日本代表の脅威になる中東サッカーの未来予想図!大型補強が進むサウジアラビアの国家的な戦略とは

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日本代表の脅威になる中東サッカーの未来予想図!大型補強が進むサウジアラビアの国家的な戦略とは

10月14日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)は、ネイマールらの移籍で話題のサウジアラビアサッカーについてトークが展開した。

この夏の移籍市場で大きな話題となったのが、潤沢なオイルマネーを武器に破格の移籍金と年俸でスタープレーヤーたちを自国のリーグに掻き集めたサウジアラビアだった。カリム・ベンゼマがアル・イテハドに、ネイマールがアル・ヒラルに移籍した他、合わせて20名以上の世界的な選手がサウジアラビアのサウジ・プロフェッショナルリーグに移っている。

こうしたサウジアラビアによるスター選手の獲得には、MCの勝村政信も「もうすごいことになっているなと。これからどんどん増えてくるでしょうね」と予想。解説の福田正博も「“年金リーグ”みたいな一線を超えた選手が行くということとはちょっと違う。バリバリやれる選手がこれだけ行っているというのが驚きですよね」と、各国の代表クラスの選手たちが移籍していることに驚きを隠せないでいた。

1990年に創設されたサウジアラビアのサウジ・プロフェッショナルリーグは18チームが1部に所属し、現在はサッカーが国技とも呼べるほどの盛り上がりを見せている。サウジアラビアの王室とも繋がりがあり、日系企業の中東進出のサポートを行っている鷹鳥屋明が、そんな現地のサッカー熱をレポート。サウジアラビアのリヤドからリモートで番組に参加した鷹鳥屋は、大きな試合は6万8000人以上を収容できるキング・ファハド国際スタジアムでもチケットが完売するほどの人気だとし、「2018年には女性もスタジアムに足を運べるようになったので、最近は女性のサポーターもよく見かけるようになりました」と報告した。

公共の場で女性の行動が制限されるイスラム社会において、女性のサッカー観戦の解禁は画期的なこと。厳しい規制に変化をもたらすほどのサッカー人気に、かつて日本代表としてサウジアラビアを訪れたことのある福田は「ほとんどスタジアムに人がいないし、当然女性もいなかった」と当時との違いを指摘し、「観光する場所もあまり記憶にないんですよ。オフのときにラクダに乗りに行ったくらいしかなかった」と振り返った。

しかし、現在のサウジアラビアは、新しいビルやイベント施設の建設ラッシュがはじまるなど、観光立国としても急成長中。サウジアラビアでは限りある石油に依存した経済から脱却するための戦略として、2016年に「サウジビジョン2030」という国を挙げたプロジェクトを立ち上げており、観光推進やサッカーの強化は、その一環なのだという。

今年の6月には、これまでスポーツ庁が管理していたプロリーグ主要4クラブの経営権を政府の公的投資基金に移動。鷹鳥屋は「これによって競争力や売上高が全部大きくなり、将来的にサウジアラビアリーグを世界トップ10のリーグにしようという動きを今見せております」と内情を伝え、「全体的にサッカーの人気が根強いですから、そこのテコ入れを政府が行うのというのは、ある意味で当然の流れだったと思います」と分析した。

また、サウジアラビアだけではなく、他の中東の国々も注目を集めている。イニエスタはヴィッセル神戸からUAEのクラブへと渡り、日本代表の谷口彰悟はW杯後からカタールのクラブで戦い続けていた。これまで多くの海外クラブでキャリアを積み、現在はUAEの2部でプレーする脇野隼人は、中東サッカーの現状について「日本とは待遇も違いますし、環境もいい。芝がきれいですね」と言及。一方で、「シーズン中のクビというか、契約解除みたいなのがすごく多い。半期で入れ替えがあり、その前に切られる選手もいます。選手が半分以上は変わるので、結果を残さないといけない」と、中東サッカーの厳しさも伝えていた。

熾烈な争いの中で着実に実力をつけている中東のクラブと日本のJクラブが直接対決するのは、アジアチャンピオンズリーグになる。福田は今シーズンから外国人枠が5人+アジア国籍の1人に拡大されたことに触れ、「外国籍の占める割合が多くなるので、資金力のあるチームでいい外国籍の選手が取れたら、やっぱりそれは強いですよね。そうなると、中東勢はかなり脅威になるし、もしかすると全く歯が立たないくらいの力関係になる可能性もある」と示唆。ネイマールやベンゼマといったスター選手と試合ができる喜びはあるとしながらも、「勝ち負けに関して言うと、かなり厳しくなってくるっていうのは現実じゃないですかね」と危惧していた。

勝村が「リーグが強くなれば代表も強くなるっていうことですからね」と話す通り、実際にカタールW杯では、サウジアラビアが優勝したアルゼンチンをグループリーグで破っている。超一流選手の増加でリーグのレベルが上がれば、これまで以上に日本代表の脅威になることが予想される。

国を挙げてサッカーの強化に挑むサウジアラビアは、将来的にUEFAチャンピオンズリーグへの参入も目指しており、チャンピオンズリーグ2024-25では、サウジ・プロフェッショナルリーグの優勝チームがワイルドカード制度で参加する可能性が浮上。他にも、FIFAクラブワールドカップ2023やAFCアジアカップ2027など、サウジアラビアではサッカーの国際大会の誘致を次々と進めている。

さらに、サウジアラビアは自国でワールドクラスの選手を育成すべく、政府が約625億円の費用をかけてアカデミーを設立。「全土にある小学校を中心にサッカーの指導者を派遣して、6歳から12歳くらいの大半に何百万人単位でサッカーの英才教育をするプロジェクトがある」という鷹鳥屋の説明に、福田は「強くなるんじゃないですかね。日本にとって大きな脅威にこれからなっていくのはもう間違いないですね」と確信し、勝村も「サウジ恐るべしですよ」と警鐘を鳴らしていた。

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