「風邪っぽいから病院へ」は間違い? 完治への正しい知識を医師が解説:主治医の小部屋

公開: 更新: テレ東プラス

長寿番組「主治医が見つかる診療所」(月曜夜8時から)は、いま話題の健康法から、いざというときの医師・病院選びのコツまで、医療に関するさまざまな情報をお届けする知的エンターテイメントバラエティ。

今回、WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」で取り上げるのは「風邪のとき病院で診察を受けるべきか」について。のどが痛い、熱っぽい……。「これって病院に行った方がいいの?」と判断に迷うとき、どうすべきなのか。正しく理解して対処する方法を、同番組のレギュラー・宇井睦人医師に教えていただきました。

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症状によっては「風邪=病院へ」ではない


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──相談者のように、風邪のときに病院に行くべきか、迷う人は多いのでは。

もし相談者の方に、のどの痛みや発熱、せき、鼻汁が出るなど、風邪でよくみられる「急性上気道炎」の症状が出ているようでしたら、基本的には自宅での療養をお勧めします。

現在、一般的な風邪のウイルスに有効な薬はありません。来院されても解熱鎮痛剤を出す、自宅での過ごし方を助言するなど、私たち医者ができることは限られています。風邪の場合、通常なら数日から1週間程度で自然完治するため、栄養のある食事としっかりとした睡眠で、免疫力を高めるのが一番です。

──しかし、病院へ行かなければ薬がもらえません。

病院が解熱鎮痛剤として処方する薬にはアセトアミノフェンの成分が含まれていることが多いのですが、現在では同じ成分のものをドラッグストアで手に入れることができます。また、消炎鎮痛剤「ロキソニン」も市販薬として売られています。ですから、風邪らしき症状が出ているときにさらに体力を使い、交通費をかけてまで医療機関の外来を受診する必要があるのかと問われれば、難しいところです。

そもそも「風邪薬を飲めば風邪が治る」という単純な話ではありません。熱を下げ、せきを止め、たんを出しやすくするなど症状を和らげることは薬の力でできますが、いずれにしても数時間後には効果が切れ、熱はまた上がってしまいます。薬はあくまで、つらい状態を一時的に楽にする対処法だと考えていただければ。

また、相談者の方も危惧しているように、免疫力が低下した状態で病院に行けば、さらに別の病気に感染する可能性もある。一方で、抗がん剤を打ち免疫力が下がっている患者さんも院内にいる場合もあるため、そうした方へ自分のウイルスを感染させてしまうおそれもあります。

すぐに病院へ行くことで正確な診断が出ない場合も


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──では反対に、病院へ行った方がいいケースは?

呼吸がしにくい、息が苦しいといった症状が出ている場合は肺炎にかかっている危険があり、早めに受診すべきです。

「のどだけが痛い」というのも危険信号の一つ。たとえば扁桃炎なら、そのまま放っておくと膿瘍(のうよう)という重篤な疾患につながりかねません。病院へ行って抗菌薬(抗生物質)をもらうなど、投薬を開始した方がいいでしょう。

──「とにかく、まず病院へ」という認識がありました。

場合によっては、すぐに病院へ駆け込んでも診断が確定的でないときもあります。インフルエンザがまさにそうで、24時間以内の検査では、本当はウイルスに感染しているのに誤って陰性だと判断されることもあるのです。これを「偽陰性」といいます。偽陰性は時間の経過とともに減ることから、症状が出て24時間経ってから検査したほうが検査の正確性は高まると言われています。

──すぐに駆け込めばいいというわけではないと。

そうですね。とはいえ患者さんには落ち度はなく、国民の受診行動に関する適切な注意喚起をしてこなかった私たち医者や国の責任も少なくありません。

保険制度の違いなどはあれども、日本人の医療機関受診回数は世界で最も多いと言われています。どんなときに来院した方がいいのか、あるいはする必要がないのか、今後より一層、正しい知識を私たちや国が啓蒙(けいもう)していかなければいけないと思います。

──宇井先生、ありがとうございました。

【宇井睦人医師 プロフィール】
湘南鎌倉総合病院・総合診療科 部長。医師・公認心理師。
2007年 順天堂大学医学部卒業。日本専門医機構認定総合診療専門医・指導医、緩和医療学会認定医・指導医、プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医、医療政策学修士。著書に『緩和ケアポケットマニュアル(改訂3版)』など。

※この記事は宇井睦人医師の見解に基づいて作成したものです。

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