軽貨物車両の事故が多発…激変する“運送業界の最前線”に密着:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

3月22日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「ニッポンの物流を守れ!~2024年危機の舞台裏~」。
今年4月から、物流業界にも適用される「働き方改革関連法」。これまで人手不足や長時間労働が常態化していたことから猶予されてきたが、4月からは配送ドライバーの労働時間に上限が定められる「物流の2024年問題」が懸念されている。
業界大手「セイノーホールディングス」は、「働き方改革」と「大量物流」の両立を目指して、これまでのオペレーションを一気に見直すなど、対応に奔走していた。
「2024年問題」で激変する、運送業界の最前線に密着した。

【動画】「2024年問題」で激変する、運送業界の最前線に密着

ニッポンの物流“大動脈”を変革する! セイノーホールディングスの挑戦


去年12月、「九州西濃運輸」福岡支店。ここは、1日1000トン以上もの荷物が行き交う、九州最大の物流拠点だ。4月から始まる時間外労働の上限規制により、今、トラックドライバーの働き方が大きく変わろうとしていた。

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「九州西濃運輸」の中原秀夫さん(47)は、妻に支えられながら子ども3人を育ててきた勤続15年目のベテランドライバー。3日かけて往復1800キロを移動する長距離便を任されてきたが、今回の規制を受け、会社は中原さんが担当する長距離便を廃止することに。ガイアは中原さんのラストランに同行した。

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中原さんが運転するのは20トントラック。3日間の運行はドライバー2人体制のため、相棒の渕上博司さん(53)と共に、ドライバー自身が荷物を確認しながらトラックに積み込む。この作業だけで3時間かかる。

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向かうのは愛知県内の3つの支店で、午後10時過ぎに出発し、最終到着予定は翌日の午後1時。目的地に時間通り運ぶため、緻密なスケジュールが組まれている。交代でハンドルを握り、もう1人は助手席で休みを取る。

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できるだけトラックを止めずに走り続け、午前6時。兵庫県の三木サービスエリアでは、時間を節約するために歩きながら歯を磨く。
出発から15時間後の午後1時、最終目的地の愛知・豊川支店に到着。予定時刻ピッタリだ。時間に追われる中、20トントラックを1発で駐車位置に停めるのも、中原さんの技の一つ。出勤してから20時間…14年の付き合いになる豊川支店のスタッフともお別れだ。

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従業員から「これからも頑張ってください」と握手を求められ、中原さんは笑顔で「寂しくなりますね」とこぼした。豊川で仮眠した後は荷物を積み、再び20時間かけて福岡へ戻る。

日本全国を駆け巡り、人々の生活を支えている物流。その物流を担う長距離ドライバーの現状は有効求人倍率2.14倍(出典:国土交通省)で、深刻な人手不足に陥っている。
こうした中、さらに物流業界を悩ませているのが、働き方改革だ。長時間労働が常態化してきた運送業は、今年、時間外労働の上限が年間960時間に制限される。
物流の効率化など何も対策を取らなければ、2030年度には日本の輸送能力が約34%も不足すると推計されているが、どうすればドライバーの労働時間を減らしながら、大量の荷物を運び続けることができるのか――。

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1930年、岐阜で誕生した「西濃運輸」は、戦後、長距離輸送の手段が鉄道しかなかった時代に、日本で初めて長距離トラック輸送を始めた。全国の都市に拠点をつくり、企業が必要とするモノを運ぶ。日本の高度経済成長を物流の面で支えてきた。

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「セイノーホールディングス」(本社:岐阜・大垣市)は、売上高6300億円で、従業員数は約3万人。ライバルがひしめく運送業界で、企業間物流シェア1位を誇る。そんなセイノーの頭脳が、1日に6000便もの運行ダイヤを編成する運行部だ。
人手不足の中、4月からの規制にどう対応していくのか。「西濃運輸」運行部 北陸エリア担当の馰井道昭さん(44)は、丸一年かけ、あるプロジェクトを進めていた。

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4月スタート予定の「金沢集約プラン」は、北陸エリアで各支店がバラバラに運んでいた荷物を金沢支店に集め、トラックを満載にして無駄なく運ぶ計画だ。これなら、少ないドライバーで多くの貨物を運ぶことができるが、そのためには、大幅な運行ダイヤの組み替えが必要だ。馰井さんは、「(機械的に組んだ)運行ダイヤを、仕事に誇りを持つ現場のドライバーに納得してもらえるかどうかが一番の課題」と話す。

2024年、年明け。馰井さんは直接現場に足を運び、担当者と話を詰める予定だったが、元旦に能登半島地震が北陸を襲った。道路は寸断され、貨物を運ぶこと自体が困難な状況。
セイノーは地震直後から動き、貸し切りのトラックで能登半島各地の避難場所に支援物資を運び届けた。

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1月10日。「金沢集約プラン」を進めていた馰井さんのもとに、北陸の各支店から次々とSOSの連絡が届く。「実家が被災し、母の介護が必要となったためしばらく運行ができない」というドライバーの声も。能登にある営業所では、配送先の多くが被災し、いまだに届けられない荷物がたまっていた。従業員の中には、自宅が壊れ、親族の家から出勤している人も。

さらに能登営業所の周辺は、いたるところで地盤の液状化が発生。こんなところをトラックが走れるのか?「金沢集約プラン」の行方は? 馰井さん、北陸の物流を守ることができるのか――。

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“ラストワンマイル”を担うドライバーを守ろうと立ち上がった革命児!


物流業界で4月から適応される「時間外労働の上限規制」。運送業者が長距離ドライバーの働き方改革に取り組む中、もう一つ大きな課題がある。
宅配の荷物が年間50億個にも膨れ上がっているのに伴い、増えているのが、個人宅などを回る軽貨物車両の事故。死亡・重症事故は、年間403件(2022年 出典:国土交通省)も発生している。

1日最大400個を配る、この道24年のベテラン・逆井充文さんに聞くと、配達の単価は1個180円。単価が安くガソリン代は自腹のため、大量の荷物を配達しなければ稼げない。不在も多く、再配達も相次ぐ。労働時間は長くなるばかりだ。

軽貨物車両の事故が多発…激変する“運送業界の最前線”に密着:ガイアの夜明け
逆井さんは「時間に追われるとか、荷物の量が多くなってきたとか、それで焦る。時間に余裕がないというのが(事故の)一番の要因」と話す。
こうした配送ドライバーの現状を変えようと立ち上がったのが、配送会社「北商物流」の社長・瀬戸口敦さんだ。

瀬戸口さんは、元々個人の配送ドライバーだったが、低賃金・長時間労働の業界を変えたいと一念発起し、2011年に会社を立ち上げた。社訓は「仕事は楽しく」。現在、10人の社員と委託ドライバー150人を抱えている。
7年前から個人事業主向けの安全運転講習会を開催しているが、瀬戸口さんは、事故の根本に、低賃金と長時間労働があると考えていた。

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「(低賃金で)運転時間が長くなればなるほど、事故が起きる確率も多くなるし、ドライバーさんが人として普通の生活ができるラインがあると思う。ドライバーさんの待遇を上げないと、魅力ある業界にならない」。

瀬戸口さんは、より高い運賃を得られる仕事の開拓に取り組んでいる。4年前から始めた「ヨドバシカメラ」のテレビ配送もその一つ。運ぶだけでなく、設置や配線までやることで、高い運賃単価を実現した。
最近も、新たに高運賃の案件を獲得。それが、こだわりの有機野菜を会員向けに届ける会社の宅配サービス「ビオ・マルシェ」だ。瀬戸口さんが任せたのは、元営業マンで、2カ月前に転職したばかりの村上善遼さん(28)。この仕事をそつなくこなすには、会員一人一人の要望に沿った細かい決まり事を守らなくてはならない。

軽貨物車両の事故が多発…激変する“運送業界の最前線”に密着:ガイアの夜明け
朝6時半に配送開始。この仕事で大切なのは、スピードよりも接客スキルで、配送先に到着すると、村上さんは玄関に膝をつき、荷物を1つずつ並べていく。お客が希望すれば、その場で空箱もすべて回収して持ち帰る。
この日、村上さんが回ったのは、わずか40軒。単価が高いので数をこなす必要がないのだ。帰宅したのは昼の1時過ぎで、家族と一緒にお昼をとることもできる。

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長時間労働が当たり前の業界を変えたいという瀬戸口さん、そこにはある思いがあった――。
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