仲野太賀 、石崎ひゅーい&KAƵMAの対応力を絶賛「地肩の強さを感じます」【連載PERSON】

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人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」。今回は、土曜ナイトドラマ『ジャパニーズスタイル』(テレビ朝日系、毎週土曜23:30~)で主役・ 柿丘哲郎 を演じる仲野太賀 さんが登場します。

『第45回日本アカデミー賞』優秀助演男優賞、『2022年エランドール賞』新人賞など、輝かしい成績を残している仲野さん。近年ではドラマ『コントが始まる』『#家族募集します』、そして主演を務めた『拾われた男』『初恋の悪魔』など、記憶に残る芝居で存在感を発揮しています。

仲野さんが出演する『ジャパニーズスタイル』は、テレビ朝日初となる“シットコム(シチュエーションコメディ)”。温泉旅館「虹の屋」を舞台に、30分間ノンストップの本番ほぼ一発撮りドラマが客前で繰り広げられていきます。

役者としても、作品としても“挑戦”という言葉がふさわしい『ジャパニーズスタイル』 。仲野さんに、本作にかける思いをお聞きしました。

“大変”なのに“楽しい”役者としての挑戦

――シットコムと聞いて、どんなことを思いましたか?

なかなか日本ではなじみがないけど、海外ではよくあるスタイル。それに挑戦できるというのは、とても素敵なお話だなと思いました。

――実際にシットコムに触れてみて印象は変わりましたか?

大変ですけど、演劇とも違うし、映画やいつものドラマとも違うので、“楽しい”というのが一番大きいです。 演劇だと、「1か月稽古をして1か月本番」というリズムが多いと思うんですけど、このドラマは、朝9時くらいから夜の7時くらいまで1日稽古をして次の日が本番。しかも1回収録をしたら終わりなので、そのリズムもすごく新鮮です。あと、みんなが初めてのことに挑戦をしているので、ふだん感じる現場の空気とは違う高揚感がありますね。緊張感もあるけど、特別なことをしていると実感しています。

――ワクワクしている様子が伝わってきます。

作品ごとに“チューニング”というものがある気がしていて、そういう意味では、シットコムは独特な立ち位置にあるなと思います。そこにチューニングを合わせていくのもすごく楽しい作業で、ほかの現場ではできない、貴重な経験をさせていただいているなと思います。

――脚本の金子茂樹さんとは『コントが始まる』でもご一緒されています。仲野さんが思う金子さんの脚本の魅力は?

会話がすごく面白いです。台詞一つひとつが、キャラクターの個性となっていて、会話で物語が膨らんでいくというか。キャラクターに厚みがある気がしますね。

――仲野さんが演じる哲郎については、どんな印象を受けましたか?

設定も丁寧に描かれていて、台詞を言っていても楽しいですし、ここまでクズの役ができることもないので(笑)、楽しく演じさせていただいています。

――実際にお客さんが入ると、緊張も増すものですか?

毎回、前説に芸人さんが来てくださるんですけど、前説の芸人さんがウケればウケるほど、僕らは“むちゃくちゃウケてる……”と緊張が高まります(笑)。でも、芸人さんたちが盛り上げてくださるから、お客さんのリアクションも良くなって笑ってくださるし、力になっているなと思います。

――台詞量が膨大だそうですね。

覚えるのは苦労しています。(本番)ギリギリまで台詞が入っていないこともあるので、スタッフのみなさんはヒヤヒヤしながら見ているのかなって(笑)。

――30分でずっぱりだとお聞きしましたが、体感としてはいかがでしたか?

あっという間なんですが、1日稽古をぎっしりやりながら、本番になってギリギリ芝居が立ち上がっていくというか……。時間がない中、キャストもスタッフも労力と熱量をこめてやっています。

――反省点はありましたか?

もう少し時間があれば、いろいろやれることもあるのかなと思うんですけど、反省する間もなく、次の撮影がやってくるので、終わってからの反省はまるでしていないです。次の台詞を覚えることで精いっぱい(笑)。

――シットコムだと、事前の準備や役作りもドラマや映画とは変わるものなのでしょうか。

役作りをする時間があまりない、というのはあるかもしれないです。だから瞬発力が鍛えられるし、紡いで編んでいく作業というよりは、これまで自分が培ってきたものをフル動員して、30分にぶつけています。とにかく力が入っていますね。

――時間がない中でも、共演者の方と、どんなコミュニケーションをとっていらっしゃいますか?

みんな大変なので、その大変さから逃れるように、まったく関係のない話をしています(笑)。差し入れをしてくださる方が多くてその差し入れの話をしたり、他愛もないゲームをしたり……。しずるのKAƵMA(浮野奏太役/KAZMA)さんがムードメーカーになってくれていて、みんなを繋いでくださるので、本当にKAƵMAさんがいてくれてよかったなと思います。みんながいっぱいいっぱいの中、場の空気を朗らかにしてくれるので助かっていますね。

――仲野さんから見て、“ほぼ一発撮り”に強いと思った共演者は?

ふだんお芝居をしている人間でも大変なのに、石崎ひゅーい(浅月凛吾郎役)くんは、堂々と魅力的に演じてくださるので、毎回すごいなと思っています。普通に役者さんと接している感覚というか……。冷静に考えれば、ひゅーいくんはミュージシャン。僕たち以上の挑戦をしているような気がしますね。

――異業種といえば、KAƵMAさんはいかがですか?

ご自宅でもめちゃめちゃ台詞の練習をされているみたいで、KAƵMAさんもひゅーいくんもすごく安定していると思います。なぜか、ふだんお芝居をしない人たちの方が安定感がある(笑)。地肩の強さを感じますね。

――影島駿作役の要潤さんが、公式コメントで「今の時代にやるからこそ、新しいものになるんじゃないかと思っています」とおっしゃっていました。実感はありますか?

そうですね。まず1日で1本を撮り終えることもないですし、倉庫で舞台セットを組んで、お客さんを呼んでやるということもない。これから、こうした選択肢が増えたらいいなと思います。

――これまでにないような“疲労”も感じるのでは?

1、2話を見ていただくと分かると思うのですが、全員汗だくですし、めちゃくちゃ疲れますね。稽古の時点でみんなヘロヘロなので、本番日は“やるしかない”と満身創痍な感じ(笑)。終わったあとは解放感がありますね。

仕事もプライベートも“器の大きい人間”に

――ここからは、仲野さんとテレビとの関わりについてお聞きしたいです。影響を受けた番組やよく見ていたテレビ番組を教えてください。

俳優になったのは、ドラマや映画の影響ですが、一番見ていたのは『アメトーーク!』ですね。芸人さんだけがフリートークをしている場って、それまでなかったのかなと思うし、毎回「◯◯芸人」というマニアックなお題で、いろいろ繰り広げる面白いトークが大好きで、ずっと見ていました。特に覚えているのは「ひんしゅく体験!ナダル・アンビリバボー」ですね(笑)。

――TVer含め、配信系の作品はご覧になりますか?

配信プラットフォームができて世界中のドラマが見られるようになったから、世界最高峰のドラマはちゃんと見ておこう、と思って、最近ようやく『ブレイキング・バッド』を見ました。 感想としては、この一言に尽きるんですけど「めっちゃ面白かった」です(笑)。学べることがたくさんあるし、何よりこれからどんどん(日本と世界の作品の)垣根がなくなってくると思うので、自分もいい作品を作りたいと思いました。

――どのタイミングで見ることが多いですか?

移動中によく見ていますね。TVerもよく利用していて、見逃したドラマや番組を見ています。

――役者をするにあたって大切にしている信念を教えてください。

自分の考えをしっかり持って作品に向き合っていきたいし、思ったことは伝えていきたい。あとは「思いっきり楽しむ」ということですね。

――自分の思いを伝えることによって、撮影が楽しくなるというのは繋がっている気がします。

そうですね。僕たちの仕事は、オファーをされて初めて成立するものなので、いただいたものに対して、しっかりと返せるように。僕が携わるのであれば、前のめりに返したいなと思っています。

――役者という仕事を通して、どういう自分になりたいのか、自分自身に対しての夢を教えてください。

お仕事に対しても、人に対しても、器の大きい人間になりたいです。たくさんの人と接する仕事ですから、どうしても自分の小ささを痛感することが多々あるんですけど、いつかは器の大きい人間になれたらいいなと。今は、ろくろで回しながら、ゆっくり大きくしている最中です(笑)。

スタイリスト:石井大
ヘアメイク:高橋将氣
取材・文:浜瀬将樹
写真:フジタヒデ

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