11月3日（金）に放送された「ガイアの夜明け」（毎週金曜夜10時）のテーマは、「空き家が変われば…街が変わる！」。
日本で増え続ける空き家を街に合わせた魅力的な建物に生まれ変わらせ、地域全体を元気にしようとする仕掛け人がいた。
さらに、商店街の空き店舗を“まちごとホテル”にし、人を呼び込もうという仕組みも登場。客室も夕食会場もお風呂も…すべて商店街の中にあるという。これまでの発想を超えた“新戦略”で街全体が潤う、驚きの現場を取材した。
【動画】空き家がタダで大変身！？“シャッター商店街”に泊まろう！
空き家が“街に合わせて”驚きの大変身！
東京・文京区にある茗荷谷駅。夜が更けると、駅からちょっと離れた住宅街は静けさが漂う。その中で、連日地元の住民でにぎわうのが「Bar坂道」だ。
5年間空き家だったが、「夜までお酒を楽しめる店がほしい」という住民の声を受けてバーに作り替えた。空き家を再生する仕掛け人・大河幹男さんは、「ボロボロでかなり老朽化していて、雨漏りもしている状態だった。改装するのに苦労した。非常に思い入れが深い物件で、空き家活用をやっていこうと思ったきっかけになった」と話す。
東京・渋谷にある大河さんの会社「ジェクトワン」（2009年設立 社員約100人）は、主に新築物件を開発する不動産会社で、年商は132億円。新事業として立ち上げたのは、空き家の再生を請け負う「アキサポ」。7年で260軒以上もの再生を手掛けてきた。
元々、大手でマンション開発を担当していた大河さんは、当時感じていた違和感が「アキサポ」を立ち上げるきっかけに。「その土地には何が合うのか、地域の環境をすべて見て建てる。それが本来の街づくり」と話す。
「アキサポ」のチームリーダー・山下航平さんは、大手ハウスメーカーを経て、5年前に転職。「新築は一から建てるが、アキサポは、眠っている不動産を使って街に明かりを灯す。付加価値をつけて再生することにやりがいを感じている」と山下さん。
東京・台東区の谷中は、「谷中銀座商店街」で知られる町。その谷中銀座から5分ほど離れた静かな住宅街の先に、今、山下さんが再生しようとしている物件がある。
築51年の木造アパートは、老朽化が進み、ここ1年空き家になっていた。かつては12世帯が住んでいた大きな建物を4500万円ほどかけてリノベーション。物件の所有者・藤村洋人さんは、「父親が頑張って建てたものなので、すぐに壊したくなかった」と話す。
「アキサポ」は初期投資がなく、維持管理もやってくれるというが、一体どんな仕組みなのか。
まずは「アキサポ」が、所有者から空き家や空き店舗を預かり、街にあった物件にリノベーション。費用は全て「アキサポ」が負担する。完成後は、借り手を見つけて建物の維持や管理も担当。さらに、家賃の一部は所有者に入るというから驚きだ。
今回の空き家は、山下さんがこれまで経験したことのない最大の物件で、しかも、住宅街の奥まった場所にあるという大きな課題も…。この物件を街にあったどんなものに生まれ変わらせるのか？ 山下さんは街の調査に乗り出す。
谷中は、古くからのお寺が密集する歴史ある町。創業100年の佃煮屋さんは「どこを見ても寺町だから、発展のしようがない」、70年近く続く花屋さんは、「昔は毎晩のように夜店が出ていたが、今は少ない」と話してくれた。
実は、谷中にはアートギャラリーや陶器の作品が並ぶ店が多く、しかも、物件から歩いて10分ほどの所に東京藝術大学があり、周辺には学生が多く住んでいる。谷中は“アートの街”でもあったのだ。
谷中物件のアイデアを固めた山下さんは、早速、社長の大河さんにプレゼンする。2階は芸大生などの若い人たちをターゲットにしたシェアハウスに、1階はアートギャラリーや飲食店など5店舗を入れる計画だが、「自分たちがやりたい店舗で単純に活性化するだけではなく、住民に喜ばれるものでありたい」と宿題を与える大河さん。とことん街に喜ばれる物件にする…それが「アキサポ」流なのだ。
10月下旬。その全貌が明らかになった谷中の物件。外観は、「街の景観を崩さないでほしい」という住民の声をうけ、シックなグリーンに。１階には５つの店舗スペースがあり、ここでカフェを開くパティシエの押江琴美さんは、「古い建物があって、趣もある。一呼吸おけるような場所になればいい」と、出店の理由を語った。
山下さんが、さらにリサーチした結果、谷中には和菓子の店が多く、住民からは「ゆっくりできるカフェがほしい」との声が。押江さんのカフェは、まさに街のニーズにピッタリ！ 山下さんは、大河さんの期待にしっかり応えたのだ。
その他、スムージーや発酵料理の店、さらにアートを意識した雑貨店の出店が決まり、2階のシェアハウスには、すでに入居者が。年内には全ての店が出そろう予定だが、“谷中の街を変える”存在になるのか――。
“商店街”に泊まろう！“シャッター商店街”再生の秘策
人口48万人ほどの大阪・東大阪市。布施商店街は市内最大の商店街で、下町らしく、昔ながらの個人商店が軒を連ねている。かつては約780店舗もあり、にぎわいを見せていたが、今や店舗数は約半分に。年々寂しくなる一方だ。
そんな中、大きな荷物を持った家族が入っていくのは、婦人服の看板を掲げた店。その中は「SEKAI HOTEL（セカイホテル）」という名のホテルフロント。驚きの世界観を持ったホテルだ。
チェックインを済ませた家族が商店街を歩いて向かったのは、菓子店の看板が掲げられた客室棟。中は広々とした客室に改装されており、一番のウリは、商店街が見下ろせるオーシャンビューならぬ商店街ビュー！ お父さんは、「最高ですね。なかなか経験できない」と笑顔になる。
こちらの家族が泊まるのは、元・紙の卸し問屋で、“ものづくりの街・東大阪”をイメージした客室。この部屋の料金は、1人1泊5500円(平日・1部屋6人 素泊まりの場合)からで、こうした空き店舗を再生した客室が、商店街の中に7棟ある。
もう一つのウリが、宿泊者全員に渡される「セカイパス」。老舗の揚げかまぼこの店や人気のコロッケ屋さんなど、宿泊プランによって、ホテルと提携する店で、さまざまな割引や特典を受けることができる。老舗の和菓子店では、菓子作り体験も。「いつもはビジネスホテルなので、今回は旅行が楽しい！」と、客の評判は上々だ。
午後6時の夕食会場は商店街の中にあるお好み焼屋さんで、食事付きプランには、専用のコースメニューが用意されている。大浴場は、昔ながらの銭湯。「セカイホテル」は、商店街が楽しめる“まちごとホテル”なのだ。
ユニークなホテルを仕掛けたのは、「クジラ」の矢野浩一社長。長年不動産業界に携わり、“寂れていく商店街をなんとかしたい”と、5年前に「セカイホテル」をオープンさせた。
矢野さんは、「商店街には、その地域にしかないものや歴史があるものも残っている。ものすごく可能性がある」と話す。
2018年にオープンした「SEKAI HOTEL布施」は、月平均450人が利用。お客さんとの触れ合いが商店街の活気にもつながっていた。
「セカイホテル」の次なる舞台が、富山・高岡市。人口16万5000人ほどの町で、「高岡大仏」や日本海の景勝地「雨晴海岸」などの観光スポットがある。
しかし、高岡駅前は、まさに“シャッター商店街”。その通りでは住民たちが小さな出店を開いていた。「30〜40年前は人が通れないくらいだったけど、今は全くだめ。誰も来ないよ」と話す。
７月上旬。高岡を訪れた矢野さんが案内してくれたのは、地元でも有名な書店の跡地。
去年の12月、すでに「SEKAI HOTEL高岡」をオープンさせていたのだ。なぜ、高岡に目をつけたのか。
今回矢野さんは、“高岡を盛り上げたい”という熱意のある炭谷大輔さんに支配人を任せた。炭谷さんは生まれも育ちも高岡で、東京の大学を卒業後、地元に戻ってきた。
市内で唯一の百貨店も4年前に閉店し、寂れゆく故郷を目の当たりにしていた炭谷さんは、「セカイホテル」が進出すると聞き、自ら手を挙げたのだ。
しかし、ホテルのオープンから半年が経った頃、炭谷さんは大きな課題を抱えていた。
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