レジェンド選手たちが証言!セルジオ越後と『キャプテン翼』の高橋陽一が与えたサッカー界への影響

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レジェンド選手たちが証言!セルジオ越後と『キャプテン翼』の高橋陽一が与えたサッカー界への影響

10月7日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)は、日本サッカー殿堂入りを果たしたサッカー解説者のセルジオ越後と、漫画家の高橋陽一が登場。MCの勝村政信や解説の北澤豪らと共に、日本サッカーの歩みや将来の展望などについて語った。

日本サッカー殿堂とはサッカー界の発展に尽力した人物を表彰するもので、受賞者には、釜本邦茂ジーコ岡田武史など、錚々たる顔ぶれが並んでいる。そして、今年の6月に新たに殿堂入りしたのがセルジオと高橋だった。

セルジオは、日系二世として1945年にブラジル・サンパウロに生まれ、18歳で地元の名門・コリンチャンスと日系人初のプロ契約を締結。個人技と俊足を武器に右ウイングとして活躍し、1964年の東京五輪ではブラジル代表の候補にも選ばれている。1972年に来日してからは、JSL(日本サッカーリーグ)の藤和不動産でプレーし、引退後はサッカーの普及と選手の育成に尽力。中でもセルジオが指導員として力を振るったのが、日本サッカー協会公認の「さわやかサッカー教室」だった。

セルジオ越後
セルジオ越後

全国を回って子どもたちを指導するこの教室は、1000回以上開催され、延べ60万人が参加。その中には、三浦知良中山雅史中田英寿小野伸二、日本代表の監督を務める森保一など、後の日本サッカーを牽引する人物も数多く参加していたという。実は、教室の出身者だった北澤も「めちゃくちゃ楽しかったですもん。今まで厳しく教えられたサッカーとは違う、心から楽しめるサッカー教室だったっていう印象があって。かなりインパクトありましたね」と振り返った。

実際にセルジオ流の選手育成法は独特で、練習では学年混同のチーム編成を採用。小学1年生から6年生まで、別の学年の子どもたちがそれぞれ同じチームとなることで、経験を積ませるというものだった。セルジオは「“(同じチームに)1年生を入れたらかわいそう”じゃない。1年生はね、6年生と一緒にやるだけで喜んでいるんだよ。技術の差があるけども、一緒にさせなかったら覚えていかない」と主張。また、指導者が指示を出すのではなく、子どもたち自身が考え、工夫することに重きをおいているという。

セルジオの指導を受けた元日本代表の城彰二は「誰かが“ボールをどういう風に蹴ったら、あそこ飛ぶんですか?”って聞いたら、(セルジオが)“どんな感じでもいいんだよ。あそこにポンッと蹴れば飛ぶんだよ。それを考えて”って言われたのをすごく覚えてて。衝撃を受けました」と証言。北澤も指導者中心だったサッカーから、今は選手中心のサッカーになってきているとし、「さわやかサッカー教室からそんな教えでしたからね。また、時代が変わって戻ってきたっていう感じがしますよね」と感慨深げに話していた。

そんなセルジオと共に殿堂入りした高橋は、言わずとしれたサッカー漫画『キャプテン翼』の作者として知られている。東京都葛飾区に生まれた高橋は、1980年に漫画家デビューを果たし、わずか20歳で『キャプテン翼』の連載をスタート。1983年にはアニメもはじまり、日本に空前のサッカーブームを巻き起こした。

高橋陽一
高橋陽一

その勢いは日本だけに留まらず、海外にも波及。コミックスの発行部数は世界累計で9000万部を超え、アニメは50か国以上で放映。プロサッカー選手を志す世界中の子どもたちに夢を与え続けてきた。元日本代表の中田は「『キャプテン翼』がなかったら僕のサッカー人生はなかったでしょうし、日本自体もプロ化など、発展するのが遅れていたと思う」と明言。元イタリア代表のデル・ピエロも「翼は僕のサッカー人生の原点なんだ。イタリアでも本当に人気で、絶対に見逃したくなかったから、子どもたちの間で“夕方4時の放送”が合言葉になるほどだったんだ」とイタリアでの“キャプ翼人気”に言及した。

デル・ピエロは『キャプテン翼』の好きなプレーにも触れ、「立花兄弟の技で、1人がピッチに寝そべり、それを土台にもう1人がジャンプして空中からゴールするプレーはとても印象に残っているよ」と、“スカイラブハリケーン”をピックアップ。「でも、僕がよく覚えているのは、翼が長いドリブルをするシーン。5分くらい走り続けて、ピッチは1kmくらいあったんじゃないかな。僕はあれが大好きだったんだ」と続けた。

高橋陽一、セルジオ越後、北澤豪
高橋陽一、セルジオ越後、北澤豪

また、パリ・サンジェルマンが来日した際には、リオネル・メッシキリアン・エムバペネイマールらの前で高橋が主人公の大空翼を描き上げ、スター軍団を釘付けに。そんな世界にも絶大な影響を与えている『キャプテン翼』は、サッカー界におけるAEDの普及にも貢献。登場人物の1人であり、心臓に持病を抱える天才プレーヤー・三杉淳が、心臓病予防啓発の公認アンバサダーとなっている。

それぞれの活動を通じてサッカーの普及に取り組んでいるセルジオと高橋は、日本サッカーが発展を遂げたターニングポイントや、さらなる発展のために必要なものについてもトークを展開。Jリーグ開幕と日韓W杯をターニングポイントとして挙げたセルジオは、日本が今以上に発展するためには日本人指導者の海外挑戦が不可欠だとし、「森保監督がこんなに頑張ってるのに、自分のライセンスで海外行けないよね。やっぱりそれを認めてくれるっていう努力をもっとしてくれたらいいなっていう感じがしますよね」と訴えた。日本のS級ライセンスは、欧州などとの互換性がないため、アジアを除く海外での指導ができないという課題がある。

竹崎由佳、勝村政信、セルジオ越後、高橋陽一、北澤豪
竹崎由佳、勝村政信、セルジオ越後、高橋陽一、北澤豪

一方、高橋はサッカーの専用スタジアムの必要性に触れ、「ファンもサッカーの見方が変わってくると思いますので、世界に近づくためにはサッカー専用スタジアムがもっと身近にあって、すぐ見れるっていう環境が欲しいなとは常々思っていました」と主張。その言葉通り、自身がオーナーを務める南葛SCは、JRの新小岩駅前に専用スタジアム建設を計画中だという。

さらに、高橋は「早く日本の優勝が見たいので、次のW杯で優勝してほしいですね」と期待を寄せ、セルジオも「2050年に優勝するっていうテーマがあるんですけども、もっと毎回狙えばいいんですよ。毎回狙うから伸びていくんですよ。そういう近い目標も刺激的になっていいんじゃないかなと思うんですね」と同意していた。

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