芸人から演出・脚本家へ。初のドラマ脚本への挑戦と、コンビ再結成への思い:絶メシロード

テレ東プラス

ごく普通のサラリーマン・須田民生(濱津隆之)が、絶メシを求めて車中泊をしながら週末に1泊2日の旅へ出る物語、ドラマ25「絶メシロード」(毎週金曜深夜0時52分放送)。本作で、初めてテレビドラマの脚本を手がけているのが家城啓之。お笑いコンビ・カリカを解散後、ピン芸人として活動するも引退。以後、舞台の演出・脚本家として熱量の高い作品を手掛けてきた家城さんに、テレビドラマの脚本に挑戦した感想から現在のお笑いへの思いまで、さまざまに語ってもらった。

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自分の行動をそのまま、脚本に書きました

──ドラマの脚本を手がけるのは初めてだそうですが、オファーを受けた時の率直な気持ちを聞かせてください。

「まず、ありがたいなと思いました。過去にも何度かお話をいただいたことがあったんですけど、新しいことにチャレンジする怖さだったり、失敗したらどうしようっていう不安だったりがあったので。あと、夏はあまりお仕事を入れないと決めていて」

──それはなぜですか?

「死ぬまでに何度も訪れるわけじゃない夏を楽しみたいなと(笑)。コンビを組んでお笑いをやっていた頃から6月末もしくは7月中ばには単独ライブを終わらせて、1ヵ月半くらい夏休みを取ってるんです。けど、このお仕事は夏を全部使って取り掛からなければいけない感じだったので、夏休みがなさそうだなと思っちゃったんですよね。

ちょうど同じタイミングくらいに、弟子を取るみたいな話もあって。自分の手掛けた舞台をいくつか観た若い子で、その子とご飯を食べながら親御さんの話とかを聞いているうちに、シャレでもし弟子を取ったとしても"テレビドラマの脚本とかやってないと、親御さんが信用してくれないんじゃないかな"と思い始めたんです。テレビドラマっていうのはインパクトが強いなと思ったので、やってみようと思いました」

──本作のプロデューサーさんの話によると、家城さんはお店へ訪れた際のご自身の行動を、脚本にそのまま落とし込まれたそうですね。

「実際にあるお店のことを書くので、民生がこの店の玄関を初めて見た時にどう思うのか、どういう感じでドアを開けて、どういう目線を送って何を感じるのか。ひとりで座って、ほかのお客さんがいたらどういう気持ちになるのか。そういうことを感じるためにスタッフさんが現場へ連れて行ってくださったと思っていたので、自分の行動をそのまま書きました。

今作では全4話を書かせてもらったんですけど、2話目を過ぎたくらいにほかの方の書かれた脚本を読ませてもらって、もっと自由でよかったんだとも思いましたけどね(笑)」

──舞台などの脚本とドラマの脚本、書き方に違いは感じましたか?

「大袈裟に言えば、8~9割くらい違いました。舞台を全て自分で作る時はゼロからのスタートで、なるべく世にない物語を考えるとなると設定の段階から時間がかかりますし、設定ができたとしても荒唐無稽に自分でどんどん作り上げていかないといけない。自分で結論を出して役者にあてて稽古して、本番でお客さんに評価されてって全責任を負うのは孤独で、味方がほぼいない状態なんですね。けれど、ドラマの場合は監督さんも含めて6人くらいで書いた脚本について話し合いができる。みなさんの意見を持ち帰って書き直したら、また意見をもらえる心強さがありました。だから、みなさんに衝撃的なくらい委ねられたというか、甘えながら作ることができました」

第7世代のネタは隙がないくらい上手

──芸人を辞めてからも、脚本家や演出家として芸人さんと関わり続けている家城さん。今のお笑い界をどんなふうに見ていますか?

「コンビを解散してから、賞レースも8~9年くらいはほとんど観てないんです。観るとやりたくなるし、ただただ悔しいので」

──お笑いを離れて久しくても、やはりそういう気持ちになるんですね。

「観ていいことなんて、ひとつもないですね(笑)。この前、仕事で第7世代と呼ばれる5組のネタを初めてじっくりと観ました。世代で括るのはどうかとは思いますけど、Jリーグが始まって日本のサッカーがちょっとずつ進化していったように、お笑いも進化しているというか。僕らが小さい頃はネタを観られる回数自体が絶対的に少なかったけれど、スマホが出てきて10年。今は何千組のネタが手元で観られるし、好きな芸風も選べる。自分が面白いと思える立ち振る舞いとか喋り方をどんどんミックスしてもいい時代になった。そういう意味で、観た全組、隙がないくらい上手だなと思いました。荒さがないというか、達者というか」

──ただ達者である分、個性を見つけるのが難しい時代にもなっているように感じます。

「でも、それはお笑いがエンタメとして洗練されたということじゃないですかね? 僕らが小さい頃は、例えば、とんねるずさんがテレビの番組でお客さんとケンカしたりしてたので、それをお笑いでやっていいんだっていう概念がありました。けど、この10年間、テレビで芸人が暴れてない。最近の子たちが"よっしゃ! お笑いで暴れてやろう"っていう概念自体をそもそも持たない状況なんですよ。そういうことも含めて、相応に進化を遂げているんだと思います」

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相方がシャレでまたやろうかって言い出したら...

──さらば青春の光さんの単独ライブに構成として入られていたり、山里亮太さんの3Dトークイベント「山里亮太の1024」の演出を手掛けられていたりと、芸人さんと新しいこともされています。今後、新たにやりたいことはありますか?

「さらばと山ちゃんをやれているんだったら、ほかはやらなくてもいいかなという気がしています。時代が変わった今、解散したコンビが復活してもなんとも思わなさそうな雰囲気になってるので、相方の林(克治)がシャレでまたやろうかって言い出したら......。

僕、おじさんバンドがお金のために復活するのはクソダサいと思っているので、ただ2人でもう1回やるのは嫌だなとは思ってるんですね。例えば再結成するならNSCに入り直すとか劇場のランキングシステムに参加するくらいじゃないと。けど、そういうことも全部抜きにして、"ニューカリカ"っていうかなりダサいコンビ名を思いついちゃったので......」

──もしや、イチからやり直してコンビで賞レースに挑戦するとか!?

「理想は決勝進出して、ちょっと体調が......とか言って辞退したいですけどね(笑)。そんなことしたら、ただケンカ売ってるだけになっちゃうんでもちろんしないですけど、何かしら面白いことができたらいいですね」

(取材・文/高本亜紀)

【プロフィール】
家城啓之(やしろ・ひろゆき)
1976年7月19日生まれ。千葉県出身。1997年に結成したお笑いコンビ・カリカを、2011年に解散。2012年からマンボウやしろと改名。ピン芸人として活動するも、2016年に芸人を引退。以後、脚本家、演出家としてさまざまな舞台を手がける。また、ラジオパーソナリティの一面も持ち、現在は「Skyrocket Company」(TOKYO FM)にレギュラー出演中。2月5日(水)~9日(日)まで、構成・演出を務める「山里亮太の1024」が東京・本田劇場にて上演。

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ドラマ25「絶メシロード」、2月7日(金) 深夜0時52分放送の第3話は、家城さんの脚本回。インタビューでもお話いただいた、無数の石に囲まれた店が登場します。チェックの末、どうなったのかは、放送で!

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第3話 群馬県高崎市「香珍」
どこにでもいるごく普通のサラリーマン須田民生(濱津隆之)今日も一人の時間を満喫するため車で旅に出て車中泊をする小さな冒険へ出発する。ある夜、民生は群馬県の椿名湖を訪れていた。翌日、とある中華料理屋を訪れた民生の目に入ったのは無数の石。不安を感じつつも入店した民生を待ち受けるのは、またもや無数の石。そして石に強いこだわりを持つ店主。この個性的な店で民生はどのような「絶メシ」に出会うことができるのか!