人間関係のリセットは必要か――突然SNSから消える「人間関係リセット症候群」の対処法

公開: 更新: テレ東プラス

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「人間関係リセット症候群」という言葉を知っていますか?
衝動的に全ての人間関係をバッサリ切ってしまう行動のことで、正式な病名ではないものの、精神面における(「現代病」)の一つと言われています。
LINEやSNSで特定の相手をブロックするのではなく、自分のアカウントごと削除、電話番号を変えるなどし、すべての人間関係をシャットアウト。繰り返しやすく、デメリットが大きいのに衝動を止められない…自分が、または身近な人がこのような状態になった時、どうすればいいのでしょうか。

「テレ東プラス」では、「人間関係をリセットしたいと思ったことはありますか?」「親しい人が音信不通になったことはありますか?」など、アンケートで実態を調査。すると約7割の人が、人間関係をリセットすることは「必要だと思う」と答える結果となりました。

約半数の人が「リセットしてしまう人の気持ちはわかる」と理解を示す結果に


全国の10〜60代以上のYahoo! JAPANユーザー男女2000人にアンケートを実施(2023年11月1日)。「SNSをアカウントごと削除するなど、人間関係をリセットしたいと思ったことはありますか?」との質問に、約半数の48.5%の人が「ある」と回答。

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「リセットしたいと思ったことがある」と答えた方を対象に「実際にリセットしたことがありますか?」と聞くと、「複数回ある」と答えた方は17.1%、「1回だけある」と答えた方は14.1%。
「ない」と答えた方に「リセットしてしまう人の気持ちはわかりますか?」と聞いたところ、51.2%の人が「自分はしたいとは思わないが、する人の気持ちはわかる」と理解を示しました。

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一方、「SNSのブロック機能を使ったことがある」と回答した人は44.1%。
「親しい人が突然音信不通になったことはありますか?」との質問には、32.7%の人が「ある」と回答。

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さらに「その時、どんな気持ちになりましたか?」と聞くと、「悲しい」が13.9%、「心配」が15.1%となり、「怒り」はわずか2%にとどまりました。

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また、「親しい人が音信不通になったことがある」と答えた人の中で、「探す努力をした」と答えた人は、全体の21.5%。「一度音信不通になった人が、また現れたことはありますか?」との質問に「ある」と答えた人は13.4%で、その時の感情について聞くと、「安心した」「なんとも思わない」「忙しさが緩和したんだなと思った」などの意見が寄せられました。

最後に「人間関係をリセットするのは必要なことだと思いますか?」と質問すると、「思う」と答えた人は67.8%で過半数以上。その理由について、「その時置かれた状況によっては、リセットも必要かもしれない」「リセットすることで生きやすくなるなら、するべき時もあると思う」「自分が苦しかったら人間限関係を見直してもいいと思う」など、さまざまな個人の見解が。

そもそもリセットすることはいいことなのか、悪いことなのか…また、実際に自分の身の回りで起きた際の対処法は? アンケート結果を踏まえ、心理カウンセラーの小日向るり子さんに話を伺いました。

SNSから突然消える「人間関係リセット」=悪?


――「人間関係リセット症候群」の定義とは?

「疾患名ではないので医学的な定義はありませんが、ある日突然全ての人間関係をシャットアウトしてしまう、あるいはそれに近いことをしてしまう人のことを俗にさして使う用語です。
例えば、SNSでしつこくしてくる人をブロックした等、理由があって特定の人をシャットアウトするのは、人間関係リセット症候群にはあてはまりません。ある日全てが嫌になって、アカウントごと削除してしまうような状態が人間関係リセット症候群です」

――SNSで個人のアカウントをブロックすることとの心理的な違いは何でしょうか。

「特定の相手をブロックする理由は、『相手を消して自分が心地よく存在し続けたい』からですよね。つまり、自分が生きるためにブロックするので、そこには自分を守る自己防衛や自己愛の心理が働いていると考えられます。
一方、人間関係を全てリセットするのは、『自分自身の存在を消したい』という心理です。
後者の場合、消滅願望や自殺願望が入っている場合もあるため、リセットの頻度や程度によっては心療内科などの専門機関でサポートを受けることをおすすめします」

――なるほど。心理的には真逆とも言えるのですね。「人間関係リセット症候群」の一番の原因はどこにあるのでしょうか。

「一番とは言えないものの、社会との繋がりの多さと頻度が大きくなった社会が関係していると思います。現代社会は、スマホで常に誰かと繋がっている状態ですよね。これは楽しくもあるけれど、緊張している状態でもあるのです。緊張が続くことは、心を風船に例えるなら常に膨らんでいる状態です。そのため、細い針穴ひとつで破裂する膨張した風船のように、些細な出来事がトリガーとなり『全てを切る』という極端な行動になりやすいのではないでしょうか。

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――「人間関係リセット症候群」に陥る人は、今後も増えていくのでしょうか。

「増え続ける一方かというと、自身の肌感覚ではそうでもない気がします。リアルな関係が半ば強制的に遮断されたコロナ禍を経て、非リアリティで繋がることの虚しさを改めて感じる人も多く、例えば人情を歌った昭和歌謡を聴く若者が増えたり、リアルな繋がり求めて居酒屋やバーを探索する人が増えたりと、むしろ原点回帰の潮流もあると思います。
もともと人間は共存する生き物なので、脈々と受け継がれる"人との繋がりの大切さ"に本能的に気づき始めている気がします。どんなにデジタルが発達しても、やはり人は一人では生きていけないですからね」

――リセットして自己嫌悪に陥ってしまう人の場合は、どうしたら良いのでしょうか。

「物事や対人関係を『0か100か』という考え方をしていないか、もしそうした思考の癖があれば『ほどほどで良い』ということを意識してみましょう。人間関係をリセットする傾向がある人は完璧主義の人も多いので、『治すべき』と考えれば考えるほどゼロにしたくなってしまいます。
具体的には、『なんとかなるさ』『明日は明日の風が吹く』など、ちょっと楽になれる言葉を部屋の壁に貼ったり、スマホのホーム画面にしたりしても良いですね。
また、一人では思考の整理や自分への気付きが進まないこともあるため、医師やカウンセラーなど心の専門家の助けを借りるのもいいことだと思います。
専門家は多くの症例を見て学んでいますので、プロに頼ってほしいです」

――身近な人から突然シャットアウトされると、動揺したり、「私が何かしちゃったかな」と落ち込んだりしてしまいます。リセットされた側はどうすれば良いのでしょうか。

「まず、なぜ相手がそういう状態になってしまったのかを考えてみることが大切です。
背景に個人的なストレスや大きな喪失体験があることも多いので、『少し前にご家族が亡くなっているもんね』『前の職場もすぐ辞めたって言っていたから、挫折が重なっちゃったのかな』など、自分と相手の関係性だけでなく、その人の背景全体を考えることによって、リセットされた側が自分だけを責める気持ちが和らぎます。
また、少し突き放した考え方かもしれませんが、『私の問題ではなく、その人自身の問題』と区切りをつけることも大切。最終的にはその人自身が選択したことであり、その人の人生なので、ある程度ドライに受け止めることが大切だと思います」

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【小日向るり子(こひなた るりこ)】
(社)日本産業カウンセラー協会認定産業カウンセラー JAA認定アロマコーディネーター
1971年静岡県出身。同志社女子大学短期大学部英米語学科卒業後、増進会出版社(現:Z会)に入社。勤務しつつ活動していた社団法人での自殺予防電話ボランティア相談員としての4年間の活動がカウンセラーを志すきっかけとなる。
退社後(社)日本産業カウンセラー協会産業カウンセラー資格を取得。2010年より労働局にてセクシャルハラスメント相談員として勤務し、2011年3月任期満了にて終了。2012年「フィールマインド」を設立。対面・電話・メールでカウンセリングを行う傍ら心理・恋愛関連の執筆活動も行う。相談受付件数約5500件(2023年4月現在)。

(取材・文/みやざわあさみ)

※この記事は、「テレ東プラス」とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。

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