森本慎太郎​​“山里”に涙、高橋海人​​“若林”が涙…『だが、情熱はある』ブレイク前夜と道路に寝転がった夜

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森本慎太郎​​“山里”に涙、高橋海人​​“若林”が涙…『だが、情熱はある』ブレイク前夜と道路に寝転がった夜

人に会うたびに「ねえ、今幸せ?」と問い続けた谷勝太(藤井隆)が、ステージで叫ぶ。

「私、今幸せかもー!」「私、生きてるー!」

この言葉は、苦悩する若林正恭King & Prince高橋海人)にも、我々にも突き刺さる――。

5月14日放送の『だが、情熱はある』(日本テレビ系、毎週日曜22:30~)第6話は、「幸せ」と感じるにはまだほど遠いふたりの男が、“光明を掴みかける瞬間”を描いた。

「売れる」ためにプライドを捨てる

山里亮太SixTONES森本慎太郎)は、しずちゃん(山崎静代/富田望生)と南海キャンディーズを結成。しかし、山里はボケたい気持ちを捨てきれず、Wボケのようなスタイルに。笑いをとるまではいたらず、苦悩の日々が続く。

「ボケたい」「面白いと思われたい」「俺は天才」。頭の中でうごめく自分の欲望をおさえ、山里はある決断をした。それは、ツッコミに回るという選択だった。「売れる」ために……。

山里がツッコミになって初ステージの日。舞台袖にて、しずちゃんに「じつはね、このネタ書くの、最初すっごい嫌だったのよ。血の涙を流しながら書くような感覚。でもね、途中で気づいたのよ。『あれ? 書きやすいぞ』って。ネタ合わせしても楽しかった」と伝えた。

舞台で、南キャンのネタは爆笑をかっさらう。起死回生の漫才で、ふたりはコンビとしての命を繋ぎ止めたのだ。

その後、南キャンは賞レースで結果を残すが、仕事が増えることはなかった。ふたりは路上漫才をすることに。すると、街ゆく学生に拍手をもらった。南キャンにとって「これでいいんだ」と思えた瞬間だったのかもしれない。

山里は「やっぱり、南海キャンディーズはしずちゃんだよ。俺は面白い君の隣にいる人でいい。天才じゃなくていい」とポツリ。すると、しずちゃんは「私は山ちゃんのこと天才やと思ってるよ」と返した。

まだ結果には結びついていないが、きっとこのとき、山里は暗闇に輝く“豆電球ほどの光”を掴んだのだと思う。やがてその光は闇をかき消すほどの大きな光となる……。

ナイスミドルがテレビに出演!?

定期的に通っていた『エンタの神様』のオーディションに合格し、テレビ出演が決まったナイスミドル。若林は嬉しくて嬉しくて……橋本智子(中田青渚)​​にも教えた。本当はまっすぐに伝えたいけど、“ついで”のように報告。ひねくれて、カッコつけて、ダサいけど、でも、“こうなっちゃうよな”と、納得して笑ってしまう。

収録はしたものの、一向にナイスミドルのネタは放送されなかった。番組スタッフ曰く、ストックからラインナップを考えるらしく、そのうち流れるらしい。でも、いつになるんだ……。

谷が持病で数か月入院した後、ステージに復帰した。本文の冒頭につながる場面だ。キラキラして舞台に立つ谷の“生き様”を見て、若林は涙が止まらなかった。「今、幸せ?」と谷に何度も胸をノックされた気分だったのかもしれない。

帰り道。智子からのメールで今日も『エンタ』の放送がなかったことを知る。若林は道路の真ん中に寝転び『車に轢かれたらテレビに出れるかな』とメールを打ち込む。そして、天に向かって「くそっ! 俺はなんなんだよ!」と胸にある黒い塊を吐き出した。光を掴みかけたのに、その光はスッと目の前で消えて、若林の心にさらなる影を落とした。

感情と向き合う新しいかたちのドラマ

今回のふたりの物語は、まったく違う涙が流れた回だった。

山里は、あともう一歩で大ブレイク。特にボケ・ツッコミを明確にした初漫才シーンは、森本も富田も、あのころの南キャンそのものだった。ネタが面白いのは前提として、ふたりが山里としずちゃんの特徴をよく捉えていたと思う。

“笑えるのに涙が出てきてしまう”不思議な感情だったが、それは本編にて苦しむ山里をずっと見てきたからだろう。だから、お客さんの“笑い”で、その苦労が報われたのが嬉しくてたまらなかった。路上でしずちゃんと交わした言葉もすごくいい。森本同様に、私たちも山里の人生を共に生きているのだ、と実感した瞬間だった。

一方で、テレビ出演を掴みかけたが、叶うことはなかった若林。毎週、ナイスミドルのネタが映らないたび、若林の心から「バキッ」と音が聞こえてきたような気がする。道路で寝転んで咆哮した姿を見るのが辛かった。​​

そんな中で、谷のステージを見て泣いていた姿は印象的だった。若林を演じる高橋の目にじわっと涙が溢れて、一筋の涙がスッと流れる姿はもらい泣きしたし、何より谷のステージを見て、少しニヤリとした彼の表情がたまらなく美しかった。

本作は、若手時代のふたりの苦悩を肌で感じ、見る人も自分と対面し「考えさせられる」ドラマだと思う。こんなリアルな感情を引き出される作品には、そうそう出会えない。それは、他のキャストやスタッフはもちろん、主演を務める高橋と森本が、若林と山里として存在しているのを“当たり前”にした努力があるから。ふたりが違和感なく演じるから、物語に没頭できるのだ。

これからも、高橋と森本が駆け抜ける姿を見届けたいと思う。視聴者にだって、情熱はある――。

次回は5月21日に放送。ナイスミドルと南キャンは『M-1グランプリ』に挑戦する。

文・浜瀬将樹

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