【ドラマ「95」連載④】コギャルは茶髪に細眉、ロン毛男子が増殖

公開: 更新: テレ東プラス

1995年の渋谷を舞台にしたテレビ東京開局60周年連続ドラマ ドラマプレミア23「95」(毎週月曜夜11時6分)。ドラマの撮影裏話とともに1995年を考察する短期集中連載、第4回は【1995年のヘアメイク】。

1995年、若者の流行の発信地だった“渋谷”で流行したヘアスタイルやメイクについて、本作のヘアメイク担当・縄野ほたるさんの話を交えつつ考察する。

【動画】1995年へのタイムスリップ気分も味わえる

ファッションとともにヘアスタイルも多種多様に


記事画像ドラマプレミア23「95」第6話より

まずは1995年から少しさかのぼって、昭和から平成(平成元年=1989年)へと移り変わる時代のヘアスタイルを振り返る。

1980年代、バブル期に向かって好景気に沸いた日本の黄金期。“ナウなヤング”たちは急激にオシャレに目覚め、ファッションとともにヘアスタイルも多種多様に変化した。

“たのきんトリオ(田原俊彦、野村義男、近藤真彦)”のパーマヘア、松田聖子に憧れる聖子ちゃんカットや小泉今日子風の刈り上げショートカット、YMOのようにもみあげを短く刈り込んだテクノカット、前髪をギザギザにしたチェッカーズカット、バブルを象徴する“ボディコン”とともにディスコのお立ち台ギャルに好まれたW浅野(浅野温子、浅野ゆう子)らトレンディ女優に倣ったワンレン(ワンレングス)ヘア、工藤静香のトサカ前髪に薄く下ろしたすだれ前髪、白T×ジーンズで一世を風靡した俳優・吉田栄作のサラサラヘアも人気を呼んだツーブロック……など、当時は視聴率40、50%を誇った“テレビ”で活躍するアイドル、俳優ら“スター”の影響が大きかった。

記事画像ドラマプレミア23「95」第3話より

また、1985年に制定された男女雇用機会均等法によって女性の社会進出が進み、朝のスタイリングが手軽なカーリーヘアやソバージュヘアが大流行。働く女性たちは、肩パット入りのスーツやボディコンなどの派手なファッションに身を固め、色鮮やかなメイクと太眉で存在感を示した。一方で、ヘアスタイリング剤をはじめとする男性用化粧品が売れ始めたのもこの頃だ。

男子はロン毛やすだれ前髪、女子は茶髪に細眉


そして1989年1月8日、元号が昭和から平成へ。1991年にバブルが崩壊し、その後、長く続く平成不況に突入。ドラマ「95」の舞台となる1995年は、経済不安に加え、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件など世間を震撼させる出来事が起こる一方で、アナログからデジタルへと世の中が大きく変わろうとする日本の大きな転換期だった。

記事画像ドラマプレミア23「95」第5話より

当時の渋谷を生きる星学ボーイズ(髙橋海人、中川大志、細田佳央太、犬飼貴丈、関口メンディー)やセイラ(松本穂香)たちは、傍から見れば贅沢なほどの高校生の日常を謳歌している。迫りくる“何か”を敏感に感じながらも、それを凌駕するほどの時代の波が押し寄せていたからに違いない。

この頃も人気ドラマは視聴率30、40%をマークするなど、まだまだテレビのスターの影響が大きかった。前回もふれた“キムタク”こと木村拓哉、“アムラー”と呼ばれるフォロワーを生んだ安室奈美恵、そこから少し遅れて1998年に歌手デビューし“女子高生のカリスマ”となった浜崎あゆみ、という日本の経済をも動かす新世代のスターが登場。ファッションはもちろん、アクセサリーや靴などのアイテム、ヘアスタイル、メイク……日本中の若者が3人のライフスタイルをこぞって真似た。

劇中で当時のヘアスタイルやメイクを再現する中で、「ファッションから何からすべてが変化の途中ということもあって、多少、苦労するところはありました」と、ヘアメイク担当の縄野さん。

記事画像ドラマプレミア23「95」第5話より

男性のヘアスタイルは、キムタクブームやトレンディドラマの常連だった俳優・江口洋介の影響から“ロン毛”が市民権を得ていた。ロン毛のQ(髙橋)やレオ(犬飼)には、「今ほど男性用のスタイリング剤の種類がなかった時代なので、男性はあえて艶を出さず、サラっと見えるようにしました」(縄野さん、以下同)とのことで、男性も“ブロー命”だった当時の雰囲気がよく出ている。

ヘアワックスの銘柄一つに、いくつも種類がある今とは違い、ソフトとハード、せいぜいスーパーハードくらいしかなかった時代だ。ヘアムースはキープ力がとぼしいため何度もセットし直す。ジェルで固めた後にブラシを通すと白い粉が出てしまう……40代の大人になったQ(安田顕)と同じ、かつてのボーイズには“あるある”だろう。

記事画像ドラマプレミア23「95」第1話より

吉田栄作風ツーブロックの延長にあり、1990年代に流行ったすだれ前髪が印象的な翔(中川)のへアルタイルは、「ご本人が当時のヘアスタイルを調べた上で“翔はこんな感じでどうでしょう?”と提案してくださって」と、演じる中川さんのアイデア。一番のポイントとなる“前髪の薄さ”は、「作りすぎると女の子のようになってしまいますし、薄くなりすぎると照明の関係で何もなく映ってしまう」と、バランスにはかなりこだわったそう。

記事画像ドラマプレミア23「95」第4話より

また、当時はヘアカラーもせいぜい“茶髪”と“金髪”程度で、髪を染めていると“不良”“ヤンキー”と見られていた。「今のように“色”で遊べないため、金髪はおちゃらけキャラのマルコ(細田)だけにして、他の4人はカットやスタイリングでそれぞれの個性を出すよう努めました」とのこと。スケーターやダンサー、DJなどのクラブカルチャーの台頭によってツイストパーマも流行するが、男性のヘアカラーが一般的になるのはまだ少し先の話だ。

記事画像ドラマプレミア23「95」第1話より

その点、いつの時代も女性は流行に敏感。1995~1996年の“アムラー”ブームにより“茶髪”“細眉”“小麦肌”がコギャルの定番となる。女子高生たちは、制服にラルフローレンのポロシャツやカーディガン、足元にはルーズソックス、ローファー。冬は、セイラたちも身に付けているバーバリーやフェンディなどハイブランドのマフラー。そしてポケベルを片手に渋谷の街を闊歩していたのだ。

女性キャストのヘアメイクについては、ドラマの始まりが1995年3月のため「“コギャル”ブームの少し前の女子高生を意識して。眉は安室さんのような細眉に、アイシャドウも紫っぽい色味のものを選んでわざとベタッと塗り、巻き髪も今のようなふわっとした感じではなく、しっかりカールした巻き方に」と時代感を大事にしながら、微妙な眉の形の違いなどで個性を出した。

記事画像ドラマプレミア23「95」第6話より

より特徴的なヘアメイクが求められるギャルの加奈(浅川梨奈)、恵理子(工藤遥)とは、他の仕事への影響もあるため「どこまで眉を細くするのか、髪をブリーチしていいのか」など相談。結果、カラーした髪が伸びて根元が黒くなった“プリン”のようになった当時のギャル風ヘアも再現できることになったそう。

1995年の渋谷から生まれたファッション&ヘアメイクは、この後さらに進化し一時代を築くこととなる。1996年に創刊された「egg」や「Cawaii」などストリート系の雑誌では、街角でスナップ撮影された“読モ”と呼ばれる読者モデルが人気に。1990年代後半には、より目立とうとヘアスタイルやメイクを過激に進化させた“ヤマンバギャル”が登場し、世間を賑わせる。

1999年には、美容師たちが腕前を競うバラエティ番組から火が付き“カリスマ美容師”ブームが到来。翌年には、木村拓哉がカリスマ美容師役で主演したドラマ「Beautiful Life~ふたりでいた日々~」(TBS系)も大ヒットを飛ばした。

記事画像ドラマプレミア23「95」第4話より

ドラマ第2話では、数年後こうしたカリスマ美容師ブームの波に乗るであろう美容室で、ダサかったQがイメチェンした。Qの心境の変化に呼応するように黒髪から少し明るい色へと変身したが、撮影の順番が前後することから髙橋さん自身の髪色は明るい色にし、黒髪シーンの撮影の際はその都度黒く染めていたそう。そんなあわただしい中でも、「ご本人は、変化後のサイドのウェーブにこだわっていました」とのことで、ファッションにもヘアスタイルにも無頓着だったQが毎朝ブローすることを覚えた……という、本人の細かな演出なのかもしれない。

星学メンバーのほかにも翔をライバル視する宝来隼人(鈴木仁)など出演者が多く、ヘアメイクのバリエーションには苦心したが、「1995年をリアルタイムで知る方に“あった、あった!”と言われると、たくさんの種類を考えた苦労が報われます。当時を知らない方には新鮮に映ってもらえるとうれしいです」と縄野さん。

こうした細部へのこだわりと「このドラマをいいものにしたい」という出演者のアイデアで制作されたドラマ「95」。来週公開の連載第5回は、劇中でも効果的に使用されている【1995年の音楽】をクローズアップ。さらに本作の要である城定秀夫監督にロケやセットの舞台裏などをうかがいつつ、ドラマの終盤に向けた気になる見どころもお聞きする。

ドラマ「95」短期集中連載
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テレビ東京開局60周年連続ドラマ ドラマプレミア23「95」(毎週月曜午後11時6分)第7話は?

第7話
中学時代に通っていた中国拳法に再入門した秋久(髙橋海人)は、ある日、学校でセイラ(松本穂香)とばったり会ってしまう。あの日以来のセイラとの再会…。気まずい空気が流れるも、翔(中川大志)が襲われた原因は私にあるとセイラは告白する。翔を問いただすものの、誤魔化すだけで肝心なことは何も話さない…。秋久は思わずキレて飛び出してしまう。一方、牧野(三浦貴大)は宝来(鈴木仁)を通じて一儲けしようと画策する。

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(取材・文/橋本達典)