片平なぎさが語る「大映ドラマ」「2時間ドラマ」秘話「当時は石を投げられたことも」

公開: 更新: テレ東プラス

多くのアイドルを輩出したオーディション番組「スター誕生!」に出演し、見事合格。1975年にアイドル歌手としてデビューし、数年後、本格的に俳優の道へと進んだ片平なぎさ。’80年代は、大ヒットした大映ドラマ「スチュワーデス物語」の真理子役で一世を風靡し、’90年代以降は数々の2時間ドラマに主演。「山村美紗サスペンス 赤い霊柩車」や「小京都ミステリー」など名作シリーズを誕生させ、多くのドラママニアを魅了した。

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現在放送中のドラマ8「しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~」(毎週金曜夜8時)では、弁護士・保田(中島健人)とパラリーガル・加賀見(白石聖)を影で支えながらも、保田とはスイーツ談義を交わす喫茶店店主・麻帆役で出演。中島と息の合ったコミカルな演技を見せ、物語に華を添える。
デビュー以来、俳優としての勢いは変わらぬまま、来年記念すべきデビュー50周年を迎える。

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「あっという間にこんなに年を取っちゃったという感じで中身が全く成長していないので、“50年”と言われるとすごく不思議な感じです。確実に50年経っているはずなんですけど、あの頃と何ら変わっていない自分…それはもしかすると、結婚をせず、ここまで自由気ままに来てしまったからなのかな? それが良かったのか悪かったのか、時々考えることはありますが、もう開き直って生きています(笑)。ですから私からすると、たかが50年という感じなんですよね」

大きな瞳でこちらを見つめ、茶目っ気たっぷりに笑う。長きにわたりシリーズ化された主演作も多いが、そのやりがいや楽しさをどこに感じていたのか。
「2時間ドラマの魅力は、一つの物語が始まって、必ず最後にはしっかりと答えが出る。演じる側としては、最初に台本を全部読めるので、お芝居も計算できますし、気持ちもつなげやすいというところはありました。
あと、昔の2時間ドラマはオールロケが多かったんですよね。私は元々旅が好きなので、“あの頃の泊まりのロケは楽しかったなぁ”と思い返すことは多いです。あそこも行ったし、ここも行ったなという思い出がたくさんあり、それは今も宝物です」

ベテランならではの貴重なエピソードも、まるでその場面が目の前に現れたかのように、刻銘に教えてくれる。

「例えば『小京都ミステリー』の撮影で大分県にロケに行った時、小鹿田焼で有名な日田市から宿泊先に帰るロケバスの中で、信じられないほどのホタルの大群と出会ったんですよ。毎日ロケで疲れていて、少しでも寝る時間を稼ぎたいんだけど、その光景が美しすぎて、みんな足を止めざるを得なかったんですよね。バスを止めて全員外に出て、山も畑も川も道路も全部ホタルなんですよ。実は、翌日の新聞に掲載されるほど、一生に一度見られるかどうかというホタルの大群だったらしいんです。あの光景は、今も忘れられないですね。

もう一つ『小京都ミステリー』で忘れられないのが、ゲストが菅原文太さんで、松山で撮影した回があったんですけど、みんなで夜ご飯を食べに行くことになったので、文太さんとお店で待ち合わせをしたんですね。船越英一郎さんと私の撮影が終わったのでお店に向かおうとしていたら、夜空にお饅頭みたいな大きな雲がポカーンと浮かんでいて。みんなで『不思議な雲ね』と言いながら見ていたら、その雲に無数の光が入っていくんですよ。何百という光がその雲に吸い込まれていくんですけど、雲の先から光が出ていかないんです。みんな口々に『あれってUFO?』と(笑)。正体が知りたいのでしばらく見ていたかったんですけど、お店に待たせているのは、かの菅原文太さん!“これはもうあきらめるしかないよね”となって、その後は走ってお店に向かいました。
あの不思議な光景も、いまだに脳裏に焼き付いていますね。2時間ドラマのロケは、皆さん街をあげて協力してくださって…本当にいい時代でした」

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現場は明るくて楽しい方がいいなと思っています


“2時間ドラマの女王”と呼ばれる前の片平が悪女・真理子役を演じ、一世風靡したのが、大映ドラマ「スチュワーデス物語」(1983~84年)だ。義手にはめられた手袋を口を使ってはずすシーンが話題に。大映ドラマファンには、今もなお語り継がれる伝説に残るキャラクターだ。

「少し前までは、若い人とお仕事でご一緒にする度に『真理子、見てました』と言ってもらえたり、飛行機に乗ると、キャビンアテンダントの方が『あのドラマを見て、憧れて就職しました』と声かけてくれたりしたんですけど、ここ数年は、すっかり言われなくなりました。でも、ドラマ『罠の戦争』(2023年)に出演した時、現場に行ったら、総理大臣役だった高橋克典さんが、私に向かって手袋を取る真理子のマネをしてくださって(笑)。みんなが笑うと思ってやったみたいなんですけど、スタッフの皆さんも若いし、誰も知らなくて…気づいたのは私だけでした(笑)。

真理子は世の中的に嫌われるキャラクターでしたし、演じた時、私はまだ24歳で若かったんですよ。街を歩いていたら石を投げられたこともありましたし、喫茶店に入れば女子高生に悪口を言われて、その度に傷ついて…でも今振り返ると、“どうせ嫌われるのであれば、もっととことん振り切って演じれば良かった”とは思います。名作と言っていただけるのは本当にありがたいことなんですけど、当時はそのありがたさがわからなかった。今のこの気持ちがあれば、“あの時、もっと感謝して演じられたのにな”と後悔しています」

60代を迎え、近年は連続ドラマで若手と組み、理想の母親像を演じることも。ベテランでありながら、現場ではスタッフや演者と積極的にコミュニケーションを取ることを大切にしている。

「若い人たちが多い現場に一人だけ年配の自分が入るのって、正直怖いというか…“一人ぼっちになりたくない”という思いがあります。まず孤独に打ち勝つ強さがないですし、ツンとすましているのもできないタイプ。なので、積極的に輪の中に入っていっちゃうんですよね。そうすると、皆さんちゃんと答えてくれます。今の現場では、中島さんや聖ちゃんに、ものすごく大事にしてもらっています(笑)。

台本上でもたくさん接点があるのに、セリフが終わったらスーッといなくなるって、私的にはその方が苦しい。みんなプロですから、例えどんなにギリギリまで楽しく雑談していたとしても、監督から『よーい!』の声がかかれば、ちゃんとその役に入ります。雑談から生まれる交流が多ければ多いほど、私にとっては居心地のいい現場になりますし、余計なことに気をとらわれずにお芝居にも集中できて、役に思いを乗せられるようになる。現場は明るくて楽しい方がいいなと思っています」

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元気の秘訣は「あまり先のことを考えない」

プライベートはとてもアクティブ。大の車好きでも知られ、キャンプやドライブなど、旅を楽しむことも多い。

「年に1回は吉方位旅行(吉方位を旅して開運する)を楽しんでいます。今までは、九星気学で先生に見てもらっていたんですけど、そのうちに気学そのものに興味を持ったので、万年暦を購入して、自分で勉強するようになりました。分からないことがあったら、電話やネットで教えてもらいながらなんとか自分でできるようになって。ですから今は、自分で吉方位を調べて、会社に『来年は何月何日からお休みをください』とお願いをして、旅しています。毎回本当にいいことがある、気持ちのいい旅になります。

実は吉方位を知る前は、旅に出るとトラブルに見舞われることが多かったんですよ。宿泊先で天井のクーラーから水がザーッと落ちてきたり、ベランダを開けた途端に電球がボーンと落ちてきたり…。その度にフロントに電話をして、交換や修理をしてもらって、“あー私って、本当についてないんだな”と思うこともしばしば。でも吉方位旅行にしてからはトラブルもなく、自然と回避できたこともあったので、すごいと思いました。実は今年は、もう行ってきちゃったんです。帰ってきたと思ったら、今回のドラマのお仕事をいただくことができました(笑)」

常に朗らかでポジティブ。女性は50歳を過ぎると、体調面での不安や家族の問題など、さまざまなトラブルに見舞われるが、そんなネガティブとは無縁とさえ感じさせる。心も姿も美しく…その秘訣はどこにあるのか。

「なるべく小麦粉を摂らないようにするなど、健康オタクではあるかもしれません。エステには月イチくらいで行きますが、自分でやるのも好きなので、我が家にはいろいろな美顔器があります。毎日何かしらやりますし、結構マメかもしれません。お手入れすることで気分も上がりますし、『肌がきれいですね』と言ってもらえるとうれしいじゃないですか。だからなんとか、頑張れるところまで頑張ってみようと。
気持ち的なところでいうと、あまり先のことを考えないことかな? その日のことだけを考えて、ただただ“楽しくありたい”という気持ちで日々を過ごすようにしています」

【片平なぎさ プロフィール】
1959年7月12日生まれ。東京都出身。1975年デビュー。1983年のドラマ「スチュワーデス物語」では、主人公・千秋(堀ちえみ)をいじめるる悪女・真理子役を演じて話題に。
「山村美紗サスペンス 赤い霊柩車」「小京都ミステリー」「ショカツの女」「カードGメン・小早川茜」など、2時間ドラマで多数主演。近年は、ドラマ「罠の戦争」「18/40~ふたりなら夢も恋も~」「くるり~誰が私と恋をした?~」などに出演している。

【第3話】
保田(中島健人)が弁護を請け負うことになった兄妹アーティスト・ヌーヌーの炎上騒動。兄・リオ(野村周平)は誹謗中傷と戦うことにする。情報開示請求という反撃に、軽い気持ちで中傷していた人々の間に動揺が広がる。広告代理店勤務の中山(小手伸也)もそのひとり。職場では部長という立場だが、人知れずヌーヌーへの中傷を書き込み続けていた。
ある日、会社に意見照会が届いたのを機に深刻な状況へと陥っていく。

(取材・文/蓮池由美子)