教え子とのあったかい再会 影山貴彦のウエストサイドTV【32】

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教え子とのあったかい再会 影山貴彦のウエストサイドTV【32】

 「コロナの第6波は必ず来る!」と専門家の間で言われ続けられています。その言葉を自らの胸にしっかり刻みつつ、種々の制限が解除された現在、わずかばかり平穏に近づいたかのように見える日々をひとまずの「息継ぎ」として過ごしているところです。

大学の講義も、オンラインから対面へと移行しています。ただし、私が勤務する大学でもそうですが、完全に対面化というわけではなく、履修者人数の多い講義などでは、いわゆるテレビ番組のようにあらかじめ収録したものを学生が受講するスタイルも共存しているのです。売れっ子タレントが総出演するバラエティ番組ならともかく、おっさんの講義に興味を持って遠隔受講してもらう事はなかなか大変です。毎週びっしょり汗をかいています(笑)。

来年3月の卒業式は予定通り行われることになっていますが、その後行われる卒業パーティーは、先だって中止が決まりました。それを伝えたときの教え子の感情を抑えた表情が忘れられません。こういうケース、学生たちにどのような言葉を掛けたらいいのか、とても切ないです。読者のみなさんも、きっと同じような経験をされていることでしょう。

 とはいえ、学生たちと直接触れ合う機会が増えてきたのは、やはり嬉しいものです。オンラインはオンラインで多くのメリットがあるものですが、逆に対面でないと味わえない感動もあります。ゼミの卒業生と、先日こんな再会がありました。

 大阪の放送局で仕事があり、局の受付に出向いたところ、後ろから「影山センセっ!」と呼び掛けられました。マスク姿というのは、なかなか人物の判別に時間がかかるものですね。こちらが年齢を重ねたせいかもしれませんが。目の前の女性が、自分のゼミで教えていた卒業生だと気づくまで、ほんの少し時間がかかりました。

 「〇〇ですっ!」と明るく名前を言ってくれて、すぐに記憶が蘇りました。今、大手映画会社の宣伝担当として活躍しています。「局に宣材(宣伝素材)を持ってきたんです」と、はにかんで言う彼女と、ほんの少しだけ近況報告をしあいました。わずか数分程度、本当に他愛もない話です。けれど彼女の成長ぶり、映画の世界で一生懸命頑張っている様子は、十分に伝わってきました。マスク姿でありますが、「目を見ればわかる」って本当ですね。

 放送局の仕事がオンラインであれば、その日私はその教え子と会うことはなかったでしょう。彼女の方も、もしかしたらデータで映画の資料を送って済ませられたかもしれませんが、きっと担当者への挨拶を兼ねて、局に出向いたはずです。そして偶然の再会が生まれたというわけです。

 大層なことを申し上げるつもりはありません。ただこうした偶然は、オンラインではないはずです。あったかい気持ちに包まれたのは、久しぶりに会った教え子の成長に触れられたからですが、かけがえのない偶然を大切にできる社会が、これからも続きますようにと強く思った瞬間でありました。


執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
毎日新聞等にコラム連載中
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など

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