ベッドで寝たままシャワーができる新製品 従業員17人…家電メーカーの挑戦:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

6月6日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「“ニッポン家電”再び世界へ~密着!小さなメーカーの闘い~」。
東京・台東区にある「シリウス」はわずか17名の中小企業だが、「今ないものを作る」を掲げ、ヒット商品を開発してきた。社長の亀井隆平さんは「三洋電機」の元社員。画期的な製品を生み出してきた三洋電機は、2011年にパナソニックの完全子会社になり消滅したが、亀井さんは三洋電機のものづくりの精神を受け継ぎ、奮闘している。
番組は、そんな亀井さんが「世界中で売りたい」と心血を注ぐ新製品の開発に密着。小さな家電メーカーの挑戦を追った。

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小さなメーカーが作る「ニッチな家電」


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東京・台東区。雑居ビルの中にあるユニークな家電メーカー「シリウス」(従業員17人、平均年齢35歳)。倉庫と製造工場が一緒の中小メーカーで、社名には、数ある星の中でも一番光り輝くシリウス、みんなの道標になりたいという思いが込められている。

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シリウスの商品はユニークなものばかり。ペットが汚したカーペットやシーツなどに水を噴射し、汚れを浮き上がらせて吸いとる、その名も「スイトル」は、累計7万台を越すヒット商品に。

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コロナ禍に発売した空気清浄機「ウイルスウォッシャー」は、殺菌作用のある次亜塩素酸を水と食塩を入れるだけで簡単に作ることができる独特の機能がウリ。量販店などで、累計4万台も売れている。

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シリウスの社長、亀井隆平さん(59)は、日本有数の家電メーカー「三洋電機」の元社員。学生時代から柔道一直線で、25歳の時、三洋にスカウトされて入社。実業団で活躍したが、右膝の靭帯を断裂し、柔道の夢が途絶えてしまう。その後は営業マンとしてまい進していたが、三洋は事業を広げ過ぎて、2011年4月に消滅。パナソニックの子会社になってしまう。

国内外10万人いた従業員のうち、パナソニックに転籍したのは、わずか7000人。亀井さんは誘いを断り、その後、妻・理さんと共にシリウスを営み、10年足らずで年商12億円の会社に育て上げた。「“三洋の血”しか流れてない。三洋の時の発想があるから、こういうものをやろうと思う。家電業界で生きていくしかない」。

狙うは「ブルーオーシャン」!


千葉県にある、特別養護老人ホームの入浴は週2回。全国で入浴介助が必要な人は、現在約230万人いるという。入浴介助は普通2、3人で行い、かかる時間は約30分。お湯は1回に1000リットルも必要だ。超高齢化社会を迎えた日本の介護の現場では人材が不足し、サービスの低下が懸念されている。
この問題に目を付けたシリウスは、「入浴の手間を少しでも軽減させたい」と、施設で開発中の製品「スイトルボディ」を試してもらうことに。

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「スイトルボディ」は、寝ながらにして体が洗えるというもの。温度を42度に設定すると、数分でシャワーヘッドからお湯が出てくる。周りがびしょびしょにならないのは、お湯を噴射すると同時に吸い込んでいるから。シャワーヘッドの真ん中からお湯を出し、スポンジの隙間から吸い上げる…あのヒット商品「スイトル」の技術を応用しており、現在特許を申請中だ。ボタンを切り替えるだけで専用ソープも出てくるため、髪の毛も洗うことができる。この日は、頭から足まで6分46秒で洗い終えることができた。
一人を洗うのに、水はわずか1リットルあれば十分だが、亀井さんは「吸い込む量とお湯の噴出量の最適化を図っている。まだまだ改善の余地がある。一石を投じる意味で今年4月に発売したい」と話す。

1月11日、シリウス本社。「スイトルボディ」の開発には、中国や台湾の企業にも協力を仰いでいた。デザインや設計は日本で行い、海外の工場で形にしてもらうが、最終的な組み立てと検品作業はシリウスが受け持つ。検品することで品質を保証し、メード・イン・ジャパンを名乗ることができるのだ。まずは営業用に50台の試作品を用意した。

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1月17日のお披露目から、本格的に社運をかけた闘いが始まった。これまで世になかった商品に、メディアも注目する。価格は18万円台にしたが、亀井さんは日本での販売だけでなく、海外市場も視野に入れていた。「太平洋、大西洋、インド洋、“3つの洋”が合わさって三洋電機。三洋電機は、日本では先行するメーカーにはかなわない。だけど、(三洋電機の創業者は)海外では勝っている会社にしたかった。なんとか『メード・イン・ジャパンここにあり』という商品にしたい」。

高齢化社会は、どの国もやがて直面する問題。亀井さんが世界戦略をにらんで目を付けた国が、人口約1億人のベトナム。社会主義国だが経済はオープンで、成長率も安定、将来性のある国だ。アセアン諸国と自由貿易協定を結び、地理的にも物流の拠点となっている。アセアンの総人口は約7億人という巨大市場で、亀井さんはベトナムこそ、今後東南アジア躍進のカギを握る国だと考えていた。

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首都ハノイに乗り込んだ亀井さんは、ベトナム有数の複合企業・ヴィングループが経営する「ヴィンメック病院」へ。国内に9つの施設がある富裕層に人気の病院だ。実際に「スイトルボディ」を使ってみせると、反応は上々でしばらく使ってもらえることに。
その後は、ベトナム経済の中心地・ホーチミンへ渡り、ベトナム財界の重鎮や現地在住の日本人実業家を招いてプレゼンする。亀井さんは近い将来、ベトナムにも工場をつくりたいと考えていた。

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翌日は、日本の介護施設に人材を送り出している機関「バラエン」へ。日本語の授業を受けている学生さんたちにも「スイトルボディ」を知ってもらおうと考えたのだ。
しかし、亀井さんがお手本を見せ、実際に使ってもらうと、なぜか背中が水浸しに。「調子が悪いな。吸わないんだわ」と亀井さん。発売まで残り2カ月足らずで、試作品の不具合が見つかってしまう。ベトナムに滞在中、日本の本社からも、不具合がある試作品が何台か見つかったとの連絡が入った。

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「我々が検品したものが不良品だったら我々の責任。メード・イン・ジャパンの意地にかけてもきっちり生産しなくては。闘いですよ、ここからは。従業員にも厳しく言わないといけないし、サプライヤーにも厳しく言わないといけない。1回なくなったメード・イン・ジャパンの復活はなかなか大変」。

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埼玉県にあるシリウスの事業所兼工場に、ベトナムで不具合を生じた24号機が送り返されてきた。作動させてみると、吸引動作はしているものの、やはり吸えていない…。原因を探るために部品を一つずつばらしていくと、ゴムパッキンが一つ欠落していたことが分かった。原因が判明したので、後は改善するだけだ。

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2月下旬、福岡。本格的に国内の営業が始まった。この日は、介護施設や病院関係者を招待し、「スイトルボディ」の販売網を広げるための説明会を行う。代理店契約を結ぼうというのだ。誰もが、ひっ迫した介護現場を何とかしたいと考えていた。
中には葬祭業者の姿もあり、「葬祭分門で活用できないか。亡くなってもきれいにして差し上げたい」と話す。思いがけないニーズがあることを知るいい機会に。

亀井さんは、福岡会場が終わるとすぐに次の町へ移動。自ら足を運び、気持ちを伝える…全国行脚の始まりだ。そんな中、シリウスにうれしい知らせが届く。さらに、亀井さんが考えた最後の一手とは?

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