「そごう・西武」ストライキの舞台裏。攻防の一部始終…労働組合の闘い:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

9月15日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「独占!そごう・西武 ストの舞台裏」。
「池袋に百貨店を残そう!」。従業員と会社、地元住民も巻き込んだ西武池袋本店(東京・豊島区)の売却騒動。百貨店の61年ぶりの反乱、彼らが立ち上がった理由とは…。ストライキの舞台裏に独占密着した。

【動画】売却交渉、そしてストライキ その舞台裏を徹底取材!

売却に異議アリ! 労働組合トップに密着


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全国の百貨店の売り上げはバブル期にピークを迎えたが、現在は半分ほどに。
2000年代初頭、バブル期の拡大戦略が裏目となり、経営が悪化していた旧「西武百貨店」。2003年、同じく苦境にあった旧「そごう」と経営統合し、3年後には「セブン&アイ・ホールディングス」の傘下に。しかし、その後も低迷は続き、28あった店舗も、今では10店舗に激減していた。

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去年11月、「セブン&アイ」は、アメリカの投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」に「そごう・西武」を売却すると発表。しかしこの売却案には、「ヨドバシホールディングス」がビジネスパートナーとなり、西武池袋本店の地下1階と1階を含むフロア全体の半分ほどを占める計画が記載されていた。

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「セブン&アイ」井阪隆一社長は、「残念ながら力及ばず。他のベストパートナー、ベストオーナーと一緒になった方が、『そごう・西武』が再成長に向かうことができる」と話す。

池袋本店はインバウンドも好調で、単体で見ると黒字を確保している。なぜ、本店の売り場を半分にする必要があるのか。「そごう・西武」の労働組合は、「セブン&アイ」に対し、「完全な雇用維持」と「百貨店事業の継続」、何より「事前の情報開示」を求めていた。

「セブン&アイ」は、売上高約11兆円のうち、10兆円近くをコンビニ事業で稼いでいる。
一方の「そごう・西武」は、約4900億円にすぎない。

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売却話が進む中、「そごう・西武」労働組合・寺岡泰博中央執行委員長(53)は、スト決行を視野に入れ、組合員たちに「収益の柱である西武池袋本店の半分が家電量販店になるような事態になれば、私たちの雇用は保証できず、最悪、事業存続も危ぶまれる」とメッセージを送っていた。

7月3日、池袋本店。この日は、組合員にストの是非を問う全員投票の告示日だった。「そごう・西武」の従業員は約4300人。その9割が組合員で、ストを行うには、組合員の過半数の賛成が必要だ。

寺岡さんは池袋本店の従業員に「相手は10兆円企業の社長だから、私が何か言ったところで竹槍1本ぐらいの力。でもここまで来たら、もうそういうことでなく、『そごう・西武』の従業員の総意である」と伝える。ストを行うための「スト権確立」の闘いが始まった。

百貨店支える富裕層ビジネス…岐路に立つ「外商」


池袋本店の売り場が半分になる…それは、テナントの問題もはらんでいる。例えば、1階に入っている高級ブランド「ルイ・ヴィトン」は、「ヨドバシ」入居後は別の場所に移る予定。「そごう・西武」の現役社員は、「ハイブランドは横のつながりや周辺環境を異常に気にするので、そっぽを向かれたらやばい。他でいくらでも売れるから、うちから出ても、痛くもかゆくもない」と懸念を示す。

本店から高級ブランドが出てしまったらどうなるのか。高級ブランドは、本店に入っているからこそ、地方の店舗にも入るケースが多い。池袋本店からそのブランドが撤退した場合、地方から出ていく可能性があるのだ。

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その影響は、上得意客を相手にする外商にも及ぶ。「そごう広島店」(広島市)で外商を担当する島津貴行さんは、「商品が少なくなってしまうのは、外商としては武器が少なくなってしまうので、死活問題」と話す。
さらに「セブン&アイ」に対して、「百貨店業というなりわいに関して、しっかりと理解しているとは思えない。(セブン&アイ)ホールディングスのグループの中でも、親子3代、同じ担当者がついて商いをやっているのは百貨店業しかない。しっかり理解した上で将来を見ていただきたい」と島津さん。

実は島津さん、広島店の組合の代表を務めている。その広島店に寺岡さんがやってきた。スト権確立を目指す投票期間中、全国を行脚していたのだ。
寺岡さんは広島店の従業員たちに、スト権を確立できれば、「100%の雇用の維持」と「百貨店事業の継続」を「セブン&アイ」に要求する上で大きな武器になる、池袋本店を守ることが広島店を守ることにつながると伝えた。

売却交渉、そしてストライキ…その舞台裏を徹底取材!


7月10日、寺岡さんは「セブン&アイ」本社に呼び出された。「そごう・西武」の林拓二社長(当時)も同席、相手は「セブン&アイ」の井阪社長だ。

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2時間後、本社から寺岡さんが出てきた。井阪社長から「(スト権を)確立しようとしていることは認識している』という話はあったが、「雇用の維持」や「池袋のフロアプランの説明」などについて、何も具体的な話はなかったという。
寺岡さんは2018年の委員長就任以来、5店舗の閉店を経験してきた。「セブン&アイ」の傘下に入った当初、約1万人いた従業員も今では約4300人に。もうこれ以上、百貨店で働く仲間を失いたくないというのが心情だ。

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7月24日。組合員による投票の結果が出た。スト権確立の条件である50%超を上回る93.9%という賛成数を得て、スト権は確立した。寺岡さんは、「セブン&アイ」に「雇用の維持」と「百貨店事業の継続」を求める上で、大きな切り札を手にしたのだ。
ストを打つのか、打たないのか…交渉はギリギリまで続いた。寺岡さんのもとには、井坂社長からの電話が頻繁にかかってきたという。

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8月に入り、強硬な姿勢をあらわにした「セブン&アイ」は、売却案に反対していた林社長を解任。9月1日の売却完了に向け、着々と準備を進めていた。
元々、「そごう・西武」の取締役は8人いたが、「セブン&アイ」は林社長を解任しただけでなく、さらに6人の取締役を送り込み、過半数を確保した。

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これを受けた寺岡さんは、「寝耳に水。解任だとすると、背景に一体何があるんだと。残念以外のなにものでもない。不自然」と話す。

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スト前日、組合事務所の中をのぞくと、メガホンやプラカードが準備されていた。寺岡さんは、お客さんのためにも本当は避けたかったストを、決行前日に決断した。

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8月31日。ついにストライキに踏み切った「そごう・西武」。朝10時、近くのビルの一室に、300人の組合員たちが集まってきた。会場には、広島店の外商・島津さんの姿も。寺岡さんと闘うために駆けつけたのだ。
そして今回、商売ではライバルの「三越伊勢丹」「阪急阪神」「髙島屋」など、各百貨店の組合委員長も顔をそろえていた。「困った時はお互い助けようと。僕ら当たり前ですから」。

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たった1日のストライキ…。そして9月1日、「そごう・西武」は、アメリカの投資ファンド「フォートレス」の傘下に入った。61年ぶりのストは、爪痕を残すことができたのか――。

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番組ではこの他、「ヨドバシホールディングス」藤沢昭和社長を直撃取材。8月31日に行われたストの様子や新たな展開などを伝える。

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