ドラマ音楽チームに聴く『ポケモン』音楽の魅力とアレンジ裏話

公開: 更新: テレ東プラス

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ゲーム『ポケットモンスター』原案 初のオリジナルドラマ、木ドラ24「ポケットに冒険をつめこんで」(木曜深夜24時30分/テレ東系)。西野七瀬演じる主人公が、20年ぶりにプレイする『ポケットモンスター 赤』を通じて成長していく姿を描いている。

ゲームの内容とリンクしたドラマを盛り上げるのが、ゲーム『ポケモン』の音楽をアレンジした楽曲の数々。テーマ曲をはじめ思わず心が熱くなるBGMについて、音楽チームに話を聞いた。

記事画像写真左より、坂本剛さん、菊地信哉さん、小畑貴裕さん、フジモトヨシタカさん

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音楽チームは最強チーム


記事画像音楽プロデューサー フジモトヨシタカさん

――木ドラ24「ポケットに冒険をつめこんで」(以下、「ポケつめ」)の音楽は、全曲ゲーム『ポケットモンスター』の音楽をアレンジしたもので、『ポケモン』ファンの間でも話題になっています。通常、ドラマの音楽にはお一人のクレジットが多いと思いますが、今回は“音楽プロデューサー”フジモトヨシタカさん、“音楽”菊地信哉さん、坂本剛さん、小畑貴裕さんのクレジットが。通常とは違ったドラマ音楽制作だったのですか?

フジモト「そうですね。通常は一人ですが、今回は僕が“プロデュース”を担当し、信頼できる音楽作家さんを3人集め、取りまとめのような役割をしました。

というのも、ドラマのプロデューサーの方からオーダーされた使用楽曲の数が多くて。普通のドラマなら用意するBGMは多くても20曲程度ですが、このドラマで最終的に用意したのは46曲。それに加えて、僕は作曲家でアレンジに特化した人間ではないので、ひとりでは手に負えないと判断し、信頼する方々に声をかけて集まっていただきました。

そこから僕は、使用楽曲の中で誰にどの曲を担当してもらうかを考えて。皆さんそれぞれスペシャリストとしてタイプがあるので…」

小畑「ポケモンみたいですね(笑)」

菊地「そういう意味では、フジモトさんはゲームの主人公のような立ち位置かもしれません」

一同「そうですね!」

菊地「今回の音楽の元になるのはゲームのBGMなので、元々の楽曲のベクトルやジャンルの方向性を考え、ドラマ用にどういうアレンジをするかを考えていく。その中で、『ここは坂本さんに。ここは小畑さんに』と振り分けるハンドリングをフジモトさんがされた形ですね」

フジモト「そうですね。至らないところだらけで、ハンドリングできたかわからないですが…。ジャズピアニストの坂本さんは、情緒的な作曲やアレンジが上手な方で、何度かドラマ音楽でご一緒したこともありますし、場数も踏んでいることからお願いしました。例えるなら…くさタイプ?」

記事画像編曲担当 ジャズピアニスト 坂本剛さん

坂本「ゴーストじゃないんですか?(笑) フジモトさんとは、ドラマ『アラサーちゃん 無修正』や『こえ恋』(ともにテレビ東京系)で音楽のお仕事をご一緒させていただきました」

フジモト「菊地さんは編曲だけではなく、音楽を納品できる形に整えるまでの“エンジニア”ポジションも担当していただきました」

記事画像編曲・ミキシングエンジニア担当 菊地信哉さん

菊地「元々、広告音楽プロダクションで15年近く、サウンドエンジニア(レコーディングの際、各楽器の音量や音質などを調整し、最終的な形に仕上げる仕事)を担当しながら作曲もやっていたので、独立した今も二足の草鞋を履いています。『ポケモン』関連だと、ゲーム『Pokémon UNITE』の広告音楽のミキシングエンジニアを担当したことがあります。

今回のお仕事では、編曲のほか、坂本さんや小畑さんが制作してくださったトラックをまとめ上げる作業も僕がやっています。他の仕事では、『ミキシングエンジニア』担当者が別途いるものなのですが、そこを僕が兼ねた形です」

フジモト「小畑さんは、ヒット作のBGMを手がけていらっしゃる方。この仕事を請けたとき、不安な要素を洗い出し、『ここは押さえたい!』というところや、ドラマ内で頻繁にかかるであろう音楽は彼にお任せしました」

記事画像編曲担当 作曲家・編曲家 小畑貴裕さん

小畑「フジモトさんとは以前、一緒に舞台音楽をやらせていただいたことがあり、公私ともに付き合いがあります。僕は演奏家と作曲家の両方をやっていて、『ポケモン』関係ですと、『放課後のブレス』のBGMでピアノを担当しています。ほか、最近は『約束のネバーランド』や『ニンジャラ』など、アニメの劇中音楽を手がけることが多いです。今回は編曲でBGMを作っていくのがすごくおもしろいなと思いました。

僕は、子どもの頃に『ポケットモンスター 赤・緑』を夢中で遊んでいた世代で、塾をサボって友達とプレイしていました(笑)。ゲームでは没入しながら自分が主人公になれたけれど、今回はドラマなので視聴者の方は自分自身が主人公として参加するわけではありません。その違いがある中、どう作品世界に入り込んで楽しんでいただくかは考えましたね」

――ポケモンの例えもありましたが、まさに最強のチームですね!

菊地「タイプが違う方に集まっていただいているので、何か問題が出てきても配置の入れ替えなどもしやすくて、エンジニアとしてもやりやすかったです」

小畑「アウトプットの最後を担うエンジニアの仕事を、チーム内の菊地さんが兼ねて下さったのは心強かったです。僕が好き勝手作ったものを、バランスよくミックスしてくださったので」

坂本「なおかつ楽曲制作自体にも関わってくださっているので、状況も全て理解していますし」

菊地「ありがとうございます。その分、責任重大なポジションでもありました」

ゲーム『ポケモン』音楽の魅力


記事画像木ドラ24「ポケットに冒険をつめこんで」より

――音楽のプロフェッショナルである皆さんからご覧になって、ゲーム『ポケモン』の音楽の魅力は?

坂本「ゲームに登場するキャラクターはポップですが、音楽には意外と泥臭いイメージのある進行が使われているんですよ。ブルースの進行や、ハーモニーにロック色が強い音楽もある。全体を通じて統一性がありますが、いろんな音楽の要素が使われているんです。また、元々がゲームボーイの音源なので、曲によってはハーモニーに対し、いろいろな解釈ができました。とくに『マサラタウンのテーマ』という楽曲はそうでしたね」

菊地「『マサラタウンのテーマ』はバリエーションをたくさん作りましたね。坂本さんが、楽曲の中には泥臭いイメージがあるものもあったとおっしゃっていましたが、それをドラマにフィットするようにきれいにまとめあげてくださったのが、すごいところです。主人公の感情が盛り上がるところで使われる“心情音楽”は、坂本さんが作った曲が多いです」

後編】では、「ポケつめ」最終回に向けての音楽の聴きどころを!

【プロフィール】
フジモトヨシタカ
ミュージシャンとして活躍する一方、作曲家・編曲家としても活動。ドラマ「アラサーちゃん 無修正」、「こえ恋」(ともにテレ東系)、映画「劇場版 美しい彼~eternal~」(2023年公開)、CM音楽などを手掛ける。
≪好きなポケモンは?≫
「リザードン。僕がというより、息子が好きなんです」

菊地信哉
広告音楽制作会社にてサウンドエンジニアとして約15年近く勤務の後、独立。会社勤務時から作曲、編曲も手がける。ゲーム「Pokémon UNITE」の広告音楽のミキシングエンジニアを担当。
≪好きなポケモンは?≫
「ピカチュウです」

坂本剛
ジャズピアニストとして活動するほか、舞台やCM音楽の制作も手がける。テレビドラマ「アラサーちゃん 無修正」、「こえ恋」(ともにテレ東系)の音楽制作に参加。ドラマ「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」(テレ東系)では使用楽曲のピアノ演奏を担当。
≪好きなポケモンは?≫
「フシギバナ。あの安定したフォルムが好きなんです」

小畑貴裕
作曲家、編曲家。ドラマ、映画、CMなど幅広い音楽の作曲、編曲を手がける。近年は「ニンジャラ」(テレ東系)はじめテレビアニメの音楽を数多く担当し、「約束のネバーランド」(フジテレビ系)では海外メディア主催の「Anime Trending 6th」でベストサウンドトラック賞を獲得。
≪好きなポケモンは?≫
「ピカチュウですが…菊地さんと被ったのでイーブイで(笑)」

(取材・文/仲川僚子)

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