脱炭素社会へ企業が異業種コラボ どうリサイクルする?

公開: 更新: テレ東プラス

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環境問題、貧困、ジェンダー、働き方...。国際社会は今、数多くの難題に取り組んでいる。こうした中、持続可能な社会の実現のために国連サミットで採択されたのが2016年から2030 年までの国際目標「SDGs」だ。

持続可能な社会・経済を作り上げるために、日本は何ができるのか。BSテレ東では『日経スペシャル SDGsが変えるミライ~小谷真生子の地球大調査』と題し、日本の進むべき道を考えるシリーズを2020年3月からスタートさせた。

2021年3月19日の放送では、脱炭素社会の実現に向けた東レ株式会社の取り組みを伝えた。

ペットボトルから作られた肌着

小売大手のイトーヨーカドーでは、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが進んでいます。店頭でのペットボトルの回収は、利用者にはいまや見慣れた光景です。9年前から始め、2019年度には約3億6500万本を回収しています。

受け付けるのは、ラベルやキャップを外してきれいに洗ったもののみ。手間にも思えますが、利用客がせっせとやるのには理由があります。自動回収機でリサイクルすると、ペットボトル1本あたり0.2円分、50本で10円分のnanacoポイントが貯まるのです。

さらにイトーヨーカドーでは、こうして集めたペットボトルを使った衣料品を開発しました。ペットボトルをリサイクルして作った肌着「ボディクーラー」は1着に使われる繊維のおよそ3割が、回収したペットボトルから作られたリサイクル繊維です。

ピンクやベージュといったカラーバリエーションに加え、ボクサータイプのパンツ、そしてステテコまでとラインナップは豊富。ポリエステル製の従来の商品と着心地が変わらず、しかもリサイクル繊維としては珍しい速乾性や抗菌防臭といった機能も優れているといいます。リサイクルで生産コストは1%前後高くなりましたが、従来のポリエステル製と変わらない価格で販売しています。

リサイクル繊維を開発したのが、繊維メーカー大手の東レ株式会社。脱炭素社会の実現に向け、異業種の大手2社がタッグを組みました。

タッグの理由について、イトーヨーカ堂のCSR・SDGs推進部の小山遊子ゼネラルマネジャーは「回収したペットボトルをお客様にまた提供したいという思いが以前からありました。そんなとき、ちょうど東レさんも環境宣言を発表されており、取り組みをスタートしました」と語ります。

速乾性や抗菌防臭も 東レが開発したリサイクル繊維

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1926年に創業し、日本の繊維産業を牽引してきた東レ。持続可能な社会の構築に貢献するため、2018年に「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」を策定。100%植物由来のポリエステルの開発も行っています。

その東レが昨年から本格販売を始めたのが、ペットボトルを原料にしたリサイクル繊維です。吸水速乾性のある表面がギザギザのものや、保温・遮熱性を高めるため、あえて空洞を作ったものなど、リサイクルでありながら、従来と同じ機能を持った繊維の開発を進めています。

その狙いについて、東レ長繊維事業部の赤江宏一部長は「今からは大量に物が売れる時代ではなく、ブランドを提供する、モノの持つ社会的価値への共感を獲得する。それが私たちの一番の目的で、メーカーもそういう考えのもとで商品を売っていかなければいけません」と話します。

脱炭素社会への共感を広げるために、東レが立ち上げたブランド「&+(アンドプラス)」。ペットボトルを原料とした高品質なリサイクル繊維ブランドで、衣服をはじめとする生活に必要な製品を展開します

「ペットボトルの回収から最終製品までを、物語としてお客様にアピールし共感してもらうことが事業の根本でした。イトーヨーカ堂さん側の求めておられることと、東レがやりたいことが合い、両者で取り組んでやろうとなりました。非常に業界では珍しい取り組みです」(赤江部長)

スーパーがペットボトルを回収し、繊維メーカーが高品質なリサイクル繊維を作る。事業の関係者、いわばステークホルダーを巻き込んだ、循環型のビジネスモデルです。

実は、ペットボトルから繊維を作るには大きな問題があったといいます。

「廃ペットボトルは再生して使うのになかなかハードルが高い。いろいろなゴミや不純物が中に含まれていて、口金という糸を引くところに不純物が詰まって、すぐに系が切れてしまう。このため工業製品の量産レベルには全然達しないんです」(赤江部長)

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高品質なリサイクル繊維を生むペットボトルの洗浄技術

リサイクル繊維の原料となるのは「ペレット」と呼ばれる白い粒。一般的な方法でリサイクルされたペレットと比べると、東レがリサイクル繊維で使うペレットはより白いことがわかります。この白さこそが、高機能な繊維には不可欠です。秘訣は何なのでしょうか。

「まず元のボトルがほぼ100%透明であったりという、日本で回収するペットボトルのレベルの高さがあります。そして洗浄技術とフィルタリング技術。異物を究極にとっていくことでこの白さが生まれてきます」(赤江部長)

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栃木県・鹿沼市にある協栄産業はペットボトルからリサイクル原料を作っています。品質の高さが評価され、一部の大手飲料メーカーがリサイクルペットボトルにこの原料を使っています。

工場では、まず運び込まれたペットボトルの内部にある小石や金属などの異物を振動を使って取り除き、白さを出すために、さらにふるいにかけます。近赤外線で色を見分けて選別を行う「カラー選別」で、色のついたカラーボトルを弾き、白さの基本となる透明のボトルだけにしています。

そして、細かく粉砕。90度以上の熱水と洗浄液を使った独自開発の洗浄技術で、表面についた薄い汚れの層だけを取り除きます。さらにこのとき、水に浮いてくるキャップなどのプラスチックも取り除きます。

こうしてできた、きれいなプラスチック片を高温で溶融、フィルタリング技術によって不純物を徹底的に除去し、繊維の原料となるペレットへと加工。最後に色むらがないか、人の目でも抜き取り検査を行います。高品質な原料作りのための丁寧な作業が、リサイクル繊維の元となり、新たな肌着を生み出しているのです。

「作る側、売る側だけではなく、買っていただくお客様にもこの取り組みに参加していただいている。あまりないモデルですし、これからの新しいビジネスになればいいと考えています」(赤江部長)

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