『コタツがない家』母親は子育てを優先すべき?小池栄子“万里江”を苦しめる「母性神話」と作間龍斗“順基”の遅れてきた反抗期!

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『コタツがない家』母親は子育てを優先すべき?小池栄子“万里江”を苦しめる「母性神話」と作間龍斗“順基”の遅れてきた反抗期!

順基(作間龍斗)、荒ぶりすぎだろ! 11月8日放送の『コタツがない家』(日本テレビ系、毎週水曜22:00~)第4話は、深堀万里江(小池栄子)の息子・順基のメイン回。進学問題と恋愛関連でもはや自暴自棄状態に! 夫の悠作(吉岡秀隆)と父・山神達男(小林薫)にも新事実が発覚。万里江は深堀家の男たちにどう立ち向かう?

どうなる順基の将来、金は達男が出す?

前回、指定校推薦の面接で面接官を挑発した順基。もちろんこれで推薦がとれるわけがない。学校側からしたらメンツは丸つぶれだし、今後推薦枠を減らされることだってあるだろう。何やってくれたんだ。

一方、悠作はファンだという20代の女の子とのメールや電話のやりとりで気持ちが盛り上がっていた。編集者の土門幸平(北村一輝)は悠作にあてがっていたファンの女の子だけど、これって土門がお金かけずにキャバクラ接待しようとしたってこと? ホモソーシャルな男同士のノリって当たり前に描写されちゃうんだよなぁ。まぁ土門みたいな仕事がデキる男って、こういった手段も駆使しながらのし上がってきたんだと思う……。

もちろんこれは深堀家の議題となる。まず万里江が順基を問い詰め、浪人させるお金はないと再通告すると、順基は達男の通帳に700万ある事実を暴露。達男、全財産を詐欺被害で失ったわけではなかったよう。「700万と年金だけで老後の生活が安泰といえるか?」と言葉を返す達男。まぁたしかに一流企業で働いて実直に生きてきた人からするとそうなるか。

このこじれた話のタイミングで悠作のガラケーが鳴ることで、悠作の浮気疑惑も露呈。3人の男たちがそれぞれの罪を追求しあって議論をすり替え、自分に火の粉が振りかからないようにする様は笑えた。話が目まぐるしすぎる! 翻弄される万里江、どうする?

翌日、順基は屋上に同級生の原木田れいら(平澤宏々路)を呼び出した。意味ありげな場所、というれいらのツッコミはナイス。屋上って昔から告白スポットだから。順基はれいらが優しく接してくれることを、自分への好意か、漫画家の悠作に近づいてプロへの足がかりにしたいかのどちらかかと思いこんでいた。

そこに「友情」という想像が一切できなかったのは順基のだめなところ。男女の友情はどちらかが恋愛感情を抱いた時点で成立が難しいけど、好意の勘違いはうぬぼれだ。順基はまんざらではないと思っていたのだから、完全に失恋が確定。正直青春ラブコメ要素も期待していたのでこの2人がくっつく展開もアリだと思っていたけど、そうきたか。すごい脚本!

万里江を苦しめる日本社会の「母性神話」

失恋により荒ぶる順基は、矛先を万里江に向ける。急に進学しないと言い出すし、親心を訴える万里江にそもそも子育てを最低限しかやってなかったくせにと、ダメ母ぶりを攻撃する言葉を次々と投げつけてくる。自暴自棄に攻撃、これは遅れてきた反抗期がすぎる!

まず、子育てに対して協力的ではなかった悠作は全く非難されず、万里江ばかり責められるのはおかしい。子育ては母親がするものだって思い込みすぎだろ! 一家の大黒柱として働いて、家事も育児もやってきたことに嘘はないのに、「最低限」だった攻撃するなんてあまりにも酷だ。責めるなら悠作を責めてくれ。

雑誌のインタビューの「仕事も家庭も手を抜かずに両立した誇り」という見出しにも怒ったようだけど、それも編集サイドがつけた見出しだからな……。というのも、日本の女性は未だに仕事も家庭も両立しないと一人前として認められない。政府が進める「女性活躍推進」だって結局、(家事も育児もした上で)仕事でも輝いてね、という隠されたカッコ書きが存在している。だからメディアは両立した女性を担ぎ上げてロールモデルだといわんばかりに高らかと掲げてくる。万里江もメディアからその一端を担わされたにすぎない。

順基が「自分の子供がこの環境下でまともに育つと思ってたの?」と言い放ったあとの万里江の表情が忘れられない。一瞬で持っていかれた。驚きと後悔と悲しみを包含したような顔だった。こんなにも愛しているのに伝わらないんだ、という顔。いやいや、万里江、十分やってきたよ……。

母親は自分のことよりも子供を優先することが母性愛で、女性には「母性本能」が備わっている。そんな「母性神話」が日本だと未だに根強い。母親が育児をするのは当たり前で、それが最善。って、そんなわけあるかい! 順基、失恋でつらいのはわかるけど、いろいろな家庭、いろいろな親がいて当たり前。あなたは十分に恵まれています! いつかわかるときがくるよ。

また、4話では母の貝田清美(高橋惠子)の住まいや暮らしぶりが明らかになった。庭で季節の花を手入れしたり、梅酒をつくったり。良質な「ていねいな暮らし」系番組を見ているかのような気分になった。そしてこの家には、コタツがある。万里江がコタツに入るシーンは今回がはじめて。これで癒やされただろうか。英気を養い、次の戦いに備えてくれ!

(文:綿貫大介)