1万円の服が100円!衣服の廃棄ゼロを目指す先駆者、次なる挑戦:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

1月19日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「SDGsの先駆者たち」。SDGs=持続可能な開発目標(2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標)という目標が掲げられる前から、「食品ロス」や「衣服ロス」に挑む人々がいた。捨てられるものに新たな価値を見出し、ビジネスを通じて廃棄を減らす。ガイアのカメラが見つめてきた先駆者たちの取り組みが、今、新たな局面を迎えていた。

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アパレル廃棄ゼロと途上国の支援…先駆者「ショーイチ」が目指す先


1万円の服が100円!衣服の廃棄ゼロを目指す先駆者、次なる挑戦:ガイアの夜明け
1月、「錦糸町マルイ」にある洋服店「カラーズ」を訪れると、某百貨店などで販売する商品や1万3000円の商品が、なんと税込み110円で売られていた。4000円のニットや8500円のスカートも110円。店の特徴は毎週水曜日の値下げで、売れ残るとどんどん値下げされ、5週目には110円になるのだ。
この日はさらなる目玉商品もあり、ダウンコートが9割引きの1980円。全ての商品が新品・未使用だが、なぜそんなに安くできるのか?

1万円の服が100円!衣服の廃棄ゼロを目指す先駆者、次なる挑戦:ガイアの夜明け
1カ月前、大阪市。あるアパレルメーカーの社員が取り出したのは、先程のダウンコート。自分たちで売れ切れないコートを買い取ってもらうために訪ねたのは、アパレル在庫の買い取り業者「ショーイチ」。社長は、「カラーズ」の経営者でもある山本昌一さん(45)。

1万円の服が100円!衣服の廃棄ゼロを目指す先駆者、次なる挑戦:ガイアの夜明け
1万5000円前後のコート約1500着を1着1300円、総額200万円の買い取りで交渉成立。山本さんは、手付け金100万円を現金払いする。アパレルメーカーの社員は、「暖冬でこれだけ売れないのは初めて。1回きれいにしようと会議で決まった」と話す。
買い取った服は、「ショーイチ」の倉庫へ。その数は年間約4000万枚で、段ボールの中身は全て新品だ。SDGsという言葉ができる前から衣服ロス問題に取り組んできた山本さんは、廃棄寸前の服を新たな買い手に届けてきた。

日本だけで年間約29億着の洋服が供給され、その半分にあたる15億着が売れ残り、廃棄されているという。1枚でも捨てられる衣服を減らしたい…。ガイアのカメラは、問題解決に挑んだ先駆者・山本さんを、15年にわたって追い続けてきた。

1万円の服が100円!衣服の廃棄ゼロを目指す先駆者、次なる挑戦:ガイアの夜明け
2009年の大阪市。「ショーイチ」は、ある老舗メーカーから、サンダルの買い取り依頼を受けた。山本さんは、「4000足売ったら(一足)150円で、4000足売れなかったら200円で」と交渉。在庫は1万3700足もあるが、まずは4000足を買い取ることに。
自社の通販サイトで、買い取ったサンダルを500円で販売すると、わずか1カ月で8000足売れた。「また発注させてください。完売まで頑張りますので」と山本さん。すぐに追加で買い取ることに。

「ショーイチ」には、処分の依頼が次から次へと舞い込む。ブランド価値を守りたいというメーカー側の意向もあり、買い取った服のタグをカット。ブランド名を分からないようにして販売する。

山本さんは「決してかっこいい業界ではないが、必要な会社だと思って信念を持ってやっている」と語る。

いまでは「ショーイチ」に買い取りを依頼する会社は、大手アパレルも含めて約4000社、年商は35億円に達している。

最初に取材してから15年。山本さんはいま、余った服を生かした新たなビジネスに挑んでいた。

1万円の服が100円!衣服の廃棄ゼロを目指す先駆者、次なる挑戦:ガイアの夜明け
去年12月、大阪。10人ほどの男女が「ショーイチ」の倉庫を訪れた。今度は服のブランドタグではなく、ボタンを取って生地を切り刻んでいく。山本さんは、新たに古い服のリサイクル事業も始めていたのだ。

生地だけにして工場で加工した再生繊維は、新幹線のトンネル内部などに使われている。
作業するのは障害のある人たちで、施設側の指導員もしっかりサポート。山本さんは、アパレル廃棄と障害者雇用の問題を、同時に解決しようとしていた。

「集中してやってもらっている。シンプルなのに変化があって飽きない作業はあまりないらしい。仕事がほしいと言われる」。

そこで山本さんは、店舗の一つを閉鎖して、障害のある人たちに働いてもらう場所にしようと考えていた。3月には、近隣の住民も障害者の家族も気軽に中をのぞけるような就労支援施設をオープンする予定だ。

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12月下旬、山本さんが向かったのはカンボジア。主要産業はアパレルで、経済発展を続けているが、農村部は貧困率が高く、教育を受けられない子どもたちも多くいる。山本さんが真っ先に訪れたのは、貧しい地域の人たちのための無料の学校。日本で余った新品の服をプレゼントした。
しかし、今回の別の大きな目的があった。訪ねたのは、日系企業のカンボジア進出をサポートする会社。現地に詳しい代表の荒井望さんと日本で余った服を売る店を作り、カンボジアで雇用を生み出そうというのだ。
アパレル廃棄ゼロと途上国支援…山本さんの新たな取り組みには驚きの展開が待っていた!

1万円の服が100円!衣服の廃棄ゼロを目指す先駆者、次なる挑戦:ガイアの夜明け

廃棄野菜がクレヨンに…「新たな価値」で食品ロスをなくす!


大阪にあるイベント施設で開かれていたのは、日本最大級の子ども向けの仕事体験イベント。さまざまな企業がブースを出展し、プロから学ぶことができる。
そんな会場でにぎわいを見せていたのが、塗り絵のブース。子どもたちは、捨てられる野菜を原料にした「おやさいクレヨン」(10本セットで2200円)に興味津々だ。

1万円の服が100円!衣服の廃棄ゼロを目指す先駆者、次なる挑戦:ガイアの夜明け
クレヨンを開発した木村尚子さん(44)は、「子どもたちは食べ物があるのが当たり前だと思っているが、実は当たり前ではないということを遊びを通じて学んでほしい」と話す。

食品ロスについて、日本では2030年度の目標に向けて、減少傾向が続いている。しかし、こうした食品ロスの統計には含まれない「隠れ食品ロス」といわれるものが存在している。それは、小さな傷や見た目の悪さなどから、市場には流通しない“規格外の野菜”など。
こうした野菜を減らそうと取り組む木村さんを、ガイアのカメラは9年間にわたって追い続けてきた。

2015年、青森・上北郡 七戸町。農家を訪れた木村さん(当時36)は、形が悪かったり傷があったりすることで廃棄される野菜を農家から買い取り、クレヨンを作っている。
木村さんの会社「mizuiro」は、2014年に設立したベンチャー企業。デザイナーとして独立した木村さんが思いついたのが、廃棄野菜から作るクレヨンだった。

1万円の服が100円!衣服の廃棄ゼロを目指す先駆者、次なる挑戦:ガイアの夜明け
「おやさいクレヨン」の材料は色とりどりの粉末で、緑色は、廃棄されるキャベツの葉を乾燥させて粉末にしたもの。野菜の粉末に食用の米油、米ぬかから抽出したロウを加えて混ぜ合わせ、型へと流し込むと、キャベツのクレヨンが完成する。原材料のほぼすべてが自然由来で、万が一、子どもが口に入れても大丈夫だ。

1万円の服が100円!衣服の廃棄ゼロを目指す先駆者、次なる挑戦:ガイアの夜明け
2014年に発売すると、高級雑貨店や大手百貨店などからも注文が入り、累計17万セットを売り上げる異例のヒット商品に。シングルマザーの木村さんは、離婚後、当時11歳の一人娘と2人で暮らしていた。料理はいつも手作りだが、娘の優那さんは野菜が苦手。娘に野菜を好きになってもらいたいという思いもあり、野菜を使ったクレヨンを考えついた。

あれから9年経った去年7月。木村さんは、和歌山・有田市で新たな事業に取り組んでいた。
有田市は400年以上の歴史を持つみかんの名産地で、1年を通してさまざまな柑橘類が収穫される。この日、「伊藤農園」直営の加工工場では、夏みかんを使ったジュースを作っていた。「伊藤農園」のみかんジュースの一番のこだわりは、独自の装置を使い、弱い圧力でみかんの実だけを贅沢に搾ること。手で搾ったように雑味がなく、果実そのままの素朴な味わいになるという。しかし、実の部分だけを使うため、年間1400トンの皮が産業廃棄物になっていた。

1万円の服が100円!衣服の廃棄ゼロを目指す先駆者、次なる挑戦:ガイアの夜明け
そこで木村さんが思いついたのは、「伊藤農園」から出たみかんの皮を古紙と混ぜたアップサイクル紙「みかん」。よく見ると、みかんの皮や繊維が、紙に独特な色や模様をもたらしている。

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さらに木村さんが手にしていたのは、みかんの再生紙を使って試作したスケッチブック。みかん以外にも、青森産リンゴジュースの搾りかすを使った商品も完成させていた。
「もっと広めることで、(捨てられるものを)活用できるようにしていくスキームを作りたい」と、木村さん。

そんな木村さんに、食品大手「キユーピー」から連絡が入る。果たして、どんな依頼なのか。

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