「幸せ食堂のコロナとの戦い」残業ゼロの幸せな飲食店「佰食屋」の理想と現実:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週火曜夜10時)。6月30日(火)の放送では、コロナ禍に翻弄され、明暗分かれた飲食店を特集。その挫折や躍進を取材する。

時代の寵児だった革命的飲食店のいま

1日100食限定、国産牛ステーキ丼の店「佰食屋(ひゃくしょくや)」(京都市)を経営する中村朱美さん(35)は、売り上げに固執せず家族との時間を優先する新しい働き方を実践し、同番組でも特集した(2019年6月25日放送)。

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材料の国産牛は店でカットすることでコストを抑え、繊維が粗くステーキに使えない部分はひき肉にしてハンバーグに。食品の廃棄はほぼゼロ。低価格で満足度が高いステーキ丼は評判を呼び、午前11時の開店と同時に席が埋まる。

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働き方も他と違う。100食を売り切れば店の従業員は早く帰れるため、残業もゼロ。それぞれの事情に合わせた柔軟な働き方の実現であり、「こういう形のビジネスが世界を救う」と経済評論家も絶賛。中村さんは女性起業家としても注目を浴びている。

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「この働き方をもっと多くの人と共有したい」との思いから、2015年には、国産牛すき焼き定食を出す「佰食屋 すき焼き専科」を、2017年には、肉を使った寿司を出す「佰食屋 肉寿司専科」を開店。2019年6月には、50食で採算がとれる仕組みを取り入れた「佰食屋1/2(にぶんのいち)」を、京都市に開店した。

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メニューは1つの皿にのせたハッシュドビーフとカレー。「これからは売り上げを減らす時代」そんなコンセプトで立ち上げた同店は初日から盛況で、午後1時前に50食を売り切った。「佰食屋」は合計4店舗になり、社員12人、アルバイト12人と幸せな働き方は広がりを見せていた。ところが──。


今年2月上旬「佰食屋1/2」を訪れると、一番混み合うはずのお昼時にも関わらず、お客の数はまばら。「佰食屋だと思ったらカレーだった」との声も。お客が期待していたのは、"佰食屋らしい肉料理だった"という。この日の売り上げは、目標の半分にも届かない23食だった。

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この状況に中村さんは、「これまでの佰食屋のメニューは、肉、米、国産牛という形でやっていたので、少しインパクトが弱くなってしまった。ちょっと失敗したと感じた」と語るが、「メニュー変更を頑張ろうと思っている」と前向きだ。

試行錯誤の末、3月上旬には、薄く切った自家製ローストビーフを敷き詰め、上にわさびをのせたお重「とろにく重」の提供を開始。原点に戻り、「肉」で勝負した新メニューの評判は上々だった。

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しかし、昼の12時を回っても店内はガラガラ。この頃、新型コロナの影響で観光客が急減し、地元民も外出を控え始めていた。佰食屋4店舗の売り上げも、通常の半分まで減少し、中村さんは「いつ終わるかわからない恐怖との戦い。全てをなくすのか、それとも何かをやめて何かを残すのか...究極の選択」と不安を漏らす。

その後も新型コロナの影響は続き、4月11日からは、4店舗のうち3店舗が臨時休業になり、本店はテイクアウトのみの営業に。「4店舗あると家賃だけで100万円を超え、生きているだけで300万〜400万円は消えてしまう」。追い込まれた中村さんは決断を迫られる。その結末は...。そして、取材班宛の手紙に書かれた「私たちは戦いに敗れました」の意味は...。中村さんの挫折と再生を追う。

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コロナ禍で業績伸ばすデリバリー専門レストラン

一方、コロナ禍で業績を伸ばすレストランもある。「ゴーストキッチンズ」(東京・中目黒)は、広さはたった5坪のキッチンだけの店。8つのジャンル、合計約50種類の料理を手がける。注文は全てネットで受け付け、料理は全てデリバリーで運ばれる。接客や宅配をせず効率化し、500万円を売り上げる月もあるという。

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労働環境も飲食業界には珍しく「好きなときだけ働ける」と言う。宍倉竜太さん(36)は、普段従業員としてレストランを支えているが、その他の時間はフードカメラマンとして腕を磨いているという。「食品を撮っているので、食品を作ることでカメラの仕事にも生きる。お金を稼ぐというより経験を積む感じ」と話す宍倉さん。

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「ゴーストキッチンズ」社長の吉見悠紀さん(35)は、大学卒業後に飲食業界を経験したが、そこで見たのは、労働環境が悪いという現実だった。「生産性があまり高くない結果、労働時間などでカバーせざるを得なくなっているのが今の飲食業界」と吉見さん。「飲食でも幸せな働き方」ができるレストランを目指し、同社を立ち上げた。

6月中旬、「ゴーストキッチンズ」は、東京・港区の新店舗に移転した。キッチンは5坪から17坪に拡大。20業態まで増やすことを目指している。コロナによる外出自粛で、売上高は3割近く増加したという。

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「一つの企業だけにいるとその企業の考え方だけに合わせてしまう。(うちは)いろんなところに視野を持つ人が集まっているので、マルチな働き方をしてもらえる環境になっている」と分析する吉見さん。その勢いは止まらない。

新型コロナの影響で一変した私たちの生活。変化にさらされ、否応なく対応を迫られる飲食業界のいまを今晩10時からの「ガイアの夜明け」で放送。どうぞお見逃しなく!

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