温泉旅館が25年間でほぼ半減「泊食分離」絶品料理でニッポンの危機を救う!:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

1月12日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「守れるか ニッポンの温泉旅館」。
日本の温泉旅館が危機に瀕している。1990年代以降は減少傾向にあり、25年間でほぼ半減。2020年、観光庁が公表した資料では、全体の3割の旅館が赤字で、借入金の返済も困難な「衰退旅館群」とされる。背景にあるのが少子高齢化と人口減少で、経営者の多くが高齢化し、事業承継の問題を抱えていた。
日本の温泉文化を支えてきた古き良き旅館…さまざまな人間模様をガイアのカメラが追った。

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待ったなし…老夫婦が営む秘境の宿


春の風物詩「鯉のぼり祭り」やユネスコに登録された鍋ヶ滝で知られる熊本・小国町。
人里離れた山あいに、温泉旅館「山林閣」(1泊2食付き、1人1万8400円~)がある。

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自慢の一つは、二段になった滝が目の前を流れ落ちる露天風呂など、4つもある源泉かけ流しの風呂。白濁した硫黄泉で、湯の花も豊富な名湯だ。

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もう一つの自慢は、九州の山奥で味わう本格的なカニ料理。かつて主人が大阪の「かに道楽本店」で料理人をしていた伝手で、上質なカニを仕入れることができる。

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そんな人気の宿を一代で作り上げたのが、秋吉美延さん(89)。この土地にほれ込んだ秋吉さんは、30年ほど前に自ら温泉を掘り当て、1995年、約2億円をかけて開業した。
以来、知る人ぞ知る温泉宿になり、夫婦で切り盛りしてきたが、数年前に心臓の大きな手術をした秋吉さん、もはや体力は限界にきていた。

去年4月、「山林閣」に、全国の旅館やホテルの不動産を専門に扱う仲介業者・辻󠄀勇自さんがやって来た。取り出したのは不動産売渡承諾書で、旅館の売買価格は、温泉権、営業権、のれん代込みで2億5000万円。辻󠄀さんは「相場的に高くはない」と話すが、秋吉さんは「もう90歳になるので、私たちにはもうできないから売ろうと思う」と決断する。

秋吉さんには息子や娘もいたが、妻で女将のキヨ子さん(85)は、「長年やってきたから寂しくなる。本当は継いでもらうのがうれしかったが、無理だった」と話す。辻󠄀さんの元には、後継ぎのいない宿からの依頼が多くなっているという。

秋吉さんは承諾書に印鑑を押したが、あれから10カ月…いまだに買い手は決まっていない。

温泉旅館を守れ!秘策は伝統からの脱却!?


草津温泉や伊香保温泉とともに“群馬の3名湯”といわれる四万温泉も、大きな課題に直面していた。

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「千と千尋の神隠し」の舞台のモデルともいわれ、日本最古の木造湯宿建築と伝えられている「積善館」もあるが、温泉街の中心にある商店は軒並み閉店。最盛期の80年代には、商店や宿泊施設が130軒以上あったが、2023年現在は半分ほどに減っている。
中には全国に知られた旅館やホテルもあり、設備を充実して料理に力を入れ、趣向を凝らしたサービスで客を楽しませている。しかし一方では、温泉街に繰り出す人が減り、温泉街全体で見ると徐々に衰退していたのだ。

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このままでは温泉街が消えてしまう…。危機感を募らせた四万温泉協会の事務局長・宮﨑博行さん(38)は、温泉街を再生させるために立ち上がった。実家が土産店の宮﨑さんは、大学を卒業し、地元に戻ってきた。

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12月。宿の経営者が集まる旅館部会で、「和食の職人が圧倒的に少ない」という議題が上がった。高齢化や人手不足で、食事の提供に困っている宿が出ていたのだ。そこで検討されているのが、「泊食分離」。宿泊と食事を別にすることで旅館の負担を軽減し、飲食店の利用を増やすというもので、温泉街全体の活性化にもつながる。

宮﨑さんが実施したアンケートでは、回答があった32軒の旅館のうち、5軒が泊食分離に前向きな姿勢を示してくれた。そうした中、宮﨑さんは、町の中心地から2キロ離れた「中生館」を訪れる。泊食分離を試験的に試せないか、相談に来たのだ。

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宮﨑さんが「夜の飲食店の営業が増えることが最優先事項」と話すと、宿の主人・中路真嘉さんも「旅館の中で完結してきた歴史が、昭和の後半からあった。それは結局、お金の回り方が地域の中で単調化してしまう。旅館だけしか儲からないのは、すごくもったいない」と答える。

実はこの2人は幼なじみで、故郷への熱い思いも一緒だった。中路さんが後を継いだ「中生館」は、1941年にそば屋として創業。待ち時間に温泉に入れる店で、その後、本格的に温泉旅館として開業した。
中路さんの父親が3代目で、代々家族経営で小さな旅館を守ってきたが、6年前、中路さんが4代目に。実は中路さん、東京の大学院で植物の研究に没頭し、博士号を取る目前だったが、「研究は自分のためだけだったが、こっちは地域のためにもなる」と家業を継ぐことに。このままではじり貧になると考えた中路さんは、1泊2食付き2人以上の宿泊という旅館の常識をやめ、新たに一人旅に特化した部屋(1泊7000円〜)を5部屋作った。

一方の宮﨑さんは、泊食分離の実験に向け、飲食店に協力を仰いでいた。商店街にある「ジュピターズキッチン」の佐藤大輔さん(39)は、「四万温泉自体を盛り上げていきたい。旅館と連携してやれば面白い」と歓迎する。

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店のメインの商品は、群馬が誇る上州牛100%の「ジュピターズバーガー」(1250円)で、開店以来、大人気だ。「オープンして半年ぐらいは夜の営業していた。お客が少なくて採算がとれず、夜の営業はやめてしまった」と佐藤さん。夜の商店街に観光客が増えれば、営業の目途が立つ。

数日後、四万温泉の新たな試み、泊食分離を試す日がやって来た。協力してくれるのは、東京からやって来た常連客で、ハンバーガーがメインの佐藤さんのお店も、この日は洋食のフルコースを考えていた。温泉街の未来をかけた“新たな取り組み”の行方は……。

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行政が事業承継に乗り出した!


熊本・水俣市にある「湯の鶴温泉」は、約700年の歴史を持つ温泉街。昔から湯治場として親しまれてきたが、ここでも、珍しい取り組みが行われていた。水俣市行政が主導し、跡継ぎがいない温泉旅館と温泉旅館を経営したい事業者とのマッチングツアーを始めたのだ。

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最盛期は旅館や商店が24軒あったが、現在は8軒にまで減ってしまった湯の鶴温泉。マッチングツアーに参加した「永野温泉旅館」は、大正8年に創業し、地元の人たちに愛された湯治場だったが、経営者が高齢になったため、15年前から休業している。
創業者の孫にあたる永野治さん(59)は事業を継げないため、市役所に相談したが、想像以上の老朽化に、ツアーに参加した事業者は手を引いた。

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しかし10月上旬。大手不動産会社を退社し、熊本市内で暮らす久保田裕貴さん(28)が、事業者として手を挙げた。「川の流れの音とか、ゆったりした時間を感じられるところがいい」。
旅館は至る所で雨漏りが起きるほどのおんぼろ状態。自慢の温泉も、風呂場は大正時代のままだが、久保田さんは「レトロな雰囲気が、かえって新鮮に映る」と話す。大正時代の建物を生かしつつ、和モダンな雰囲気に作り変えようと考えていた。

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久保田さんに聞くと、改修費用は6000万円くらいかかるという。旅館の譲渡金は永野さんが安くしてくれたが、改修費用をどう工面するかが問題だ。

数日後、銀行から融資をしてもらうため、マッチングツアーを仕掛けた水俣市役所・観光交流推進室の髙橋麻衣さんは、地元の商工会議所に協力を仰ぐ。
早速担当者に事業計画を見てもらうが……久保田さん、融資という大きな壁を乗り越えることができるのか。

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番組ではこの他、静岡・熱海の温泉旅館の買収に動く海外投資家に密着。

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