で成り立つこと。万里江にその気はないんだから、ちょっと主張が一方的すぎる。悠作が描いている漫画のタイトルがちらっと映ったが、それは本ドラマのタイトルでもある「コタツがない家」だった。やっとタイトルを回収するときがきたか。タイトルに込めた真意も、きっと最終回で明かされることだろう。

漫画のネームをみた土門幸平(北村一輝)は、その出来を絶賛。ただ、離婚経験者としては本当に離婚をしてしまっていいのかという点は気がかりのよう。50歳を過ぎて悠作が一人でやっていけるかはたしかに心配。そのことを悠作は自覚しているんだろうか。

とにかく離婚に関する面白いネタが我が家になければ、離婚に突き進むことを本人もあきらめるのではないか。悠作の挑発に乗っていつも通り言い争いをしないよう、万里江は達男と順基に作戦をもちかけた。しかし、全部裏目に。やることなくこと面白くなってしまうのが深堀家なんです……。

でもこのシーンをみて、なんでも笑えるネタにしてしまおうという悠作の意欲と創作力は、立派な才能だと思った。きっと万里江も同じ気持ちのはず。こんな悠作がみたくて20年間も養ってきたんだから、情熱を燃やしている悠作に対して心に感じ入る部分が実はあったと思う。万里江は悠作の一番のファンだから。

万里江にとって悠作は生きるエネルギー

現実問題として離婚は面倒なことも多い。代表的なものは名字の変更。選択的夫婦別姓が認められていない今、改姓の手続きは相当面倒臭いし、その大半の面倒臭さは慣習として女性が担わされている。順基にとってもデメリットは大きいはずだけど、悠作についていけば名字は変わらないと瞬発的に万里江を挑発する態度は相変わらず。まぁ、たしかに悠作だけが出ていくと思われていたけど、順基にはどちらの親につくか選ぶ権利がある。夫婦間の問題といえど、子供や親族、ペットなどひっくるめた問題として考えなくてはいけないのが婚姻制度ということか。

いろいろ思いを巡らせながら、ついに万里江は悠作のために離婚をすると決意。相手のためを思って別れるという決断は現在放送中の『マイ・セカンド・アオハル』と同様の展開だけど、結婚前と後では別れの重みがやはり違う。結婚すると別れがより一大決心になってしまうのってやはり書類関係、血縁関係の面倒臭さだろうか。

万里江いわく、悠作への気持ちは出世魚。モジャコ→ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリのように、成長とともに姿が変化し、味わいも変わってきたという例えだろう。20年経った今はワラサぐらい成長したそう。そんな悠作への気持ちを図解してみると、好き15%、大切20%、同志20%、心配20%。そして最後に残った残りの1/4が、実は万里江にとっては一番重要な思いだった。残り25%、つまり一番多くを占めていたのが、自分にとって生きるエネルギーだということ。

悠作がダメでクズでだらしなくいてくれたことが、自分を輝かせてくれたと気づいてしまったのだ。離婚回避の着地としては共感度が低いけど、ダメ男を愛する女性の心理ってそうなんだろうか。ただ、万里江が悠作のために離婚するのではなく、自分のために離婚しないと選択したのはあっぱれだと思った。今までたくさん自己犠牲にしてきたのだから、これぐらい自己中心的になったっていいんだよ。それに離婚しないほうがこの家族は万事うまくいくのは目に見えている。悠作の漫画については、こんなに面白いネタが転がっている家なんだから、その家族の日常を綴るギャグ漫画を描けばいいと思う。

9話は特にピザを使って万里江の気持ちの内訳を示したシーンの演出、そして達男がワラサを釣って帰ってきた展開がとても鮮やかだった。悠作への気持ちを具現化したピザとワラサ。その両方を万里江は噛み締め味わったことになる。きっと、とびきりおいしかったに違いない。そしていつか、笑いながらブリを食べる日が来るんだろう。

雨降って地固まる。そんな展開となったけど、まだ1話分残っている。さぁ、深堀家は最後にどんな大暴れを見せてくれるのだろうか。ゴングが鳴り響く食卓シーンを楽しみに待ちたい。

(文:綿貫大介)