日本にマイ窯を持つほど陶芸にドはまり!小児科医YOUが待望の初焼きで得た経験、そして秘めた夢とは?:YOUは何しに日本へ?

公開: 更新: テレ東プラス

日本を訪れる外国人たちを空港で勝手に出迎え、アポなしインタビュー! そのまま密着取材を行う「YOUは何しに日本へ?」(月曜夜6時25分~)。今回のテーマは、「アッチッチYOUが焼いて!焼いて!焼きまくりSP!」。熱くてファイヤー!なYOUが続々登場する95分で、はたしてどんな面白YOUに出会えるのか?

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空港で声をかけたのは、来日8回目というロサンゼルス(アメリカ合衆国)から来た医師のエミールさん(74歳)。3カ月ほど滞在し、趣味の陶芸に没頭するそう。しかも茨城県笠間市に、マイホームやマイ穴窯まで持っているという。「カメラ持って来てください!」と誘われちゃったので、ありがたく密着決定!

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数日後、朝5時にと指示されスタッフが向かったのは、ご自宅。

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着くなり出発し、「今日は一段とゴージャスだ」と見上げるのは、美しい日の出。エミールさんは、1日をこうして散歩から始めるそう。そして、美しく霧がかった場所へ案内してくれた。

ここ笠間市は、古くは縄文集落のあった地で、良質な粘土をふんだんに産出する陶芸の里だ。江戸時代中期から栄え、『笠間焼』は1992年国の伝統工芸品となった。

そんな里にエミールさんの穴窯がある。奥行き約8m、高さ約1.5mで、耐火レンガで作られた洞穴状の窯。購入した2019年以降はコロナ禍で来られなくなったが、2022年からつくり始めた作品がすでに並んでいる。中古でボロボロだった窯は、地元の方に手伝ってもらい、1年かけて修復も完了。そして1カ月後、ついに初焼きなんだって!

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ろくろを回して酒瓶を作るエミールさんの手際の良さを褒めると、「10年やってるから。でも私は陶芸の素人」と舌を出した。最後は陶器の底を叩き、音の違いで厚みの計測。厚すぎると割れやすくなるためだそう。そこへ、地区長で大親友の中村さんがやって来た。週に4回訪れ、公共料金の支払いなどのサポートもしてくれている。「いつも中村さんに言ってる、私を養子にしてくださいって」と言われた65歳の中村さんは「あなた歳取り過ぎ」と大笑い。本当に仲良しだ。

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12時になると、工房の隣の住居スペースへ。建物は古いが、お風呂からトイレまですべてリフォーム済みの気持ちの良い部屋だ。ランチは、笠間産食材のシイタケや味噌などを使い、具だくさん味噌汁を手早く手作り。エミールさんは20年ほど前に離婚しており、自炊生活が長いせいか、料理の手際も良い。中村さんにもらった稲荷寿司も並べ、「とても幸せな暮らしだよ」とランチを楽しんだ。

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エミールさんが陶芸に惹かれたきっかけは、父・エミルさん(享年78)だった。浮世絵版画好きの父の影響で、小さな頃から歌川広重や葛飾北斎を目にし、日本の芸術を美しいと感じていた。すると30歳の頃に、アメリカの自宅近くに日本の陶芸家・マス オジマさんが工房を開設。「マス オジマさんから日本人の陶芸に対する考え方や文化を聞いて、強い衝撃ととても深い感銘を受けたんだ! シンプルで無骨だけど繊細な侘び寂びの文化に魅了されたんだ」と、陶芸との出会いを教えてくれた。

そんなエミールさんは、益子(栃木)、備前(岡山)、越前(福井)、丹波(兵庫)など、来日するたびに9年間で陶芸の里11カ所を訪問し、2019年、ついに笠間で陶芸工房を購入した。

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この日は、窯の前に地元の子どもたちが集まった。陶芸講座(ボランティア)を開くと、小学生40人は食い入るように工程を見つめた。

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こうしてひと時触れ合った後、「私は30年間小児がんの医師をしています」と教えてくれたエミールさん。実は小児がんの専門医だそうで、現在は大学病院で名誉院長も勤めている。「子どもたちは毎日を精一杯楽しんでいた。人生は長さではない、大切なのは”どう生きるか“?」だと、子どもたちから教わったという。

「僕は自分の勤務する病院で教育の責任者という立場になった。そこで僕は自分の陶器の売り上げを学生たちにあげようと思うんだ」と明かした。エミールさんには、次世代のための教育資金を作るという壮大な夢もあったのだ!

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火入れの前日、朝から3時間ほどかけて薪割りを続けるエミールさんの姿が。薪は5分置きに5~6本、窯に120時間くべ続け、5日間燃やしっぱなしにするという。そして当日は、中村さんと共に穴窯に神棚を作り、安全と成功を祈願し、着火。そこへ窯元・田山さん(59歳)も様子を見に来て、窯の窓を開けるようアドバイス。10年以上使っていなかった窯なので、まずは風を入れて窯自体の水分を飛ばすのだ。

「陶芸はまさに人生のようだ。簡単な人生がいいか? それとも面白い人生がいいか? 私は全てを楽しむ」と、エミールさんはブレない。ひたすら温度をチェックし、薪をくべ続け、温度を1200℃まで上げる。

そこへ林業を営む石井さん(51歳)も到着し、饅頭を差し入れしてくれた。薪にする良い木を届けてくれた石井さんに、心から感謝を伝えるエミールさん。

2日後、穴窯は目が離せないので、手伝いに来てくれた陶芸大学の学生の金森さん(39歳)と交代で温度を管理。こうしてエミールさんのために、続々と地元の友人がかけつけた。

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10日後、いよいよ窯出しだ。集結した仲間たちの前には、2時間かけ、良い色に焼けた見事な陶器が窯から取り出されていった。そして火が強く当たった部分が白く、弱かった部分が濃く色づいた壺を、「面白い」と見せてくれた。灰で描かれた線も味わい深い。こうした火加減が生み出す色や模様こそ、穴窯焼きの最大の特徴なのだ。

しかし一方で、窯の温度を上げすぎ、曲がったり割れたりと失敗作も多かった。しかしエミールさんは「成功失敗のパーセンテージは全く重要じゃない。たとえ底に穴が開こうとも、曲がりくねってひっついたとしても、全てがかけがえのない経験。だから結果には大満足だよ」と語る。

「今回学んだことを次に必ず生かすよ! すでに次の薪の準備を始めているからね」と誓うエミールさんの密着はここまで。これからもがんがんファイヤーして、夢を叶えてね!