【ドラマ「95」連載⑤】1990年代の音楽シーンを席巻した“小室ファミリー”とオシャレな“渋谷系”

公開: 更新: テレ東プラス

1995年の渋谷を舞台にしたテレビ東京開局60周年連続ドラマ ドラマプレミア23「95」(毎週月曜夜11時6分)。1995年を考察する短期集中連載、第5回は【1995年の音楽①】。

【動画】秋久(髙橋海人)と翔(中川大志)が激しい殴り合い!?

劇中では、当時のヒット曲が、1995年らしさを表すとともに、シーンや登場人物の心情とリンクさせ効果的に使われている。選曲のほとんどは、本作を手掛ける城定秀夫監督によるもの。1995年当時、大学生だった城定監督は「流行りの曲はあまり聴いていなかった」とのことだが、「そんな僕でも知っているヒット曲を基準」にセレクトしたそう。

この30年間で渋谷は大きく変化したが、「1995年の記憶を喚起させたり、当時を知らない方には想像できるような曲を選ぶことで映像では表現しきれない当時の空気感を補いました」と、本作には“音楽”の力も欠かせなかったという。城定監督の制作裏話を交えながら、1995年の音楽シーンを振り返る。

トレンド発信者が好んだ“渋谷系”


【ドラマ「95」連載⑤】1990年代の音楽シーンを席巻した“小室ファミリー”とオシャレな“渋谷系”ドラマプレミア23「95」第9話より

1990年代は、ファッションなどさまざまなカルチャーが成熟する中で、日本の音楽産業も栄華を極める。“CDバブル”と言われ、とにかく音楽が“売れる”時代だった。

記事画像ドラマプレミア23「95」第7話より

音楽を聴くためのフォーマットが、レコードから、1982年に登場したCDへと移行。元号が昭和から平成に変わった1989年には、CDのアルバムセールスがレコードのLP盤を追い抜き、音楽市場は一気に拡大。1990年代はCDシングルはミリオンセラー(100万枚以上の売り上げ)が連発し、それまでは4作しか達成していなかったダブルミリオン(200万枚以上の売り上げ)も連発。1995年にはヒットシングルトップ50中、なんと28曲がミリオンセラーに。

また、CD がレコードを追い抜いた1988年は“J-POP”という令和の今に至るジャンルが誕生したことも忘れてはならない。

同年10月に洋楽専門ラジオ局としてスタートしたJ-WAVEが邦楽コーナーを立ち上げる際に、“J-POP”という呼び名を提唱。同局はピチカート・ファイヴ(小西康陽、野宮真貴)、ORIGINAL LOVE(田島貴男)、フリッパーズ・ギター(小山田圭吾、小沢健二)ら、後に“渋谷系”と呼ばれるアーティストを猛プッシュ。ニューウェーブやギターポップ、ネオアコ、ハウス、ヒップホップ、1960年~1970年代のソウルミュージックなど幅広いジャンルを取り込んだオシャレでハッピーなサウンドの“渋谷系”は、文字通り渋谷を中心としたタワレコほか外資系および中古レコード店の店員やクラブDJなどトレンドに敏感な層の目(耳?)に留まり、フレンチカジュアルの流行などファッションシーンにも大きく影響を与えた。

記事画像ドラマプレミア23「95」第7話より

ドラマ「95」は、第1話冒頭、セイラ(松本穂香)が口ずさむ“渋谷系の王子様”小沢健二の「愛し愛されて生きるのさ」で物語の幕を開ける。初めてQ (髙橋海人)が翔(中川大志)たちの集まる喫茶店「メケメケ」に呼ばれた時も、店内に流れていた。“いつだって可笑しいほど誰もが誰か 愛し愛されて生きるのさ”1995年を駆け抜けた彼らの思いを、願いを、歌に託すかのように……

記事画像ドラマプレミア23「95」第3話より

星学ボーイズの雑誌「ストフリ」撮影時、スタジオ内でかかっていたのは、小沢健二featuringスチャダラパーの「今夜はブギー・バック」。当時を代表する大ヒット曲であり、2022年、サントリー「ほろよい」のCMソングとして今風にアレンジされ、時代を超えて話題となったことも記憶に新しい。

記事画像ドラマプレミア23「95」第3話より

1990年代を席巻した“小室ファミリー”


そして1990年代の音楽シーンを語る上で欠かせないのが、小室哲哉がプロデュースを手掛けた“小室ファミリー”。小室は、1994年のTM NETWORK終了と前後して観月ありさ、篠原涼子、trf、hitomiらを手がけ、“音楽プロデューサー”としての活動を本格化。1995年には、ソロとして活動を始めた安室奈美恵のプロデュースをスタート、小室が立ち上げた新レーベルの第一弾アーティスト・華原朋美のデビュー、自らも参加する音楽ユニットglobeの結成…など数々のアーティストをプロデュースし音楽業界を席巻する。

記事画像ドラマプレミア23「95」第1話より

1995年3月15日にリリースした、ダウンタウン・浜田雅功と小室のユニットH Jungle with tの「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント」はダブルミリオンの大ヒット。劇中では、第1話、花を手向けようと訪れた事件現場で翔と出会ったQが警官から逃れるためがむしゃらに走るシーン、それに続くQの家のテレビから流れてくる音楽として使われている。

同年3月20日に突然、起こった地下鉄サリン事件。身近な場所で多くの人たちが命を落とす中、変わらない平穏な日常……そんな世の中の状況に釈然としないQの心情と、「自分で動き出さなきゃ何も起こらない夜に」という歌詞が絶妙にリンクしていた。

記事画像ドラマプレミア23「95」第6話より

1990年代後半に“アムラー”現象を巻き起こした安室奈美恵の曲は、小室プロデュース第1弾「Body Feels EXIT」が第1話冒頭で、ソロデビュー曲「太陽のSEASON」(※小室哲哉プロデュースではない)が第5話で、当時の渋谷の映像とともに使われている。

リリース前の曲がテレビや街中から聴こえてくるのはおかしいため、「CDの発売日には注意を払った」という城定監督。“安室ちゃん”は1990年代を代表するアーティストだが、1995年頃から注目され始め国民的人気を得るのは翌年1996年以降。そのため大ブレイク目前のこの2曲(ともに1995年リリース)を使用したそう。

記事画像ドラマプレミア23「95」第8話より

ほかファッションにしても「劇中で出したかった時代を象徴するアイテムも、NIKEエアマックス95は物語が始まる1995年の3月は発売前だったり、ルーズソックスの本格的なブームまで少し間があったり、“惜しい”と思うことが多々ありました」との裏話も。

記事画像ドラマプレミア23「95」第7話より

1990年代は、小室をはじめ、1995年にデビューした“マイラバ”ことMy Little Loverの一員で、サザンオールスターズやMr.Childrenを手がけた小林武史、GLAYやJUDY AND MARYをプロデュースした佐久間正英、後に国民的アイドルとなるモーニング娘。を生み出したつんく♂など、“音楽プロデューサー”がフィーチャーされるきっかけにもなった。こうしたプロデューサーたちが、洋楽的なエッセンスと歌謡曲やアイドルソング、テクノポップなど日本ならではの要素が混ざり合ったハイブリッドな音楽として“J-POP”を独自に発展させていくこととなる。

【ドラマ「95」連載⑤】1990年代の音楽シーンを席巻した“小室ファミリー”とオシャレな“渋谷系”ドラマプレミア23「95」第9話より
明日公開の連載最終回は、引き続き【1995年の音楽】をクローズアップ。カラオケボックスの普及で激変した1990年代の音楽シーンや、劇中でQたちが歌っていた曲を紹介。さらに、城定監督にクライマックスの見どころを聞く。キャスト陣が撮休返上で練習して臨んだアクションシーンとは!?

ドラマ「95」短期集中連載
第1回は、【ドラマ「95」連載①】なぜ渋谷が若者文化の発信地となったのか?
第2回は、【ドラマ「95」連載②】「布の面積少なっ!」キャストも驚くコギャルファッション
第3回は、【ドラマ「95」連載③】1995年 若者のトレンドは「キムタク」「ポケベル」「エアジョーダン」
第4回は、【ドラマ「95」連載④】コギャルは茶髪に細眉、ロン毛男子が増殖

テレビ東京開局60周年連続ドラマ ドラマプレミア23「95」(毎週月曜午後11時6分)途中からの放送となっていた第8話を、6月3日(月)朝4時から改めて放送(テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知)。そして6月3日(月)午後11時6分放送の第9話は?

第9話
秋久(髙橋海人)と牧野(三浦貴大)の間に置かれた1つの銃。緊張感漂う中、銃を受け取らない秋久に牧野は銃口を向ける。思わず縮こまる秋久を見てからかう牧野は秋久をさらに気に入り、行きつけの料亭に連れていく。渋谷の新たな一面を知り驚く秋久。死んでいく渋谷を変えるために“お前と手を組みたい”そう語る牧野が、出会った頃の翔(中川大志)と重なった。そして秋久はセイラを守るために牧野にある勝負を持ちかける。

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